軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

食堂

シェルを伴って食堂につくと、ちょうど入口の所でユーグラムとディーグリーに会ったので、そのまま食堂へ。

二股女劇場は開催されておらず、食堂内は演習の話題で賑わっていた。

いつもの席で注文を済ませ、ぼんやりと周りを見る。

「いやー、今日は大変だったね~。まさか森の中にロックリザードが出てくる何て、何とか倒せたから良かったものの、ケータ様がいなかったらと思うと、ゾッとするよねー」

「全くですね、ロックリザードにあれ程魔法が効かないとは予想外でした」

「普通のロックリザードなら、それ程魔法耐性は強く無い筈なんだが、運悪く特殊個体に遇ってしまったのかもしれないな」

「見た目では特に変わった所はなかったんだけどね~?」

話ながら3人に代わる代わる頭を撫でられる。

幼児の姿になってから、やたらと頭を撫でられる。もう慣れたものだが、だからと言って特に嬉しいわけでは無いのは、精神が大人だからか?己の事ながら珍妙な生き物になったものである。

給仕さんが料理を運んでくれたので、食べ始めると、食堂中央に生徒会長の姿を発見。

あれ?生徒会長って三年生だから、一週間泊まり込みでは?と思ったら、最初の一週間は慣らす為に日帰りも出来るなら、しても良いらしい。

生徒会長は席に座るでもなくキョロキョロ辺りを見回し、二股女でも探しているのか、見付からないと食堂から出て行った。

食事を注文しなかった事から、迎えにでも行ったのだろう、物好きな奴だ。

食事が終わる頃、生徒会長と二股女、キャベンディッシュが食堂に姿を見せた。

生徒会長とキャベンディッシュは、険悪に睨み合っているが、間に挟まれた二股女にそれぞれ腕を組まれているので、争うわけにもいかず、険しい顔をしていた。

両腕をイケメンに絡ませてご満悦の二股女。

周りにいる令嬢達からの凍るような視線を物ともしていない。

四十を越えたおっさんからすれば、女子高生なんて、自分とは別の生き物のように感じていたが、二股女は更に別次元の生き物のように感じる。

食事も終わり、食後のお茶まで飲んでから席を立つ。

入口に向かっている背に、聞きたくない声が掛かる。

「おい貴様!待てと言っているだろう!愚かなだけでなく耳まで悪くなったとは、憐れな奴だな!」

関わりたくないし、バリアも張っているので、無視して進もうとしたのに、態々前に回り込んでまで止めに来たので、仕方なくアールスハインが足を止めると、

「貴様!今日はよくも卑怯な手を使って私の手柄を奪ったな!貴様それでも王族か?恥ずかしくは無いのか?まだ少しでも王族としての自覚が有るのなら、さっさと私から奪ったマジックバッグを返せ!!今ならこの私の広い心で、1度だけ許してやってもいい、さあ今すぐ出せ!」

完全な言い掛かりである。

「貴方が何を言っているのか分かりませんし、分かろうとも思いません。今日私が持参したマジックバッグは、間違いなく私の物ですし、誰かに渡す気も有りません。用がそれだけであれば失礼します」

アールスハインが淡々と返せば、キャベンディッシュは顔を真っ赤にして、怒り狂う。

「貴様!言うに事欠いて私の物だと?あのマジックバッグは、私が母上から頂いた物だ!」

「何を勘違いされているのか知りませんが、私の持っているマジックバッグは私の物ですし、手に入れた経緯も父上を始め、複数の方々が知っている事です、貴方に言い掛かりを受ける謂れは無い!」

「なな、なにを!貴様!そこまで言うか!私が広い心で許してやろうと言うのに!それを踏みにじるとは!もう許せん!」

いきり立ったキャベンディッシュがこちらに向かって火魔法を放つ、が、当然バリアに跳ね返されて威力そのままにキャベンディッシュに直撃する。

近くにいた令嬢達の悲鳴が響く、無駄にヒラヒラキラキラした服は、予想外によく燃えて、慌てるだけで一向に消そうとしないので、仕方なく水魔法で消火してやると、煤けてヨレヨレのボロボロになったキャベンディッシュが、憎悪の目で睨んでくる。

「キャー!ディッシュ大丈夫?大変!あんた達ディッシュに何て酷いことをするの!ディッシュは王子様なのよ!あんた達なんてすぐに死刑に出来るんだから!」

大勢の人が最初からこの騒ぎを見ていたのに、自分だって見ていたはずなのに、一方的にこちらを非難するのは、二股女の得意技である。

好きな男を庇う、自分健気!とでも思っているのか?

