軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

横暴キングの野望

あれからだいぶ経つが、ブライアスはうまくやっているのだろうか?

異世界の少女が私の予想通り、魔の森で魔物の餌食となっていればそれでよい。

しかしここ最近、どうにも胸騒ぎがするのだ。

万が一にでもあの少女が生きていればどう出るか?

そのようなことばかり考えて仕事にも身が入らぬ。

「……クソッ、この私がなにを心配しているか」

妻に先立たれて、肝心の娘のスキルがあれでは王位を譲るのに不安が残る。

こうしている間にも隣国のエクセイシアが何を企んでるか、わかったものではない。

ブライアスは隣国との関係は良好とほざくが、上に立つ者の腹など誰にもわからぬ。

今、この瞬間にも我が国を攻め滅ぼす算段を立てていないとも限らない。

それにあちらでは王族や貴族に関してもスキルに恵まれている者が多いのだ。

「陛下、ご報告します! また民衆がスキル差別反対運動を行っています!」

もはやため息以外、何が出るというのだ。

この一介の兵卒風情も、そんなことをわざわざ叫ぶために走ってきたのか。

「鎮圧しろ」

「し、しかし民衆の不満は日を追うごとに増しております。やはりクソスキル税に不満があるようです」

「クソスキルのゴミどもなど鎮圧しろと言っている」

「昨年、導入した魔王討伐制度への声もあります。優秀なスキルを持つ者を魔王討伐へ向かわせる制度でありますが、その際に渡されるお金が少なすぎるとの声も……」

「ブロンズソードを支給しているではないか! まったく、ああ言えばこう言う!」

魔王の問題も捨て置けぬから導入しているというのに、なぜ誰も理解を示さんのだ。

この素晴らしい国に住まわせてやっているのだから、少しは恩を返そうという気概を見せないものか。

これだから平民はどうしようもない。

だからこそ現状打破のために異世界召喚というリスクまで覚悟したというのに、なぜよりによってあんな少女が。

どれだけの金がかかったと思っている。

「もうよい。下がれ」

「しかし、民衆は……」

「鎮圧しろと言ったのがわからないのか」

「は、ハッ!」

すごすごと下がっていた一兵卒を尻目に、私は改めて打開策を考えた。

スキルがすべてである以上、やはり方法は一つしかない。

そのためにはまた金がかかるが、これも国のためだ。

これで国が安泰となれば、平民とて納得するはずだ。

「大臣! 大臣はおらんか! おい! 大臣を呼べ!」

「ハッ! ただちに!」

召使いに大臣を呼ばせて私は覚悟を決めた。

やってきた大臣に私は一つの命令を下す。

「大臣。今一度、異世界召喚を行う」

「はい……? いえ、それはいかがなものと……」

「そなたの危惧は理解しておる。しかし要は当たりを引けばよいのだ。先日のあれは運悪く外れだったが、次こそはうまくいくだろう」

「いえ、危険ですぞ……。陛下、異世界召喚のリスクをお考え直しください。異世界から召喚された怪物に滅ぼされた国があるほどです」

「そんなものはただの言い伝えだ。それにいざとなればブライアスを呼び戻す。奴ならば何がこようとも心配あるまい」

あの異世界の少女は何の戦闘力もなかった。

つまり異世界の者はスキルこそ強力なものに目覚める可能性があるものの、封じる手立てはある。

私の目論見はこうだ。

まず異世界から召喚した者に何も説明せずにスキル鑑定を行う。

まずは甘い言葉を投げかけて油断させるのだ。

戦意をなくしてしまえばこっちのものよ。後は適当な口車に乗せてこき使えばいい。

異世界の少女の時はつい頭に血がのぼってしまったが、今度は失敗しないと言い切れる。

そもそもあれは極端なはずれだったのだ。

今度こそ必ず当たりを引ける。当たればこっちのものだ。

「大臣、すぐに手配しろ」

「しかし、こんなことが民衆や他国に知れてしまえばどうなるか……。異世界召喚を禁じている国も少なくありません」

「そなたは何もわかっていないな。他国が一切やっていないと言い切れるか?」

「いえ、確かにそれは……」

「あの国のあれやそれも、実は異世界から召喚された者かもしれん。表では非難するが裏で何をやっているか、わかったものではないぞ」

そこが凡人の限界なのだ。

正々堂々などという甘言を妄信して戦うことを美徳とする。

勝てないからそんなものにすがるしかない。

勝つためにあらゆる手段を踏まえて最善の手を打つ。

それこそが上に立つ者だ。

外で暴れている馬鹿どもは何も考えずに惰性で生きている。

現状への不満を吐き出して暴れたらどうにかなるなど、そのような都合のいい話はない。

まったく呆れるばかりだ。

悔しければいいスキルを持って生まれたらよかったものを。

「……陛下。もう一度、確認させていただきます。本当によろしいのですね?」

「くどい。やらねば相応の処分を下すぞ」

「かしこまりました。手配します」

フン、最初からそう言えばいい。

スキルを制する者が世界を制するなど、子どもでも知っていることだ。

まぁ平民は大人含めてその限りではないがな。

今度こそ私が覇者となる。待っていろよ、他国ども。