軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まだ5日目午後

唖然として固まる皆のせいで、俺の渾身のドヤ顔が無駄になった。

ペーパーナイフの魔法を解くと、自然と流れていた魔力も消えたので、シェルにナイフを返す。

アールスハインの所に戻ると、唖然としながらも抱っこの体勢を取るので、スポンと腕の中へ、俺の重みで我に返ったのか、

「ハァーーーーーーーー」

深く長い溜め息を吐かれた。

アールスハインの溜め息に、他の面々も正気に返り、皆して溜め息。

テイルスミヤ長官が、俺が切った木切れを繁々と眺めて、

「ケータ様は氷魔法をお使いになったんですか?」

「んーん、みじゅまほー(んーん、水魔法)」

「凍りついてますよ?」

「みじゅのおんどーをしゃげりゅと、こおりゅでしょー(水の温度を下げると、凍るでしょう)」

更に繁々と木切れを眺めるテイルスミヤ長官。

ユーグラムとディーグリー、アールスハイン、インテリヤクザな担任も近寄って眺める。

切った直後は、断面だけが凍っていたのに、今は木切れ全体が凍っている。

ちょっと温度を下げすぎたようだ。

「ケータ、さっきの剣が、魔法剣か?」

「しょーよー、まりょきゅをけんにーながしゅてー、まほーかけちゃよ!(そうよ、魔力を剣に流して、魔法掛けたよ!)」

「剣に魔力を流す…………」

アールスハインは俺をシェルに渡すと、自分の剣を取りだし、少し離れてから、剣に魔力を流し始めた。

剣が少し光ってきたと思った時、パンッと軽い音をたてて剣が弾けた!

魔力を一気に流し過ぎたらしい。

ディーグリーが王子の剣がー!と騒いだが、今持っているのは練習用の模造剣なので問題無いらしい。

俺もついホッとしたよね!

「はいんー、ゆっくりよーゆっくりー」

忠告してみると、マジックバッグから新たな模造剣を出して、今度は慎重に魔力を流していく。

問題無く魔力が流れて、うっすらと剣が光ってくる。

「「「「おおおー!」」」」

皆が声を揃えて驚いているが、ここからじゃない?

アールスハインは更に慎重に、今度は魔法を発動していく。

アールスハインもさっきの俺と同じ水魔法を発動。

フワッと光った剣身が、水を帯びて潤む。

「「「「おおおー!」」」」

シェルが再びマジックバッグから取り出した木切れを、地面に置く。

アールスハインが魔法の掛かった剣で切りつけるが、その切れ味は普通の模造剣と変わらない。

不思議そうにこっちを見るアールスハイン。

「しゅりゅどい、やいばーのいめーじちた?(鋭い刃のイメージした?)」

ああ!と驚き、少し考えた後、もう一度イメージし直して切ったが、刃の鋭さが足りなかったのか、切れ味は余り良くなかった。

俺の刃のイメージは、テレビで見た日本刀なので、削ぎ切りにする日本刀と、叩き切るこの世界の剣とは、切れるイメージが違うのかも知れない。

仕方ないので、掌に水の玉を造り、アールスハインに近付く、水の玉を薄く伸ばし丸い刃の形に、アールスハインに良く見せてから、木切れに近付け水の刃を回転させると、ギュイイーーンと大きな音をたてて切断される木切れ。

