軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第112話:黒髪の魔女

マリアとニースの後を追い、天空に浮かぶ遺跡に転移。

立ちはだかる危険な守護者“パルマの鉄人兵”を討伐し、古代の屋敷を探索していく。

屋敷の奥に異質な扉を発見。

その中は何度も分帰路のある、不気味な迷宮の洞窟だった。

だが全員の直感と力、知識で突破していく。

突破した先にあったのは、古代の神殿のような空洞。

『よくぞ、ここまで来たものです……』

その先で待ち構えていたのは、黒髪の魔女。

オレはついに黒髪の魔女と対峙するのであった。

「こいつが“黒髪の魔女”か……」

『“黒髪の魔女”? 私のことかしら? 面白い呼び名』

「ああ、そうだな」

魔女と会話しながら、相手の情報を引き出す。

何しろ一行の中でオレだけが、魔女とは初見。

距離とり、注意深く観察する。

黒髪の魔女は非武装だ。

薄いローブを着込んでいるだけで、防具や武器は装備していない。

荒々しさや危険性も感じない。

口調は丁寧だが、どこか無機質で感情が籠っていない。

だが余裕の態度で対応してくる。

一見すると、どこかの貴族夫人にも思える妖艶さえある。

(だが、“普通”ではないな、こいつは……)

だがオレは感じていた。

傭兵として直感が、最大級に警鐘を鳴らしているのだ。

「黒髪の魔女は……こいつは危険すぎる」と。

最大級に警戒を強める。

「オードル……気を付けて、あいつは危険よ……」

『ク、クゥン……』

後ろでエリザベスとフェンが、声を震わせている。

前回の戦いで二人は、魔女に一方的に叩きのめされていた。

その時の圧倒的な恐怖が、トラウマとなってしてまった。

足がすくんでいるのであろう。

『さて、戦鬼……人族最強の戦士。よくぞ、ここまで辿り着けたわね』

黒髪の魔女が語り始める。

無機質な声だが、美しい声。

感情のまったく籠っていない不気味な視線で、オレのことを見つめてくる。

そして“この視線”を受けるのは初めてない。

「この視線は? 前に感じた視線の主は、お前だったのか?」

この魔女の視線に覚えがあった。

今から二年ほど前……“マリアを村の前で拾った時”からだ。

あの日から、時おり感じていた視線と、黒髪の魔女の視線が同じ。

最初の数回だけで、最近はまったく感じなかったか視線だ。

「ということは……古代の術だったのか、あれは」

当時は近くに誰の気配もなかった。

今だからこそ分かる。

この黒髪の魔女が、オレのことを遠くから監視していたのであろう。

『ご名答よ。完璧な“遠見の術”を感知するなど、普通はあり得ないことだけど。さすがは、戦鬼……と言ったところね』

やはり視線の主は、この黒髪の魔女であった。

“遠見の術”というのが術の名なのであろう。

そして特に見破られても、魔女は動揺した様子はない。

いや……そもそも感情自体の存在が、こいつからは感じられないのだ。

『それにしても剣聖……貴方が戦鬼に仲間になっているとは、少し想定外だったわ』

黒髪の魔女の視線が、隣のガラハッドに向けられる。

この二人は何回か会ったことがあるのだ。

「お久しぶりです、魔女さん……いえ、オードルさん風に言えば、“黒髪の魔女”ですね。ちなみに私はオードルさんとは“仲間”ではありません。今は敵でもありませんが、言わば“利害が一致した同志”の仲です」

ガラハッドはいつもの飄々(ひょうひょう)と感じである。

「ところで黒髪の魔女さん、あなたも口調が随分と変わりましたね? 前に会った時は、淡々とした口調でしたが?」

『口調? ええ、この時代の言葉も慣れてきたから。いえ……学習してきたと言った方が正しいかしら』

「なるほどですね」

だが剣聖は会話しながらもオレ以上に、魔女のことを警戒している。

何しろこの剣聖も、今は魔女と敵対している関係。

一年程前にルーダ学園で戦っていたのだ。

『まあ、どうでもよいことかしら。戦鬼と剣聖の二人……その後ろの“四つ”……』

黒髪の魔女が“四つ”と呼んだのは、仲間たち。

エリザベスとフェン、ニースとリッチモンドのこと。

『こっちは取るに足らない存在ね』

四人を 一瞥(いちべつ) だけして、またオレに視線を向けてきた。

「“取るに足らない存在”……だと?」

大事な家族と仲間を、物呼ばわり。

怒りに似た感情が沸き上がってきた。

だがオレは心を落ち着かせる。

「ふう……さて、マリアとニースを返してもらおうか」

何故なら今は二人を助け出すのは最優先。

いつまでも魔女とお喋りをしている暇はないのだ。

「この近くにいるんだろう? 分かっているんだぞ」

単刀直入に訊ねる。

リリィの聖女の力によると、二人はこの空洞のどこかにいるはずなのだ。

『マリアは分かるけど、“ニース”とは誰のことかしら?』

「ニースはお前が誘拐した二人のうち、小さな方の少女だ」

『ああ、“失敗作”のことね』

大事な家族であるニースを、物扱い。

しかも失敗作という扱い。

「失敗作だと?」

また怒りが込み上げてくるが、グッとこらえる。

何故なら怒りの感情は、冷静さを失わせてしまう。

今はマリアとニースの居場所を、聞きだすことが最優先。

そして黒髪の魔女の目的も知りたい。

『ええ。あなた方がニースと呼ぶモノは、“鍵”と成りえなかった失敗作よ、アレは』

「“鍵”だと?」

魔女の口から、初めて聞く単語がでてきた。

リッチモンドにも視線を向けても、首を振って返してくる。

『“鍵”は古代文明の中でも、秘匿の存在。どんな文献にも残っていないわ。でも戦鬼には知る権利がある。だから教えてあげる。“鍵”はこの空中庭園と起動さるもの。そして“真の遺跡群”を再起動させる鍵よ』

「『“真の遺跡群”を再起動させる鍵』だと……」

魔女の口から出てき単語に、ハッとなる。

この真下で見かけたもの……塔の遺跡の壁画で見かけた、ある一文を思い出したのだ。

(“鍵”……『稀代なる王たる者の 女児(ちご) 』と『鍵』だったな。あれはたしか……)

塔の壁画にはそんなことが描かれていた

頭の中で情報をまとめていく。

黒髪の魔女は古代文明の遺跡を動かすために、“鍵”を欲していた。

『稀代なる王たる者の 女児(ちご) 』が『鍵』と呼ばれる存在。

そしてニースのことを失敗作と呼んでいる。

「……まさか⁉」

情報をまとめて、ある予測が浮かぶ。

自分でも信じられない予測。

「まさか……マリアが……か?」

ニースと瓜二つの少女マリア。

大事な愛娘。

瓜二つなのは偶然ではなかったのであろう。

『ご名答よ、戦鬼。真の“鍵”はマリア。アレは私の成功作品』

「そうか……」

嫌な予感は的中していた。

やはり魔女の本当の目的は、マリアだったのだ。

同時に、もう一つの仮説が繋がる。

ニースとマリアの関係。

黒髪の魔女とニースの関係。

そして魔女の『アレは私の成功作品』という呼び方。

「つまり“マリアの母親”は、お前なのか、黒髪の魔女?」

『“母親”……? 生物的な女親のこと? この身体で育成して出産したから、そういう意味では、私はマリアの“母親”よ』

魔女は何の感情も込めずに、自分の腹を触って答えてきた。

「やはり、そうか……」

そしてオレの嫌な予感は当たっていた。

マリアの本当の母親は、この黒髪の魔女だったのだ。