軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第114話:ラストバトル

マリアとニースを助け出すために、天空に浮かぶ遺跡に潜入。

古代の屋敷の奥にある、古代の神殿のような空洞する。

そこで待ちかまえていたのは黒髪の魔女。

魔女の口から出てきたのは、衝撃的な内容。

“マリアの産みの母親は黒髪の魔女”だったという事実。

マリアとニースを助け出すため、黒髪の魔女と戦う。

「作戦通り、お前たちは下がっていろ」

「うん。オードルも気をつけてね……」

エリザベスとリリィ、リッチモンドとフェンを安全な後方に下がらせる。

ここから先は人外である魔女との戦い。

どんな被害に及ぶか予想もできない。

「さて、準備は出来たか、ガラハッド?」

だからこちら側も最強の布陣で挑む。

「愚問です。私は常に戦いの中にいます。オードルさんと同じように」

「そうだな。さて、いくとするか」

ガラハッドと二人で前に進んでいく。

向かう相手は、全ての元凶である漆黒の魔女だ。

『おや、たった二人だけで、この私を倒すつもりなの?』

魔女は訪ねてくる。

相変わらず感情は込められていないが、余裕が伺える。

自分の強さに自信があるのであろう。

「聞き分けのない“怨霊”を倒すのは、オレたちだけで十分だ」

この魔女は普通の相手ではない。

何しろ通常の攻撃が通じないのだ。

数にものを言わせたところで、こちらの被害が増えるだけ。

だから少数精鋭の二人だけなのだ。

「オードルさんの仰るとおり。光栄に思うのですね、魔女よ。戦鬼と剣聖の共闘……この大陸でも最強クラスの二人です」

ガラハッドの言っていることに誇張はない。

客観的に見ても、オレたち二人の組み合わせは、現時点での最強コンビなのだ。

『いいでしょう。力なき今の人の、自分たちの無力を嘆くがいい』

魔女は余裕の態度。

言い終えると同時に魔女が動く。

何かの呪文を唱えると、その周囲に漆黒の槍が出現する。

「オードル、気を付けて! あの黒い槍は危険よ!」

後方のエリザベスから、叫びに似た声が上がる。

“魔女の漆黒の槍”……ここまでの道中で聞いた話、あの槍にエリザベスたちはやられてしまったのだ。

「かなり威力があるみたいだな、魔女よ。だが!」

漆黒の槍が発射される前に、オレは動き出す。

闘気術で身体能力を最大限に強化。

一気に間合いを詰めて、魔女の目の前に到達。

「遅いぞ、魔女! 斬(ざん) !」

そのまま一気に大剣を振り抜く。

狙いは魔女の胸元のネックレス。

先ほどの話が本当なら、ここが魔女の本体。

この一撃で勝負を終わらせてやる!

「ぐっ⁉」

だが斬撃は届かなかった。

魔女の直前にそびえたつ見えない壁に、剣先が阻まれてしまったのだ。

“ぬるり”とした不気味な手応え。

なるほど……こいつがエリザベスたちの言っていた“見えない防壁”か。

「オードルさん! 左に飛んでください!」

直後、ガラハッドが斬り込んでくる。

間髪を入れない連携攻撃だ。

「ぐっ⁉」

だがガラハッドの斬撃も、魔女には届かない。

先ほどと同じように、見えない壁によって阻まれてしまうのだ。

オレたち二人は一旦、魔女から距離をとる。

黒髪の魔女は一歩も動いていない。

さて、次はどう攻める?

