軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

死神はほくそ笑む

「ブライアスの姿を確認、いよいよ大詰めですよぉ。ヒェッヒェッヒェ……」

この私にあの閃光のブライアスを始末する機会が訪れるとは。

ギャンブルで多額の借金を背負ったくらいで妻にも逃げられて、最後に見たのは子どもの侮蔑の眼差しだった。

これまで誰のおかげで食えていたと思っているのですかねぇ。

夫が落ち目な時こそ支えてやるのが妻の役目だというのに。

あーあ、結婚なんてするもんじゃないですねぇ。

離婚してからの私は借金取りに追われる日々をおくっていました。

スキルもデス・アプローチとかいうよくわからないもので、何の役にも立たないと思ってました。

おかげでクソスキル税が重いのなんの。まぁ踏み倒してましたけどね?

借金まみれの男にそんなものが払えるとお思いで?

お国さんも少しはお考えになりなさいよ。

「あの日……あれが人生の転機でしたねぇ」

いつものように借金取りから逃げていると、ごろつきとぶつかったのです。

腕っぷしのない私は何も抵抗できず、胸倉を掴まれて殴る蹴るの暴行。

殺されると思った時、一人の人物が通りかかったのです。

そいつはごろつきを無視して私にこう囁きました。

殺意を持ちなさい。それがあなたのスキルを開花させる、と。

不思議と心地のいい言葉でした。

気がつくと私はごろつきに殴りかかり、信じられないことが起こったのです。

私に殴られたごろつきは当然、怒りを露にして反撃をしてきました。

しかしごろつきは石につまづき、バランスを崩して転んでしまったのです。

しかもその際にごろつきは頭を強く打って死んでしまった。

唖然とする私に、見ていたあの人物がこう言ったのです。

「『これがあなたのスキルです。あなたが殺意を持って相手にアプローチすれば、必ず死へ導かれる。ただし相手の個人差にもよるので過信なさらぬように……』と。ヒェッヒェッ……」

この時、私は生まれて初めて他人に礼を言ったのです。そしてその人物は去っていった。

それからですよ。私はこのスキルを活かしてあらゆる仕事をこなしました。

デス・アプローチによって早く死へ導けるものは健康状態が悪かったりなど、何らかの死へのきっかけを持つ者。

危険な仕事をしている冒険者でもいい。何せ常に死と隣り合わせなのですから。

あのごろつきは手が早く、よく怪我をして死に近い人生をおくっていた。

酒の臭いがプンプンしてましたし、おそらくですが健康状態もよろしくなかったでしょう。

それから大規模スキル鑑定の儀に私は赴きました。

案の定、国王は私を気に入ってすぐに王宮へ招きました。

大きな声では言えませんが、私が一回仕事をするだけで平民の年収以上なんですよ。

すごいでしょ? 羨ましいでしょ?

私はね、最近になってつくづく思うのです。

人生などイージー、しょせんこの世はスキルだとね。

私は確信を持って言い切れます。

デス・アプローチは無敵です。

「ブライアスが……」

ブライアスを見つけた時にはすでに奴は倒れていました。

そこに立つのは似顔絵で見た異世界の少女、それにドワーフのガキ。

さすがに驚きましたが、同時に陛下はやはり異世界の少女のスキルを見抜いていたわけです。

あのブライアスを無傷で地に這いつくばらせるとは!

いよいよ興奮が収まりません!

ブライアスを殺して、後はあの少女をどうにかすればいいのです!

たったこれだけで私は十年は遊んで暮らせる額をもらえる!

あぁ、私よ。落ち着きなさい。

感謝するとすれば神でしょうか?

それとも陛下? あの日、出会った人物?

いえいえ、私が感謝すべきは私です。

デス・アプローチ、このスキルを持っているのは私なのですから。

ありがとう、私。

さようなら、ブライアス。

初めまして、異世界の少女。

おぉデス・アプローチは礼儀正しい。

こんな人間を見限った妻と子どもはどうかしてる。

さて、さてさてさて。まずは隙だらけのブライアスを仕留めるとしましょう。

このボウガンで私が殺意を持てば、致命傷を狙える。

今のブライアスは瀕死――え?

傷が治った? ブライアスが立った?

あの異世界の少女が何かしたとでも?

まさか回復魔法か? あれ? 兵隊までもが!?

どうなっている? いえ、やることは変わりません。

このままブライアスを――。

「みーつけたぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「は?」

突然、何かが視界を覆った。

赤い光、そして熱。

それが私の身を焦がして、あ、あ――。

「ギャアァァアァァーーーッ!」

熱い! 体が、体が焼ける!

焼ける。焼け――。

「よし、聖命のブローチ!」

「見せるだ! おぉーーー! 確か神の息吹を受けたと言われている神器だべ!」

「ありがとう神様」

「いやぁー、しっかしすげぇスキルだ!」

何が、私の身に、起こった。

一撃で、この私、デス・アプローチ、が。

こんなひどい終わり方が、あって、たまりますか。

これで終わりだなんて。この、私が、ですよ。

こ、の、私、が。

「で、この人は? デス・アプローチってなに?」

「知らん」

なぜ、名前、を。ク、ソ、が。