軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

夏の納品

あれから更にしばらく経ち、納品物の数も揃ったのでカミロの店に納品へ向かうことにした。

朝、荷車に樽や木箱を積み込む。中にはナイフや剣など、いつもの品々である。

荷車を引くのはもちろんクルル。リケが牽き具を繋ぐと、得意げに喉を鳴らした。

家族が荷車に乗り込むと、ルーシーもぴょんと荷台に乗り、ハヤテはクルルの背中から飛び立ち、あたりを旋回している。

マリベルは荷台に腰を下ろし、その光を消していた。

夏の森はそれなりに獣たちの動きも活発なようで、遠くに樹鹿や森狼の姿をよく見かけた。

もちろん、彼らがそれ以上近づいてくることはない。

レアな動物も居るのだろうが、そういった動物はこの時期あまり自分たちの縄張りからは動かないそうで、狩りに出てもあまり見かけないらしい。

黒の森を抜けると空気が変わる。どこか湿り気を帯びていた風が乾いたものになり、頬を撫でた。街道に出ると、荷車の揺れ方もすこし変わった。

それを合図にして、マリベルは姿を消す。そのうち、カミロの店では姿を出して貰ってもいいかな……。

「平和なもんだ」

どこまでも続くように思える風景には、今のところ俺たちの他にはいない。

草原の草の背が高いので、良からぬ輩が隠れていても見えないが、サーミャもヘレンも、少し上を飛んでいるハヤテも何も言わないところを見ると、そういうのはいないようだ。

街道を順調にすすみ、まだ早い時間に街に到着した。

街の入り口にいる衛兵さんが俺たちに気がついて片手を挙げた。

「よう」

「どうも。なんかありました?」

「いや。このところは落ち着いてるよ」

通り過ぎざまに挨拶と、そして軽い世間話を交わす。

街の目抜き通りを進む車輪の音が響くと、通りを歩く人々がちらりとこちらを振り返る。走竜が荷車を引く姿はまだまだ珍しいのだろう。ここらで使っているのはうちだけっぽいし。

だが、もう何度もここに来ているせいか、驚きよりも感嘆の視線が多い。

いつもの親父さんが、ルーシーに手を振るところも見届けてから、俺たちはカミロの店に向かった。

カミロの店、正確にはその裏手に着くと、見慣れた少年が駆け寄ってきた。

「おはようございます」

「おう、おはよう。今日も頼むな」

「はい! おまかせください!」

丁稚さんの顔にはまだまだあどけなさが残る。

しかし、いずれ彼も背が伸び、骨張った体つきになり、声も低くなるのだろう。

すでに初めて会った時から比べると、結構背が伸びている。カミロはちゃんと食うべきものを食わせているらしい。

なんとなく、親戚の子の成長を見守るような気持ちになり、俺は彼の頭をくしゃりと撫でて、店の中へ入った。

商談室でカミロと番頭さんを待ち、いつもの通り挨拶を交わし、そして商談は滞りなく終わった。普及品は相変わらず堅調に売れているらしい。特注ではなくとも需要は尽きないらしく、しばらくは今のペースで作って良いそうだ。

「そう言えば、うちに陛下がいらしたが」

俺が言うと、カミロは片眉を上げた。

「ん? もうか?」

「ああ。とっくにお戻りになったよ」

「そうか」

「伝えておけば良かったかな」

「いや、いい。大丈夫だ」

カミロは片手を振った。うちの場所を教えるかどうかは彼に任せてあり、それによってうちに来る人物は限られるし、カミロ経由でマリウスやその他の人間にも必要があれば伝わるはずだ。

もちろん、相手は帝国皇帝である。国の力で調べてやってきた可能性もあったが、今の様子だと教えはしたが、うちに来るのはもう少し先の予定だったっぽいな。

アラシがうちに来なかったのは来る少し前に伝えようとしてた、とかだろう。

こりゃあ、ルイ王弟殿下はてんやわんやだっただろうな。俺は内心で同情しておいた。