軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

地下バトラビリンス開催だって

「これがマテリ様の生活……」

「リコットさん、あなたは未熟だからわからないかもしれませんが、師匠の行動は常に計算されてます」

リコットちゃんがね。私に様付けして一挙一動を観察してくるの。

私が食事をしてもお風呂に入っても、常にくっついてくる。

しかもフィムちゃんがなんか師匠気取りで、あることないこと吹き込んでた。

どう見てもデタラメなんだけど、私をヒーローと崇拝するような子だから真に受けるに決まってる。

頼むから寝る時すら両サイドにくっつかないで。

「マテリ、似たようなのが二人になったんだがどうすんだ」

「私のせいじゃないもん」

「師匠とヒーローの兼任は大変だな」

「ミリータちゃんがそんな性悪だとは思わなかった」

かわいそうな私。異世界に転移させられた以外は皆とかわらない女の子なのに。

そんな悲惨な私のところに地下バトラビリンス開催のお知らせが飛び込んできた。

前々から告知されていたこれはドンチャッカ国で一年に一回開かれている大会だ。

各チームが地下の大迷宮のゴールを目指す。

ただし途中で他チームと出会ったら、必ず何らかの方法で戦わないといけない。

戦闘じゃなくてもいいらしい。

そんなことが書かれたビラを私がぼーっと見ていると、フィムちゃんとリコットちゃんがすっごい期待の眼差しを向けてくる。

「リコットさん。師匠はすでにあの大会を見据えています。これがどういう意味か、わかりますか?」

「常に上を目指す……いえ! 大会の秩序を案じている?」

「そうです! つまり師匠は必ず参加します! 何せ今年の優勝賞品は国宝! これを悪人が狙わないわけがありません!」

「やっぱり!」

やっぱりじゃないんだよ。

なんで通じ合ってるのかな? 優勝賞品が国宝か。

こんな大会で国宝をあげちゃっていいのかな?

どうせあの王様のことだから、自分も参加して強い人と戦いたいだけでしょ。

そんな欲の皮が張った連中と戦って何が面白いんだか。

そこへいくと私は国宝目当てじゃない。

純粋に大会を楽しむという純真な心があってこそだ。

そういう心が皆には足りてないんじゃないかな?

「マテリ」

「やーだー、ミリータちゃんったらこっわーい」

「殴ろうか?」

「ミリータちゃんは怒ってる顔より笑ってる顔のほうがかわいいよ」

ジットリとした目がたまらなく怖い。

どうしてミリータちゃんには私の純粋な心の内がわかっちゃうんだろう?

逆に純粋すぎてわかりやすいのかな?

* * *

「待ちに待った地下バトラビリンスの日がやってきたぜ! 野郎ども! 優勝したいかぁーー!」

「おぉーーー!」

大会当日、会場は熱気に包まれていた。

開催場所は私達も知らなかった王宮の地下だ。

広いドーム状の地下に集まった参加者は実に数百人。

よくもまぁこれだけ集まったものだ。参加者はドワーフの他に冒険者が多い。

聞けば名の知れた冒険者ばかりというから、この大会の規模がよくわかる。

「し、師匠! 参加層が思いの他、濃いです!」

「フィムちゃんも負けてないよ」

「あそこを見てください! 殺し屋と恐れられたAランク冒険者パーティの【ブラックパンサー】です! 更に全員、仮面をつけた正体不明の【青の導師】! 若手のホープ【紅の刃】! その巨体はモンスターをも見下ろすドワーフパーティ【巨撃の破壊人】! 数千種類の猛毒に精通する錬金術師パーティ【白衣の殺医】! どれも国をまたいで名を轟かせています!」

「知ってる名前が混じってた気がした」

フィムちゃん、勉強熱心で何よりだよ。

そんな報酬とは無関係の知識なんて私にはいらない。

それより昨日は賞品が、じゃなくて大会が楽しみすぎてあまり眠れなかった。

ここにいる人達も同じだと思う。

有名な冒険者たるもの、日々鍛え上げた己の力を確かめるためにやってきてるに違いない。

私は冒険者じゃないけど、冒険者はそうであるべきだよ。

「なーんか不穏だなぁ。お、さっそく揉め事だべ」

ミリータちゃんが見つけた先では冒険者パーティがなんか争ってた。

ちょっとちょっと。冒険者たるもの、始まる前から賞品のことで争っちゃダメでしょ。

「あぁコラァ!」

「んだコラァ!」

チンピラ同士の小競り合いだった。

乏しい語彙でどんな争いを続けるのか。

そんなのやっても報酬なんか出ないよ?

