軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第31話:学園都市ルーダ

聖女リリィを助けた日の午後。

オレたち一行は目的地の街に到着した。

王国第三都市“ルーダ”。

国内で一番大きな学園があるために“学園都市”とも呼ばれる街。

自分の子どもを学園に通わせるために、昔から貴族や金持ちは街に別宅を建ててきた。

その関係者に対して、商品を売る商人や職人が、どんどん増えていく。

その商人や職人を相手に、更に商売をする者たちも住み着いていった。

こうして独自の発展を遂げているのが、ここ学園都市ルーダなのだ。

そんなルーダの街は、堅牢な城壁に囲まれていた。

オレたち正面にある城門で、通行税を払い街の中に入る。

「すごい! すごい、大きい街だね、パパ!」

街の中の入りマリアは周りをキョロキョしながら、大はしゃぎだった。

生まれて初めて大きな街にやってきたから、仕方がない反応であろう。

笑顔で目を輝かせている。

「これが街……ですか。街はこんなにも、賑やかなものなのですね、オードル様」

リリィも街並みを見て、深く感動していた。

彼女は幼い頃に、田舎の村から大聖堂に連れていかれた。

それ以来は大聖堂の中だけで、隠されて暮らしてきたという。

だから、リリィも大きな街を見るのは初体験。

こんなにも感動しているのだ。

ちなみにリリィは変装のために、聖女の衣を脱ぎ捨てていた。

今はエリザベスの私服を着ている。

これなら誰も聖女だとは思わないであろう。

「ここが第三都市ルーダか? なかなかの街だな。でも、王都の方が栄えているぞ、オードル?」

女騎士エリザベスはレイモンド公爵家の令嬢である。

だから大きな都市には慣れていた。

冷静に街並みを観察している。

「ん? オードル、あれはなんだ⁉ 大きな塔があるぞ! あんなに変わった建築物は、王都にもなかったぞ!」

だがエリザベスもまだ若い16歳の少女。

初めて訪れた都市の文化に、大興奮しはじめる。

「あれは学園のシンボルタワーだ、エリザベス。この大陸も貴重な古代書が、たくさんあるらしい」

「なるほど。さすがはオードル。博学だな」

このルーダの街にオレは、何度か訪れたことがある。

過去の傭兵団の仕事で、短期だが滞在していたのだ。

だから、ある程度の地理や情報は知っている。

とりあえず、一緒に来たのは、これで全員か?

荷物を積んだエリザベスの愛馬も、一向にいるが。

『ワン!』

ああ、そうだったな、フェン。

お前のことを忘れていたな。

白魔狼族の危険な上位魔獣。

だがフェンの見た目は、普通の子犬。

城門の検査も難なく通過していた。

『ワンワン!』

なんだと、自己紹介じゃないだと?

あっちから、いい匂いがするから、食べてみたいだと?

「パパ。フェンの見ている、あのお店はなに?」

フェンの鳴いている方向を、マリアも気にしている。

「あれは屋台料理の店だ。金を払って、歩きながら食べる」

街の大通りには、出店が沢山並んでいた。

街に入った観光客や、通行人に対して商売をしているのであろう。

売り子たちは威勢のいい声で、客引きをしている。

「歩きながら、食べる? 楽しそうだ! でも、パパ、おぎょうぎ悪くなるよね?」

「屋台では大丈夫だぞ、マリア。どれ、皆で買って食べよう」

大きな街に来たことがないマリアに、屋台料理を買ってやることにした。

これもマリアが成長するための社会勉強。

今回買うのは、こんがりと焼いた鶏肉を刺した串焼き。

これならマリアも食べられるであろう。

ついでに他の2人1匹にも買っておく。

よし。みんなで頂くとするか。

「いただきます! もぐもぐ……うん、おいしい! おいしいね、パパ!」

初めて食べる屋台料理に、マリアは感動の声を上げる。

大きく口を開けて、口の周りにタレをつけないように食べていた。

こういった気づかいは、少しずつレディーとして成長して証であろう。

「本当ですね、マリア様。屋台料理……本当に美味しいですわ」

同じく初めて屋台料理を食べるリリィも、感動していた。

神に祈りを捧げながら、美味しそうに食べている。

「まあ……ルーダの街の屋台も、なかなか美味しいな」

エリザベスも文句を言いながらも、串焼きをほお張っていた。

よほど王都の暮らしとし比較したいのであろう。

だは、エリザベス。

その口の周りに、タレが付いているぞ。

かなり美味しいのであろう。

あまり無理はするな。

『ワンワン! ワンワン!』

一番食いしん坊なフェンは、早くも2本目に移っていた。

本来の白魔狼の食欲は凄まじい。

このままペースでいけば、屋台ごと料理を食いつくしてしまう勢いだ。

「あっ、リリィお姉ちゃん! あっちの屋台も美味しそうだね!」

「本当ですわ、マリア様。甘くて、いい香りですね……」

「よし、それなら、この私が買ってやろう!」

「ほんとう、エリザベスお姉ちゃん⁉」

「ああ。何しろ私はこの中で、一番のお姉さんだからな! はっはっは……」

マリアとリリィ、エリザベスの三人娘は、いつの間にか別の屋台へと移動していた。

果物を甘い蜜でコーティングしたお菓子を、買って食べ始める。

「美味しいね! ありがとう、エリザベスお姉ちゃん!」

「礼には及ばんぞ、マリア。……ああ、本当に、この菓子は美味いな!」

「本当ですわ。ほっぺたが落ちそうな甘さですわね」

三人はお菓子を食べながら、満面の笑みを浮べていた。

それぞれ人生に事情がある少女たち。

だが、今は何の屈託もない笑顔で、屋台料理を楽しんでいる。

「さて、そろそろ移動するぞ。このペースだと日が暮れてしまう」

この街には観光に来た訳ではない。

それに住みはじめたら、屋台にはいつでも来ることができる。

オレは様子を見ながら、移動を開始することにした。

「なあ、オードル。まずは、どこに行くのだ? 宿屋? それとも案内所か?」

後ろをついてきたエリザベスは、訪ねてきた。

オレたち一行は引っ越しの道中。

かなりの大荷物を持って移動している。

普通ならエリザベスの言う通り、寝床を探すのが適切であろう。

「いや、まずは学園に向かう。そこでマリアの入学の申し込みをしておく。宿はその後に探す」

だが街の中央にある学園に、オレは向かうことにした。

何しろ学園に入るには、入学の申し込みが必要である。

時期的にもうすぐ“入学の儀”もあるはず。

だから宿屋の前に、学園に向かいたいのだ。

「さあ、学園にいくぞ」

こうしてマリアの入学の手続きのために、オレたち一行は学園と向かうのであった。