軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝都へ2

馬車は早朝の町を進んでいく。冬であれば自分の口から白い息が出て、馬からは仄かに湯気が立ち上りと、それはそれで風情のある光景でもあっただろうが、今の季節にそれは望めない。

自然の中ではない雰囲気は王国よりも帝国のほうが強いように感じるが、これはここが元砦なのも影響しているかも知れない。

だが、この爽やかな空気もなかなか良いものだ。

前の世界でこの時間に出ると言ったら、退勤かあるいは出勤かで、いずれにせよ仕事絡みだったので、こう感じること自体良いことなのだろう。

俺たちと同じく先を急ぐのか、はたまた朝早い時間に獲れる何かがあるのか、足早に急ぐいくつかの人影と共に、俺たちの馬車は町を出た。

日がな一日の移動はつつがなく進んで行く。時折、馬のための休憩を挟む以外ではほぼ足を止めることもない。

昼食も休憩中にとった。メニューは宿の主人が作ってくれた強めに胡椒を利かせた、焼いた肉と硬めに焼いたパンで、今の状況ではかなり上々と言っていいだろう。

この世界では、ある程度胡椒が普及している。少なくとも黄金と同じ価値、と言うようなことはない。

さりとて前の世界でのように、一般人がホイホイ買えるような値段でないのも確かだ。それでここまでキッチリ胡椒を利かせてくれているというのは、おもてなししてくれていると考えていいんだろうな。

「しかし、大きい山ですねぇ」

のんびりとしている馬の横で肉を頬張りながら、遠くを見れば、とんでもなく大きな山々が見える。

俺はアルプスどころか日本アルプスもちゃんと見たことはないが、もし見たら同じような感想を抱いたことだろう。

「帝国は山がちですからね。農地が減ってはしまいますが、その代わりなのか鉱物はよく出ます」

ヴィクトリアさんが答えて、俺は頷く。

そも今回俺がこうしているのも出てきた鉱物のためなのだし。

「姉様、どこかにドラゴンが住む山がありませんでしたか?」

ハリエットさんがヴィクトリアさんに向かって言った。今度はヴィクトリアさんが頷く。

「ああ、あるらしいわね。私は行ったことがないけど、レオポルト兄様が行ったんじゃないかしら」

「それはご無事で?」

俺は思わず横から質問を差し挟んだ。普通なら不遜にもほどがある行動だが、ヴィクトリアさんはニッコリと笑って答えてくれた。

「もちろん。その時は討伐などではなく、ただの話しあいでしたから」

「ああ、なるほど」

ドラゴンの中にも話が通じるやつと、そうでないやつがいる、と言うことだろう。

うちのクルルやハヤテも、俺たちの言葉を話すことはできないが、言うことは理解しているようだし。

それに、リュイサさんは樹木精霊だが〝大地の竜〟の一部でもある。彼女は人語を解すし、基本的に人々には優しい……はずだ。

まあ、その山に住んでいるというドラゴンも話の分かるやつなのだろう。

「できれば話の分かるドラゴンが多いと良いんですがね」

「それは確かに」

俺が言うと、ヴィクトリアさんは大きく笑った。

「さて、それでは行きましょうか」

ハリエットさんに促されて、俺たちは再出発の準備を始めるのだった。