「おい、チビども。騒がしいのが好きならオレ達が相手になろうか?」

「なんだと……うっ!」

そこへ現れたのが巨人みたいなドワーフ達だ。

フィムちゃんが言ってた巨撃の破壊人かな?

大人の三倍近い大きさで、周囲の人達が引き潮みたいに離れている。

報酬もないのに仲裁に入るなんて、信じられない。

「い、いや、特に大したことはないんだ」

「おいおい、さっきまでの威勢はどこにいったんだよ? オレに吠えてみろよ? あぁコラ?」

「悪かった、ごめん……」

チンピラ達が巨人に対して青ざめて萎縮している。

すごい。報酬もないのに、あそこまで絡めるなんて。

これ大会が始まる前だよ?

「おい、でくの坊。その辺にしてやりな」

「あぁ? なんだ、チビども」

「オレ達は紅の刃、聞いたことくらいあるだろ?」

「あぁ、お前らが……。最近、メキメキと名を上げているそうじゃねえか」

あそこに紅の刃が入っていってるのがすごい。

あれでいて同格なの?

ていうかなんで私達の行く先々にいるの、あの人達。

「お前ら、黙っておけよ。どいつもこいつも等しくザコなんだからよ。優勝はオレ達、ブラックパンサーなんだからお前らは仲良く参加賞でも期待しておけ」

「猫畜生風情が、殺し屋気取りか? オレ達は巨撃の破壊人、近接戦ならお前ら何一つ残らんぞ?」

「おぉそりゃ楽しみだな。でかいだけで持て囃されてる脳筋に現実を教えてやってもいいぜ?」

「小僧、潰してやる」

ホントよくやるね。

あまりに退屈な時間だからついあくびが出ちゃった。

フィムちゃん達もさぞかし、あれ?

「あなた達、その辺にしておきなさい」

「そうだよ。今日は神聖なる腕試しの場、蛮行は許さないよ」

うちの正義大好きちゃん達がどうもすみません。

どうしてこうトラブルを起こそうとするのかな?

巨人を始めとした冒険者達がすっごい睨んでるじゃん。

「なんだぁ? 見ないツラだな」

「僕はフィム、揉め事を起こすなら師匠マテリに代わって成敗します」

「マテリだぁ? ん? いや、聞いたことがあるぞ? ファフニル国を魔王の手から救った聖女……」

その瞬間、周囲がざわつきやがった。

あのね、そういうのいいからね。ホントにね。

なんで知名度あるの? ねぇ?

「聖女マテリって確か……。混沌のアズゼルを討伐したっていう……」

「エクセイシア国では先頭に立ってアンデッド軍団に立ち向かった……」

「窮地に陥ったエクセイシア国で、聖なる武器や防具を人々に授けたという。まさか本物か?」

人違いです。さーて、そろそろ始まるよね?

とっとと始まれや。

ほら、始まらないから巨人とか変なのがノシノシやってきた。

「なるほど。こんなチビが聖女とはな。とはいえ……おい、黒豹の猫ども、お前らには荷が重い」

「あ? でくの坊がでかいだけで勝てるとでも思ってんのか? それにそいつが本物の聖女様なら、狙ってるのはオレ達だけじゃないぜ?」

なんでこんな賞金首みたいな扱いになってるの?

あなた達、どうせ報酬ないでしょ? やめて?

「その通りだ。そいつらはオレ達、紅の刃の獲物だ。何せちょっとした因縁があってな……そうだろ? マテリ、強くなったのはお前らだけじゃねぇ」

「そんなキャラだとは思わなかった。聖なる武器や防具を授けた仲でしょ」

「押し売りされたんだよ! あれから金欠でどれだけ苦しんだと思ってんだ!」

「それはごめんね」

私も平和のために仕方なくやったこと。

恨まれるのはしょうがないけど、そこは正義の心があれば許せるはず。

と、その時。黒豹の人がいきなり刃を振ってきた。

「ちょ! なにするの!」

「こいつに反応したか。噂に違わない実力ってところだな」

「あのね、さすがに怒るよ? 大会運営さん、ここに通り魔がいます」

「無駄だ。この大会はとって食うか食われるか、バトルキング公認なんだぜ?」

あ、確かに誰も止めに入らない。

なにこの大会、クソじゃん。主催した奴の頭おかしいんじゃないの?

それに報酬もないのに本腰入れて相手にするわけないじゃん。

「つまり戦いはすでに始まってるんだよ」

その時、大きなドラの音が鳴った。

そろそろ開催かな? ナイスタイミングだね。