軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世はなべて事も無し……今のところは

〝大地の竜〟が目覚めかけるという事件が起きて、少しの時間が過ぎた。

あの事件については、カミロやマリウスには詳細を伝えていない。

今後起きないという保証もないが、しばらくは平気だろうということだし、無用な心配を与えたくはない。

そう家族とも話して決まったが、同時に次に何か起きそうなときは早めにカミロに知らせることも決めた。

今回のように無事片付いたのなら、何も知らせずにおくことで全てをなかったことにできるが、あくまで結果的にそうできただけなのも事実だ。

事態が急変してしまう可能性を思えば、最悪の事態を早めに伝えたほうが良いだろう、という判断である。

勿論それでどうなるわけでもない場合もあるだろう。例えば〝大地の竜〟が本格的に目覚めてしまえば、この世界は終わってしまう。

それを伝えたところで意味があるかと言われれば、伝えたから自分たちでなんとかしてくれ以上のものではないだろう。

しかし、それでも何か出来ることがあるかもしれない。そう思い、ハヤテだけを送ることにはなってしまうが、そう決めたのだ。

そんな俺たち家族の決意とは裏腹に、日々は緩やかに過ぎていく。特に大きな問題は無い――最近身体が大きくなってきたルーシーが想定外に食ったせいで食料の減りが早かったことがあるが、それは些末だろう――まま、ジワジワと空気の暑さが増してきていた。

「また最近は暑くなってきたな」

「今はともかく、〝外〟よりは涼しいですけどね」

「まぁなぁ」

俺とリケは鍛冶場の中で額の汗を拭った。鍛冶場では火を扱うから、季節は関係なく暑くなるので、どうしたって汗はかく。

その暑さで、最近の〝黒の森〟の気温を思い出した、と言うわけだ。

リケの言う〝外〟とは、鍛冶場の外ではなく、〝黒の森〟の外である。魔力……は関係ないと思うが、単純に日射しが少ないことと、湖から来る風が冷たいことで涼しいのだろう。

「涼しいとは言っても暑いのには違いないからな。早いところ秋になってくれると良いんだが。娘たちが遊ぶにもちょいと辛い時期だし」

「そうですねぇ」

リケがのんびりと返してくる。クルルやルーシー、ハヤテは元気に遊んでいるが、やはりバテるまでの時間が早くなっていた。まぁ、マリベルだけはこの暑い最中も平気の平左でいるのだが、彼女は炎の妖精だからな。

「ま、これも楽しめるようになるだろ」

俺はそう言って笑う。リケもつられるように笑った。

「さ、それじゃあ、続きをやるか」

「はい!」

こうして、俺とリケは〝いつも〟の作業に戻る。もう少しすれば外に出ていた家族が戻ってくる。それまでの間は集中しよう。

そう思っていたのだが、それはドンドンと力強く叩かれるドアの音で中断されるのだった。