軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゴーレムがえらいことになった

「いやぁしかし、あの時はえらい目にあったもんだ」

「バトルキング。地中に眠っているものがすべて都合がいいものばかりじゃないってことですよ」

私はバトルキングに淡々と事実を告げた。今回の件でわかったのは、必ずしも私達の利益になるものが得られるとは限らないという点だ。

洞窟全体の崩落が始まった時、私は気がついたら二十個のゴーレムの核を持って逃げていたっけ。

皆もちゃんと魔道車に乗っていたから死傷者はゼロ、無事に黒い悪魔の巣は壊滅できたよ。

あれから二週間ほど経って、私はゴーレム開発に打ち込んでいるミリータちゃんの様子を見るためにバトルキングの城を訪ねていた。

「これってやっぱりゴーレムに使うんだよな?」

「そうじゃないですか? でもさすがに一からゴーレムなんか作れませんよ」

「いや、お前ならいけそうだがな」

「なんですか、それ。人をなんだと思ってるんですか」

バトルキングの私に対する認識が歪んでいる。

生まれながらにしてごく普通の私が超文明のゴーレムを作れるわけがない。

そんな技術があったらとっくに報酬のために、じゃなくて世界平和のために使っている。

あのグレイゴルというゴーレムは何らかの奇跡が起こって動いているけどさ。

「あのグレイゴルは発掘作業だけじゃなく、建築や救助活動にも使えるんだ。もしこの技術が普及すればドンチャッカは著しく繁栄するだろうな」

「でもあのゴーレム、誰に似たのか知りませんけど報酬がどうとか言ってますよ」

「それはそうだがな。そろそろあいつらのところを覗いてくるか」

「なんかいいように使ってくれてますけど、ちゃんと報酬は貰えるんですよね?」

「おう、もちろんだ」

それなりの金額を支払ってくれるということなら問題ない。

これでただ働きだったらと思うと夜も眠れなくなる。

研究室ではミリータちゃん達があーだこーだと話し合って、設計図を作っていた。

開発の参考のために解体されているグレイゴルの目が赤く光っているけど大丈夫?

「報酬との関連性34%……コストと報酬のバランス……やや低イ」

「うーん、マテリはどうやってこいつを修理したんだか……」

「ミリータちゃん、ゴーレムが明らかに不穏だけど?」

私には何らかの理由で暴発寸前に見える。

私の勘だけどここはケアが大切だ。グレイゴルに近づいて、ボディを磨いてやった。

「グレイゴル、あのね。もしゴーレムが増えたら、労働力が増えるってことでしょ? そしたら報酬がもっと増えるの。だからここは我慢したほうがいいよ」

「報酬との関連性が75%まで上昇、コストと報酬のバランス……並」

「あなたの働きのおかげでこのゴーレムの核が二十個もできたんだからさ。つまりゴーレムが二十体でゴーレムの核が四百個だよ。コストと報酬が釣り合うでしょ」

「報酬との関連性が95%まで上昇、コストと報酬のバランス……極めて高イ」

目の光が青くなった。適当なこと言ったけど納得してくれたみたいだ。

ボディが熱くなって大変なことになっていたけど、これで大丈夫かな。

まったくミリータちゃん達もさ、こういう他人の気持ちを考えられないと何をやってもうまくいかないよ。

結局、報酬にしても何にしても最後には互いの信頼関係がないと成り立たない。

口に出したら壮絶な反撃にあいそうだから、絶対に言わないけどね。

「マテリ、ありがとな。一応、礼は言ったがあまり調子に乗るでねぇ」

「ミリータちゃんが過去最高に怖い帰りたい」

「さすが師匠っ!」

なんでいいことしたのにそんなこと言うの?

