軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

殿下と陛下のご依頼

「鍛冶? 帝国でか?」

「ああ、とは言っても、その前にやって貰うこともあるらしい。これは皇帝陛下のご依頼だと」

「やって貰うこと?」

「詳しくは俺も聞いてない。受けてもらえるなら『向こう』で説明してくれるそうだ。危険はないらしいし、決して損はさせないと、これも皇帝陛下からの言伝だ」

「ふむ……」

俺はおとがいに手を当てた。それを見たカミロが少し困ったような顔をする。

「ま、今すぐは答えなくていい。そうだな……次の納品の時までに答えてくれたら大丈夫」

「分かった。なるべく早く結論を出すよ」

「すまんな。毎度巻き込んじまって。受けてくれたら、報酬はまず金貨でこれだけ」

カミロは手元の紙に数字を書き付けた。なかなかの金額だ。俺一人なら、都で王侯貴族とは言わずとも、それに近い生活を働かずにしばらくできるくらいの額。

間違っても一介の鍛冶屋に支払うような額ではない。近しい金額を度々貰ってしまっている気はするが。

この額は、後ろ盾が王国と帝国であることの証拠でもあるか。

「後は追加でいくらかあるらしい」

「追加でってことは、出来高なのか」

「恐らくは。期間も向こうで2週間かもう少しだそうだ」

さっき提示された額でも結構なものだが、それに出来高報酬もあるらしい。

期間もそれなりではあっても、長すぎるというほどではないな。

「その辺も踏まえて考えておく」

「頼んだ」

俺とカミロは立ち上がり、握手を交わす。依頼については家に戻ったら家族と話そう。

こうして、納品そのものは今回も無事終えることができた。

商談室を出て、丁稚さんに挨拶(とチップ)をし、カミロの店を出る。衛兵さんものんびりしたもので、平和そのものと言える。

街道に出てもそれは変わらず、僅かに涼しさを含んだ風が草原を渡って吹き付けてくると、穏やかな一日だなと思える。

少なくとも、共和国との戦が近いかもという空気はどこにもない。

ただ、いつもはそれなりに賑やかな荷車の上も、今日は少しばかり静かだ。

俺も依頼について考えていて、口数が少なくなりがちなのだが。

結局、道中は何事もなく、家に辿り着くことができた。

家に着いて、クルルを荷車から放してやり、荷物を片付け終えたら我が家は昼食である。

メニューはいつも通りの無発酵パンに野菜と肉をぶっ込んだスープ。

食事中の話題は勿論、俺に対する依頼の話になった。

「報酬的には行かない理由はないな」

「期間的にはどうですかね」

リケが首を捻る。俺は頷きながら言った。

「純粋な長さで言えば、さほどでもないと俺は思う。ただ、問題は……」

「公爵派だな」

言ってからスープをグイッと飲み干したヘレンが続ける。

「ここは公爵派に狙われてる。エイゾウがここに居ない間はどうする? 条件としてディアナの実家に匿って貰うのを出すか、ここにいるか」

そのディアナが腕を組んだ。いつの間にか彼女も食事を平らげている。

「公爵派は今、うちに関わってる暇はないんじゃないかしら。カミロさんのところでもそう聞いたわよね」

「賭けに出る可能性は?」

「うちをなんとかしたところで、彼らの状況が好転するとも思えないのよね……」

ディアナとヘレンのやり取りを聞いて、俺も考える。

公爵派にちょっかいをかけているのは主流派の貴族たちだ。俺たちを失えば主流派にとって確かに痛手にはなるだろうが、それを止めたりはしないだろう。

この辺の計算ができないほど追い詰められていれば分からないが、聞いたところではそこまででもないように思う。

「それに、ここにいたほうが相手も都とここで戦力を分散する必要が出てくるんじゃないか?」

俺が言うと、ヘレンは頷いた。

「それはそうだ。目立った動きはできそうにないし、そのほうが良いな」

今度は俺が頷く番だった。俺は皆を見回す。気がつけば全員が食事を平らげている。

皆が俺を見る中、俺は言った。

「基本引き受ける方向で行きたいとは思う」

皆が頷く。俺は続ける。

「ただ、1つ確認しておこう。アンネ」

名前が出たアンネは、俺の顔を見て、目を丸くしていたのだった。