「オードル! 上から槍が来るわよ!」

エリザベスの叫び声が響き渡る。

漆黒の槍が放たれたのだ。

オレとガラハッドの死角の頭上に、怒涛の攻撃が降り注ぐ。

「ちっ!」

後方に飛んで槍を回避する。

次の瞬間、目の前で漆黒の槍が爆発。

凄まじい衝撃波が襲ってくる。

これはマズイ。

「くっ⁉」

オレは大剣を盾のように使い、衝撃波を受け流す。

かなりの威力だが、何とか受け流せた。

「ガラハッド、そっちは無事か?」

「ええ、アレは初見ではないので大丈夫です」

ガラハッドも無事だった。

素早い身のこなしで、上手く衝撃波を回避していた。

二人で距離を取り、魔女の周囲を観察する。

「あの壁は何だ、ガラハッド?」

「私は前に戦った時とは、少し違う防壁のようですね。初めて見ます、アレは」

今の攻防で分かったことがある。

魔女の周囲には、見えない防御壁が展開されていたのだ。

ロキの時の漆黒の壁にも似ているが、手応えがまるで別次元。

あの時は強力な攻撃を加えることで、最後には破壊できた。

だが今回の見ない壁は別もの。

衝撃すら手元に感じないのだ。

『鍵でこの遺跡を起動させた今、私の魔力は完全体となった。お前たちの攻撃はこの“次元を壁”では無力。永遠に届くことは叶わず』

一方で魔女は余裕であった。

先ほどの連撃を受けて、まるで意に介していない。

「“次元の壁”だと? たいそうな名前だな。 斬(ざん) !」

今度は奇襲攻撃。

大剣から闘気の衝撃波を、撃ち放つ。

分厚い城壁すらも破壊する一撃。

直接攻撃は届かなくても、この闘気の刃ならどうだ!

「ちっ。これでもダメか」

だが衝撃波も届かなかった。

魔女の目前にある見えない防壁、“次元の壁”によって、完全に防がれてしまったのだ。

『無駄なことを。斬撃、打撃、闘気術、魔術、どんな攻撃であろうが、今の私には届かない。貴方たちでは私ことを、この場所から一歩も動かすことすら出来ない』

眉ひとつ動かさず、魔女は余裕の表情だった。

よほど防御力に自信があるのであろう。

まるで対岸の火事の様に、無関心な表情でこちらを見下している。

「なるほど。斬撃も闘気も届かないのか。それな、“こいつ”はどうだい!」

オレは腰に装備していた壷……“油壺”を、魔女に向かって投げつける。

これは衝撃と同時に発火する“火炎の壺”。

『炎による攻撃だと?』

空中で油が飛び散り、炎が舞い上がる。

“次元の壁”にぶつかって発火したのだ。

『無駄なことを』

魔女が言うとおりだった。

燃え上がる炎は、魔女には届いていない。

見えない壁に遮られて、不自然な形で赤々と燃え始める。

「なるほど、そうか」

だがオレの第一の目論見は成功していた。

なぜなら火炎の壺の投擲は、攻撃が目的ではなかったのだ。

「それが次元の壁とやらの“防御範囲”か」

目的は魔女の見えない防御壁を、可視化して調べるため。

これで相手の防御陣の範囲が確定できたのだ。

「なるほど。あれが魔女の防御範囲ですか。さすがはオードルさん。戦術も百連練磨ですね」

炎の範囲を確認しながら、ガラハッドも感心していた。

これでオレたちは一歩前進。

さぁ、魔女よ、覚悟しておけ。

『次元の壁の範囲が見えた? それがどうしたの? 見えたところで、貴方たちの攻撃は永遠に届かないのよ?』

「それはどうかな、魔女。いくぞ、ガラハッド!」

「承知しました!」

余裕を見せたままの魔女に、二人で斬り込んでいく。

先ほどの連撃とは作戦を変更。

今度は左右からの挟撃。

同時攻撃だ。

「 覇(は) ぁああああ!」

「 突(とつ) ぅうう!」

魔女の周囲は、まだ轟轟と燃えている。

だが好都合。

炎と黒煙を目隠にして、魔女に斬り込む。

『無駄な足掻きを!』

同時攻撃も、次元の壁によって塞がれてしまう。

だが構わない。

「 撃(げき) ぃいい!」

「 斬(ざん) んんん!」

更に二人で連撃を繰り出していく。

上下左右。

魔女の背後と死角から

全ての方向から、魔女に攻撃を加えていく。

どんな強固な防御壁にも、必ず死角あるはず。

ガラハッドとの連携で、次元の壁に攻撃を加えながら、弱点を探していく。

『無駄なことを、頭の悪い蛮族共が……』

魔女は呪文を詠唱。

漆黒の槍を出現させる。

数は先ほどの倍以上。

明らかに危険な数だ。

『消えろ』

直後、目の前が爆ぜる。

ゼロ距離からの発射と爆発。

衝撃が走る。

「ふう……」

オレは辛うじて直撃を回避した。

だは爆発の衝撃までは、完全に受け流せながかったのだ。

全身に鈍い痛みが走る。

「オード! 大丈夫⁉」

後方からエリザベスの声があがる。

全身から出血しているオレを見て、心配しているのであろう。

だが、この程度では何とかなる。

それよりもガラハッドのダメージの方が気になる。

「おい、そっちは大丈夫か?」

「私は貴方のような規格外のタフさはないので、先に回避させていただきました」

スピードを誇るガラハッドは、緊急回避に成功していた。

オレと違い今のところ無傷。

だが耐久性のこと考えたら、漆黒の槍をガラハッドが受けるのは危険だ。

(さて、どうしたものか……)

また距離を取り、策を練る。

今のところ魔女は攻防において完璧だった。

だが必ず弱点はあるはず。

何しろあれほどの火力と防御力。

持久力戦はどうだ?