フィムちゃん、このタイミングでさすが師匠はやめて。ミリータちゃんが睨んでるじゃん。

これ以上、ここにいてもやることがないから私は王都で観光でもしてようかな。

実は温泉と岩盤浴が前から気になっていたんだよね。

「……ひとまず完成だ。試作品だからどうなるかわかんねぇけどな」

「ウッソ! さすがミリータちゃん!」

「おめぇ、オラをバカにしてるのか?」

「違うって! フィムちゃんリスペクトじゃなくて普通に褒めてるの!」

見るとグレイゴルのミニバージョンみたいなのが完成していた。

無骨な四角いフォルムで丸い目が二つ。ちょっとかわいい。

それが起動されると腕を動かした。

「ピー……ガー……」

「おー! やったべ! マテリ! オラ達もやるもんだろ!」

「すごいよ。やっぱりこういう仕事はミリータちゃん達に限るね」

ゴーレムがぎこちなく歩き出す。まだようやく動いたといった段階だけど、このドワーフの技術と執念には恐れ入る。

ついこの前まで未知の技術だったのに、短期間でここまで作り上げたんだからね。

ミリータちゃんが指示を出して動作テストなんかをしているけど、ひとまず問題はなさそう。

「まだ労働力には遠いが、これは大きな一歩だな」

「マスター、ゴ命令ヲ」

「そうだな。もう少しだけ改良するからおとなしくしてろ」

「ソレハ、報酬トノ関連ガ、アリマスカ?」

場の空気が凍りついた気がした。

いや、待って。私は何もしてないよ? 指一本触れてないからね?

グレイゴルは磨いたけど、それには触ってないからね?

それなのになんで私を見るの?

「マテリィ……」

「いや、知らないって。作ったのはミリータちゃん達でしょ。偶然かもしれないからさ、他も同じように作ってみたら?」

「そうだな、そうしよう」

危ない、危ない。偶然、完成した一体が報酬とか言い出したからってひどい濡れ衣を着せられるところだった。

人間だって似たような性格の人がいるように、それはゴーレムだった同じだ。

作ったゴーレムがたまたま報酬好きだっただけ。それを私のせいにされるのは極めて遺憾です。

ミリータちゃんがちゃっちゃかと作り上げたゴーレムがまた動き出した。

「ガー……ホウシュウ……」

「なぁ、マテリ?」

「いや、知らないよ」

誰か説明してください。今、私は冷静さをかこうとしている。

世の中には似た性格の人間が三人いるっていうし、こういうこともある。

だけどミリータちゃん達は納得していないご様子。あらあら、まぁ。

「ホウシュウハ、ドコダ」

「ホウシュウヲ、ヨコセ」

ゴーレム達が不穏なことを口走ってらっしゃる。

ミリータちゃん達が私に何かを求める視線を送ってくるから私がなんとかする流れなの?

こんな超文明なんか理解できるわけないでしょ。常識で考えて。

でもなんか私のせいになってるから、私がなんとかするしかない。

「え、えーと。報酬は寝て待てっていうでしょ。だから待機しておくのが報酬への近道なの」

「了解シマシタ、マスター」

「マスターノ命令ニ従イマス」

「今、マスターって言った?」

生まれた直後の雛が目の前にいる生物を親だと認識するように、このゴーレム達もまさか?

いや、ミリータちゃん達がいたでしょ?

「マテリ。たぶんだけどな、このゴーレムの核でゴーレムを作ったらこうなるんでねえか?」

「それはミッションクリアの新たな発見だね」

「よし、マテリ。おめぇはゴーレムの教育係だな」

「ゴーレムを教育するとか聞いたことない」

こうしてゴーレム教育係とかいう最高に意味がわからない役職をもらってしまった。

それから改良を加えたゴーレムは立派に強くなって、戦力として投入できる日も近いとか。

推定レベルは現時点で30くらいらしい。強くない?

称号 :『捨てられた女子高生』

『スキル中毒』

『物欲の聖女』

『勇者の師匠』

『ダンジョンクラッシャー』

『ゴーレムマスター』new!