ユーグラムやディーグリーには、上目使いで何かをアピール出来ているつもりか?

全く気がしれないが、これ、もう放置じゃダメだろうか?

ウンザリしながら二人を眺めていると、食堂に新たな人物が入ってきた。

「貴方達はつい最近、城でも同じような騒ぎを起こしたばかりなのに、また同じ事を繰り返すのですか?言い掛かりをつけ、反撃にあい、逆恨みですか?いい加減にしてもらえませんか?」

テイルスミヤ長官の登場である。

ある程度事情は聞いているのか、ウンザリした顔でキャベンディッシュを見ている。

「何を言うか!こちらは立派な被害者だ!降格されたとは言え、貴様今は教師だろう!さっさとこいつらを処罰しろ!」

「そうよそうよ!王子であるディッシュをこんな目に合わせたんだから、死刑にしなさいよ!」

はぁぁぁぁー、と溜め息を吐いたテイルスミヤ長官は、

「キャベンディッシュ王子が、アールスハイン王子に言い掛かりをつけ、キャベンディッシュ王子が、アールスハイン王子達に向けて魔法で攻撃し、ケータ様のバリアに弾かれて、キャベンディッシュ王子に火がついた。これは自業自得と言うものですよ、処罰と言うなら、訓練所以外の場所で攻撃魔法を使った、キャベンディッシュ王子こそ処罰されるべきです!」

「そもそもこいつが私のマジックバッグを盗んだのが原因だ!攻撃される理由がこいつにあったのだ!私は悪くない!」

「それが言い掛かりと言うんですよ、アールスハイン王子のマジックバッグは、ある人物が特別にアールスハイン王子に贈った物です。キャベンディッシュ王子の物ではあり得ません!」

「そ、そ、そんな事は聞いて無いぞ!だったらその人物とやらに、私の分を今すぐ用意させろ!」

「お断りいたします!あの方は好意でマジックバッグを贈られたのです!こちらからねだる事など出来ません!」

いや、皆結構容赦無くねだって来たよね?とは、心の中で突っ込んでおく。

「それと、私の分と仰いましたが、キャベンディッシュ王子は、母上から頂いたマジックバッグをお持ちなのでしょう?先程そう叫んでいたと、複数の生徒から聞いておりますが?アールスハイン王子の所有するマジックバッグは、キャベンディッシュ王子の物では無いことを、私がお約束致します!ですから、キャベンディッシュ王子は、母上から贈られたマジックバッグをお使いになればいいでしょう?それとも更にマジックバッグを寄越せと?お一人で幾つものマジックバッグをご所望とは、少々強欲に過ぎるのでは?」

テイルスミヤ長官の冷静な返しに、何も言えないキャベンディッシュ。

「それでは、キャベンディッシュ王子、この学園の規則を破った罰を受けて頂きますね!」

「何?私が何をしたと言うんだ?!」

「ですから、訓練所以外での攻撃魔法の使用です。罰を決めるのは学園長なので、取り敢えず今は反省室に入って頂きます」

「わ、わたしは王子だぞ!」

「王子だろうが、学園にいる以上規則には従って頂きます!」

テイルスミヤ長官が言うと、数名の体格の良い教師が現れ、キャベンディッシュを食堂から連れ出した。

二股女は、キャベンディッシュが捕まる寸前、素早く離れ自分は関係無いとばかりに、素知らぬふりをしている。

どうしようもない二人に、アールスハインとテイルスミヤ長官の溜め息が重なる。

「アールスハイン王子、災難でしたね、まぁお怪我が無くて何よりです」

「テイルスミヤ長官も、いや、先生もお疲れ様です」

お互い苦笑して、別れる。

「あの令嬢は、何なんですかね?状況も分からず、ただ首を突っ込んだだけで、何がしたかったのか?」

ユーグラムが心底理解出来ないって顔で呟くと、

「あれじゃない?好きな男を庇う私健気!とか思ってんじゃない?そんであわよくば、こんな健気な私を好きになっちゃった?って目でチラチラチラチラこっち見てたじゃん!」

「全く理解したく無いですね!」

ディーグリーのふざけ半分の言葉に、虫魔物を見た時のように不快も露な顔をするユーグラム、ディーグリーまで嫌そうな顔になる。

「とにかく、あの人達には近付かない事だね~」

「好き好んで近付くのは、生徒会長くらいでしょうがね!」

「たしかにー!」

と、空気が軽くなった所で解散。

また明日頑張ろー!と声を掛け合って別れた。

演習よりも、最後の食堂でのゴタゴタの方が疲れたよ。