次に、水玉の刃の部分を更に薄く鋭くして、アールスハインに良く見せてから、木切れを切断。

シュインと軽い音と共に切断される木切れ。

断面を見せれば、ギザギザの断面と滑らかな断面。

繁々と眺めたアールスハインは頷き、剣に掛けた魔法の水の刃を鋭く薄く整えて行く。

木切れに当てた剣は、何の抵抗も無く吸い込まれる様に木切れを切断し、呆気なさに呆然とするアールスハイン。

イエーイとシェルとハイタッチしていると、

「ケータ様、ケータ様ケータ様!俺もあれやりたい!短剣でも出来る?」

とディーグリーが突撃してきたので、練習しなさい、と返しといた。

ディーグリーが短剣を取り出し、短剣に魔力を流す、すると短剣がカタカタ震えだしたので、慌ててストップを掛ける。

ディーグリーの短剣を見せてもらうと、意匠の凝った、手入れの行き届いた、大事に使われてきたと分かる短剣だった。

なので、最初はアールスハインのように、暴発する恐れがあるので、練習用の短剣を用意して、成功してから愛用の短剣を使うようにアドバイスした。

納得したが、すぐに練習をしたいらしく、一旦部屋に戻り、練習用の短剣を取ってくる!と訓練所を走り出て行った。

ふと見ると、テイルスミヤ長官は宝石の付いた杖の様な物に魔力を流していて、インテリヤクザな担任は柄の長い両方に小さめの斧をつけた様な武器に、魔力を流していた。

ユーグラムは大きめの指揮棒みたいな棒に魔力を流し、それぞれに魔法を纏わせようと練習している。

武器に魔力を流すのに相性が良いのか、インテリヤクザな担任が、一番最初に斧に火魔法を纏わせる事に成功し、それを嬉々として振り回す様は、とても危ない人に見えた。

確かに火魔法なら、纏わせるだけで攻撃にはなるなと納得した。

テイルスミヤ長官とユーグラムは、やはり頭で考えてしまっているのか、魔力を流すのに苦心していた。

そんな俺達を、他のクラスメイトや上級生が、恐ろしいものを見るように凝視している。

おいでー教えますよー!と思ったが、近付いてくるものは誰一人居なかった。

ディーグリーが、汗をかき息切れしながら大荷物を持って戻って来た。

大荷物の中から短剣を取り出し、早速練習を始めるが、勢いに任せて魔力を流し過ぎ、早速短剣を弾けさせた。

無言になるディーグリー。

深呼吸を繰り返し、新しい短剣を取り出すと、今度はゆっくりと魔力を流す。

うっすらと剣が光って、魔力が流れているのを感じ、魔法を纏わせる。

途端弾ける短剣。

今のは何の魔法を纏わせたのか?

ディーグリーは、その後何度も失敗し、無数の短剣を犠牲にした。

「でぃーぐーでぃー、にゃにのまほーにゃがちてんの?(ディーグリー、何の魔法流してんの?)」

「あぁ、ケータ様、流したいのは雷の魔法なんだけど、適性が弱いからかなー、全然成功しないんだよねー」

「かみにゃり、どんにゃいめーじで?(雷、どんなイメージで?)」

「え?雷って言ったら、ゴロゴロドーンビシャシャシャーーってやつじゃん!」

ダメだこりゃ。

空から落ちる雷を、どうやって自分の短剣で再現するつもりなのか全く分からない。

首を傾げる俺に、

「いや、でもねケータ様、ユーグラムの雷魔法とか、めちゃめちゃ強力だから!あれを短剣で出来たら、最強だから!」

とか力説してくる。

いつの時代もどこの世界も、男の子は最強とか伝説とかに憧れるものらしい。

我が前世でも、四男秀太が常に最強を求め、俺を含めた兄達に日々闘いを仕掛けて来ていた。

結果はボロ負けだったが。

年の近い兄弟には加減も無く殴られ、双子の姉には、心を抉る言葉攻めを受け、引き付けを起こす程泣かされ、俺に軽くあしらわれ、それでも懲りずに毎日誰かに挑んでいる。

四男秀太は、アホだが可愛い弟である。

そんな四男秀太の姿が、ディーグリーに重なる。

容姿は全く似ていないが、能天気さと、この場に用意された大荷物に、そこはかと無いアホさを感じる。

兄ちゃんとしての使命感が疼く。

この世界には、魔道具は有るが、電気は無い。

ディーグリーの雷のイメージが、落雷しかないのはしょうがない事なんだろう。

ディーグリーの適性は知らないが、魔法はイメージ、やってみても損は無い。

なので俺は、ディーグリーに掌を差し出して、その上に電気の玉を出してやる。

バチバチと爆ぜる玉を見せて、

「でぃーぐーでぃー、こりぇがかみにゃりのもと(ディーグリー、これが雷の元)」

と教えてあげます。

色んな角度から観察するディーグリー、

疑わしそうに俺を見て、

「いやいやケータ様、雷はこんな小さく無いから!これ強そうじゃ無いし!」

と言うので、少々電圧を下げて、

「しゃわってみー?」

と促せば、疑わしそうな顔のまま、躊躇い無く指先で触るディーグリー。

触れた途端、バヂィッと爆ぜる雷玉。

反射的に指を離したディーグリー。

不思議そうに指先を見て、考えて、閃いたらしく、

「これは、あれだ!冬にドアの取っ手でなるやつ!あれの強いやつ!え?でもこれが強くでっかくなると、雷になるの?本当に?」

まだ疑うので、今度は電圧を上げて、雷玉を落ちていた木切れに当ててやると、バヂィッと先程と同じように、閃光と音を発して真っ二つになる木切れ。

練習に励んでいた他の面々も振り向いて、何事が起こったのか見てくる。

ディーグリーは、何度も俺と木切れを見て、次第に目を輝かせ始めた。

「やべーケータ様やべー!雷魔法かっけー!ぜってー物にする!」

やる気に火がついたらしい。

その後はそれぞれに練習に励んで、インテリヤクザな担任は、火魔法を纏わせた斧を振り回し、アールスハインは水魔法ではなく氷魔法に落ち着いて、テイルスミヤ長官は、杖から魔法を発射する事に成功し、同じくユーグラムも、指揮棒の先から火の玉を発射。

ディーグリーも雷魔法を纏わせるまでは行ったが、切れ味は向上しなかった。

以上で今日の練習は終了です。