軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

438 想定外+規格外=リナ→神龍?

「また美容液かよ」

今度は深いため息を吐いたフェリクス王。

穴を掘ったり、美容液を求めたり……竜のする事ではないと、言葉を失っている様子だった。

あまり人間に関わらない竜が、この世界に莉奈が来た途端にガッツリ関わっている。

それが、番を持った竜だけでなく、人嫌いな野竜までもがである。

ただでさえ番を持つ竜も、興味のない人間に自分から話しかける事はほとんどないし、近寄らせる事も嫌う。

なのにその気難しい竜が、莉奈だけには自ら関わりを持とうとするのだ。

物に釣られただけでは、理由が弱過ぎる。

美容液だけではない何か惹きつける魅力が、莉奈にはあるのだろう。

……ドスーーン。

フェリクス王達が何をどうしていいか考えている間にも、竜達は嬉々として魔物を置いては去っていた。

それも、俺が私が1番だと言わんばかりに誇らしげに。

「「「……」」」

フェリクス王達は、もう言葉が出なかった。

気難しい竜達が、莉奈の無茶苦茶な指令を楽しそうにこなしているのだ。

しかもいつもなら、フェリクス王と目が合えば固まり、いるだけで震え上がる竜達が、魔物を置いては去り魔物を置いては去りと繰り返している。

美容液に取り憑かれたのか、競争に夢中なのか、フェリクス王がいるのも関わらず視界にすら入らないらしい。

「なぁ、どうするんだよ、コレ」

エギエディルス皇子が唖然としていた。

莉奈とやり取りをしている間にも、魔物はドンドン増えていく。減る事のない異様な現状に、エギエディルス皇子は笑いも出ない。死屍累々とはこの事であった。

「リナ」

竜に持って来いと言ったのは莉奈である。

何か考えでもあるのかと、フェリクス王はチラッと莉奈を見た。

「え?」

「え、じゃねぇ。どうするつもりなんだよ」

「……え?」

「コレはどうするんだ」

「…………えぇっ??」

はて。どうするとは、どういう事だろうか?

ーーパシン。

目を丸くさせて惚けた様子の莉奈の頭に、フェリクス王の何度目か分からない平手が落ちて来た。

「"何も考えてませんでした"って 表情(かお) をしてんじゃねぇ」

ごもっとも過ぎて何も言い返せない莉奈。

その場の思い付きで"レア素材競争"なんて事を竜達にやらせたが、何が一番 稀少価値(レア) なのかも分からないのだ。

誰かに教えてもらえばいいかな〜? なんてノリだ。

獲ってきた魔物や素材の扱いなど、一切考えていなかった。ましてや、フェリクス王達にバレて怒られるかもなんて微塵も頭になかったのである。

「ヴァルタール皇国のために、何か貢献出来ればと考えた次第であります!!」

ーーゴン!

「いったぁぁぁーーっい!!」

再び敬礼をして、取って付けた様な言い訳をすれば、今度はゲンコツが頭に落ちた。

「空々しいにも程がある」

もはや、怒るより笑いすら漏れたフェリクス王だった。

コレのドコが、ヴァルタール皇国に貢献しているのか、言い訳も甚だしい。

もっともらしい嘘すら吐く事もしない莉奈は、いっそ清々しさすら感じる。

「ですが……かなり稀少価値のある魔物がいますし、貢献という意味ではあながち嘘ではありませんよ?」

フェリクス王が莉奈に甘い叱責をしている最中に、魔物を一通り見ていたのかシュゼル皇子は苦笑いしていた。

稀少価値のある魔物は、防具や装飾品だけでなく、薬にもなる。

人より遥かに長い年月を生きる竜が獲って来た魔物や素材は、竜が思う限りのモノばかりだけあって、そのほとんどが稀少なモノだった。

シュゼル皇子は初めから持つ自身の【鑑定】だけでなく、莉奈の【鑑定】や【検索】も取得していたので、以前よりプラスαな情報が視られて楽しかった。

莉奈の【鑑定】は、食に特化している部分が面白い。

ただ、そんなモノまで食べられるのかと分かると、気分は複雑ではあったけど。

「なぁなぁ、アレって"リヴァイアサン"だろ?」

エギエディルス皇子は、魔物の山に隠れた長くて大きな魚を見つけ、少し興奮した様子でフェリクス王を見た。

稀少な魔物なので、エギエディルス皇子も初めて見たのだろう。

莉奈もその言葉に、好奇心が疼いてエギエディルス皇子に近付いた。

リヴァイアサンといえば、海の魔物、最強のイメージが莉奈の中ではあった。

恐る恐る見れば、牙が異様に大きい猪みたいな魔物や顔が3つある奇妙な生き物の影に、エギエディルス皇子の言っているモノがあった。

もう少しだけ近付いて見ると、顔は竜に少し似ているが、胴体は蛇の様な生き物が横たわっていた。

色んな魔物が乗ったりしているので、全体像はよく見えないが、体長は軽く100mはありそうだった。

「コレがリヴァイアサン?」

ゲームや小説では見た事はあるが、鯨やイルカとは違い幻想の生き物のため、絵姿や描写は統一していない。

だから、リヴァイアサンと言われてもピンとこなかった。

莉奈に言わせれば、竜の頭を持ったものスゴく巨大な竜宮の使いに見える。エギエディルス皇子達がリヴァイアサンと言うから、コレがそうなのかなと思うだけだ。

【リヴァイアサン】

頭は竜、胴体は手足の生えた蛇の様な身体を持つ生き物で、海洋生物の頂点に立つ。

主に深海にいる事が多く、滅多に姿を現さない。

海の神とも呼ばれる神龍。

雄はリヴァイアタンとも呼ばれる。

ーーマジか。

神龍リヴァイアサン、 幻想(ファンタジー) の生き物が本当にいるよ。

莉奈はビクビクしながらもつい【鑑定】をかけて視て、頬が引き攣っていた。

あれ? これ以上、詳しく視ない方がいいのかな?

見たい好奇心と、その内容を知った衝撃を天秤にかけた時、秘匿案件だった時のリスクが高過ぎやしないだろうか?

これ以上は視てはダメですよね? とシュゼル皇子に確認する様に見てみれば、意味深な笑みを返された。

「とても美味しいみたいですよ?」と。

ーーぎゅるるるぅ〜っ。

なんでこのタイミングで鳴るのかな?

途端に、空気を読まない莉奈の腹が鳴った。

「リヴァイアサン見て腹なんて鳴かすの、世界中捜してもお前だけだと思う」

「後で、竜も減っていないか確認しておきましょう」

「……もうすでに、食べられたのではないのでしょうか」

エギエディルス皇子は呆れている横で、シュゼル皇子はほのほのと、イベールは冷めた目で見ていた。

「……くっ」

莉奈が恥ずかしそうにしている横で、フェリクス王が莉奈の顔をチラッと見た後、下を向いて肩を震わせていた。

絶対に笑っている。

予期せぬ莉奈の言動すべてが、可笑しくて仕方がないのだろう。

最悪だ。もう、いっそのこと盛大に笑われた方がいい。

お腹のバカーーッ!!

と嘆く莉奈だった。