軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

メギスチウム

朝食の後、朝の打ち合わせを終えて、俺たちは神棚の前に並んでいた。神棚には金色に輝く物体が鎮座している。

俺たちはそれらに向かって二礼二拍手一礼をした。

俺は今日からこのメギスチウムの加工に取り掛かる。

他のみんなはと言うと、いつも通りにまず板金を作っておいてもらう。リケだけは見学……ではなく、メギスチウムを硬くする方法について、俺と一緒に考えてもらうことにした。

今のところ、皆目見当がつかんからな。

魔法を使って炉と火床に火を入れる。速やかに温度が上がっていき、それにつれて部屋の温度も上がってきた。

「そう言えば、そろそろ夏か」

俺は開け放った窓から外を見ながらそう言った。心なしか風も若干熱気をはらんでいるように思える。

元々この森の住人であるサーミャと、この森ではないが近くの都に住んでいたディアナが言う。

「そうだなぁ。雨季も終わったし、そろそろ暑くなってくるな」

「都の方はそこまで暑くはなかったけど、ここは暑いのかしら」

「アタシは都の方を知らないからな」

「それもそっか。ま、なるようになるでしょ」

そう言ってディアナが肩をすくめた。涼感素材のシーツや、扇風機にエアコンといった文明の利器をフル活用して凌いでいた俺には少し気が重いが、そこは仕方あるまい。

……氷のブレスを吐くドラゴンとか飼えないかな。

そんなしょうもない考えを頭を振って追い出し、俺はメギスチウムに集中することにした。

「まずは魔力を込めてみるか」

「そうですね。それでどこまで硬くなるのか見てみましょう」

俺の言葉にリケが頷いた。粘土のような柔らかさのメギスチウムなので、指で引きちぎろうかとも思ったが、一応タガネで小片を切り分けた。

まずはこの小片で実験である。いつも鋼にするように魔力をこめて鎚を振り下ろす。

タガネで切ったときにはしなかった、グニッともガキンともつかない音と感触が鎚を通じて返ってきた。柔らかいのか硬いのかも曖昧だ。

そう、一言で言うならば、

「気持ち悪い……」

なんとも言えない感触過ぎて違和感しかない。柔らかいなら柔らかい、硬いなら硬いのどっちかの感触が返ってきて欲しい。

この状態だと展延性が高いのか、ペラっとした金色の小さなシートができる。俺はそっと指で摘んで手のひらにのせた。

手のメギスチウムを目を凝らして見つめてみる。これは……。

「魔力がこもってない……?」

魔力は俺の目にはキラキラした光の粒というか、そんなような感じのものに見えている。

このメギスチウムのシートにはそれがない。

「リケは見えるか?」

「私にも見えないですね……」

リケも手のひらのメギスチウムを見て首を横に振る。ふーむ。だとすると俺の見間違いとかではなさそうだ。

一応、その道の専門家にも聞いてみるか。

「リディ、ちょっといいか」

俺が呼ぶと、すぐに手を止めてリディが小走りで駆け寄ってくる。

「作業してるところにすまんな」

「いえ、大丈夫です。何かありましたか?」

「これなんだがな」

俺はメギスチウムの乗った手を差し出した。リディの目がスッと細められる。

「これは魔力がこもってないですね」

「やっぱりそうかぁ」

「エイゾウさんに限ってとは思いますが、こめ忘れたとかは?」

「まさか」

「ですよね」

俺は一旦メギスチウムをリケに預けると、適当な板金を魔力がこもるように鎚で叩いた。

叩いた辺りにキラキラしたものが少しだけきらめいているように見える。少しなのは加熱してないからだろう。しかし、確認にはこれで十分だ。

叩いた板金をリディに見せる。

「どうだ?」

「こもってますね」

「だよなぁ……」

そして、リディは作業に戻り、俺は首をひねる。ミスリルでもアポイタカラでも、“こもりにくさ”のようなものはあったが、普通に魔力をこめること自体は不可能ではなかった。

メギスチウムは違う。全く魔力がこもっていないのだ。

しかし、である。俺は預けたメギスチウムをためつすがめつしているリケに話しかける。

「魔力がこもらなくて柔らかいままなんだとしたら、こいつに魔力をこめることさえできれば、硬くなるんじゃないだろうか」

「なるほど」

「まぁ、その方法が今は分からんのだが」

「ですね……」

2人して顔を見合わせ、ため息をついた。だが、考えようによっては、

「歯ごたえのある作業になりそうだな」

そう言えなくもない。思わず顔が緩んでいたのだろう、リケが呆れたような、感心したような様子で言う。

「親方、楽しそうですね」

「こういうのを乗り越えてなんぼだからな」

「確かに」

今度はため息はつかなかった。その代わりに笑みを浮かべる。

絶対にこのメギスチウムをものにしてやる。そんな決意を秘めながら。