『持久戦を考えても無駄よ。私の“次元の壁”と槍に際限はない。この遺跡から無限に近い魔力の供給を受けているから』

魔女はこちらの考えを読んだかのような余裕さ。

「なるほど、持久戦も通じないか。ん? なるほど、やはりそうか」

その時、魔女の周囲の変化に気がつく。

予想していたことが起ころうとしていたのだ。

「黒髪の魔女よ。そろそろ火炎壺が“効いて”きたんじゃないか?」

先ほどの油は、まだ魔女の周囲で赤々と燃えている。

『この程度の炎の熱さも、“次元の壁”は通じない。“人の身に害意があるもの”は全て遮断しているのよ、この壁は?』

轟轟と燃える炎に、魔女は手を差し伸べる。

だが素手は火傷する様子はない。

魔女を覆う次元の壁によって、炎の熱さえも塞がれているのだ。

自動的に防御しているのであろう。

なるほど、たいした防御機能だ。

「勘違いするな。オレが狙っていたのは“熱”による攻撃ではない。その証拠に“その身体”の方に異変が起きているぞ」

オレが狙っていたのは別の攻撃方法だった。

『なん……だと?』

魔女は自分の身体に視線を移して、表情を変える。

今まで無表情だった魔女が、初めてハッとする。

『こ、これは、まさか……⁉』

驚くのも無理はない。

魔女の 唇(くちびる) や指先が、青紫色に変化。

明らかに“肉体的なダメージを負っていたのだ。

「いくぞ! もう一発、 斬(ざん) !」

その隙を狙って、オレは衝撃波を繰り出す。

『くっ⁉』

魔女は思わず声を上げる。

後方に飛び退き、衝撃波を回避。

残念ながら魔女にダメージを与えることは出来なかった。

『先ほど……何をした、戦鬼?』

だが魔女は明らかに動揺している。

自分の肉体を確かめながら、こちらを警戒していた。

魔女の変色は既に収まっている。

だが先ほどの身体の異変の正体に、気が付けずにいるのだ。

「お前の次元の壁はたいしたもの。だが完璧すぎるだけに“弱点”があったようだな」

『弱点だと?』

「ああ、そうだ。たしかに炎のダメージは防いでいた。だが頑張りすぎて、同時に“肝心なモノ”も防いでいたんだ」

『大事なモノ……だと⁉』

「ああ、そうだ。それは“空気”だ」

狭い空間で火が燃えると、“悪い空気”が発生して、人は空気が吸えなくなる。

これは傭兵時代に、オレも戦場で経験したこと。

人にとって空気は何もよりも重要。

たとえ炎による焼死を逃れても、息が出来ずに死亡する者は多いのだ。

『まさか……最初から、それが狙いで⁉』

「そうだ」

普通、人は周囲が燃え盛ったら退避する。

だが次元の壁に、魔女は絶対的な自信を持っていた。

だから火炎壺の攻撃を受けても、その場を動こうとすらしなかった。

次元の壁に対する自信を、今回は逆手にとったのだ。

「やったな、オードル!」

後方でリッチモンドは叫ぶ。

ちなみにこの攻撃のアイデアは、あの賢人の案。

マリアたちが誘拐された時の戦闘。

その時の情報を、エリザベスたちから聞き取り。

完璧な防御壁の対抗策を、道中でいくつも編み出してくれたのだ。

今回はその策の一つが、ピタリとはまった成果。

さすがリッチモンド……大陸一の賢人だ。

「さて、どうした黒髪の魔女。『あの場所から一歩も動かない』、はずじゃなかったのか?」

自分が憑依している肉体の窒息を恐れて、魔女は安全な後方に退避していた。

その事実を挑発。

魔女の自信を打ち砕く。

『くっ……下等な蛮族種の分際で! だが、その攻撃は二度と通じない!』

魔女は急に感情的な口調になる。

精神的に肉体的に動揺しているのだ。

「お前の弱点は他にもいくつもあるぞ。何なら、教えてやろうか?」

『戯れ言を! 死ねぇ!』

魔女が叫ぶ。

今まで無表情で機械質だった余裕は消えていた。

『今度は、油断はしないわ!』

漆黒の槍を再度召喚。

その数は先ほどの更に倍以上。

「さて、第二幕のスタートだな!」

こうして激高した魔女に、オレたちは追撃を仕掛けるのであった。