軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鉱山からの帰路

俺とルシアさん、バルガスさん、そして王国のカテリナさんアネットさんで少し話し合い、善は急げであろうという結論に至ったので、早速検証に使った鉱石と、何かで鉱石が失われてしまったときのため、予備の塊をいくつか頑丈な木箱に梱包し、馬車に積み込んだ。

だが、見た目の大きさに反する重さのせいで、屈強な帝国兵が数人がかりで運び込む羽目になり、ずいぶんと苦労をかけてしまった。

バルガスさんたちに見送られ、俺たちは熱気に包まれた集積地を後にした。

ガタゴトと岩山の悪路を下る帰りの馬車の中、俺は腕を組み、箱に収められた未知の鉱石の性質について考えていた。

「瞬間的な衝撃には異常に硬く、持続的な圧力には粘土のように柔らかい」

「底なしの吸熱性を持ち、高火力の熱すらも奪い尽くす」

これが今回の相手だ。鍛冶屋の常識が真っ向から否定されるような素材ではある。

しかし、ミスリルにせよ、オリハルコンにせよ、あるいはメギスチウムやカリオピウムにせよ、加工の糸口は見つけられたし、最終的には加工できた。

であれば、この謎の鉱石もそうできると思いたい。

例えば、あの石の吸熱の限界を超えるほどの絶大な熱を逃がさず、一気に与え続けるとか。熱を食らい尽くして飽和状態に達すると、普通の金属のように打てるようになるかもしれない。

「それにしても、不思議でしたね」

向かいの席で、カテリナさんが思い出すように小さく息を吐いた。

「あんなに凄まじい炎の中にあったのに、石の周りだけ露がつくなんて」

隣に座る護衛のアネットさんも無言で頷いている。彼女の目にも、あの常軌を逸した吸熱現象はしっかり異常事態として映ったらしい。

俺はそのあたりをやんわり説明した。

「温かいものが急に冷えるとそうなるんですよ」

「なるほど」

「逆に言えば、あれがそれだけの熱を吸い込んでしまったという事でもありますが。継続的に1日か、あるいはもう少し長い期間、熱を加え続けて、どうなるかを見てみたいんですよね」

俺の言葉に、ルシアさんが背筋をぴんと伸ばしたまま、丁寧な口調で応えた。

「その点についてはご安心を、エイゾウ殿。帝都の鍛冶場には、帝国最高峰の設備があります。炉も先ほどの集積地のものにも劣らぬ火力を生み出せますし、急を要する場合に備え、普段は空けておりますので」

「なるほど、それは頼もしいですね。帝国の技術の結晶というわけだ」

俺がそう言って頷くと、ルシアさんが得意満面の笑みを浮かべた。自分のところを褒められて喜ばない人ってあんまりいないしな。

そして馬車は険しい岩山を抜けて来た道を戻り、再び帝都の整然とした、洗練された街並みへと帰還した。

金剛宮に到着するなり、俺は旅の休息もそこそこに、ルシアさんに頼み込んで今回用意されたという鍛冶場へ直行させてもらった。荷解きや着替えなどは後回しだ。

まずは俺の戦場となる場所の空気を吸い、設備を確認しておきたかった。

案内された区画は、宮殿の外縁にあり、防火と防音に特化した分厚い石造りの工房だった。

中に入ると、部屋の中央に鎮座する炉が目に飛び込んできた。ルシアの言葉通り、熱を逃がさないためだろうか、アーチ状の天井と、耐火煉瓦が隙間なく精巧に積まれている。送風のためのふいごも大型で、これなら俺のチートと合わせれば、かなりの温度まで引き上げることができるだろう。金床もハンマーも、手入れの行き届いた一級品が揃えられている。

「いいですね。これなら色々できそうです」

俺は炉の分厚い煉瓦の肌を撫でながら、自然と口元が綻ぶのを感じた。