軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

90話 一筋縄ではいかないようでした!

俺たちはボートでエルフの砦にある桟橋まで戻った。

すると、ミノタウロスの長ベルドスは川岸から、一気に俺たちのいる埠頭までジャンプする。

どんという音と共に、石材で組まれた桟橋が揺れる。

メルクが呟く。

「さすがヨシュアがつくった橋。壊れない」

「な、何度か揺らしたらさすがに崩れると思うけどな……さあ、入るか」

俺は表情を引き締め、城門へ進んだ。

エルフたちは……やはり。

門を潜ると、そこにはアルベルトをはじめ、多くのエルフたちが矢を番えていた。

その矢じりは例外なく、こちらに向けられている。

モニカとフレッタはそんな中、俺たちを庇うようにエルフたちを前に両手を広げていた。

「やめなさい! ヨシュア様たちは私たちを救ってくださったのですよ!」

「殿下、それとこれとでは話が違います。彼らは今、私たちの里を襲った悪党を、招き入れてしまった」

アルベルトは視線と矢をこちらに向けたまま、モニカに言い返した。

他の者たちも俺たちの一挙一動に瞳を動かす。

自分たちの故郷を焼き払い、仲間を殺した者の頭領が目の前にいるのだ。

当然の反応だ。

俺はさっそく、キュウビに関して伝えようとした。

しかし、ベルドスが俺の隣に歩を進める。

「貴様!?」

「待て、お前たちが争う必要はない。お前たちの仲間を殺したのは、オレたちミノタウロスなのだからな」

ベルドスはその場で腰を落とす。

「オレの首を落とせばいい。しかし、他の者はオレに付き従っただけ。どうか、見逃してくれ」

アルベルトはベルドスの態度に意表を突かれたようだ。

俺はアルベルトたちに、キュウビのこと、そしてベルドスたちが操られていたことを話す。

「……そういうことなんだ。原因は、俺たち人間と魔王の対立にある。彼らは亜人を利用している。どうか、分かってくれないか?」

「そんなことが……そういえば、先程の彼らの様子も」

モニカは先の戦いでミノタウロスたちが豹変したことを思い出したらしい。

少しして、他のエルフたちにこう訴える。

「……皆。私たちは戦争に巻き込まれた。彼らに罪はない……ここは矢を」

しかしアルベルトは悲痛な面持ちで首を振った。

「ならば……我らはどこに怒りを向ければ!? 皆、家族と仲間を殺されたのです! 故郷を焼き払われ

! 後ろで怯えて泣く子供たちの声が聞こえますか!?」

アルベルトの言う通り、エルフの子らはベルドスを見て震えていた。

とてもではないが、共存は難しいだろう。

一方のベルドスはただ頭を下げ、処遇を俺たちに委ねている。

ここは俺が仲介しなければ……

「皆の怒りは分かる。だが現実として、この地は人間と魔王軍の勢力図の境にある。これからも、魔王軍と人間は俺たちを襲い、利用するだろう」

だから、と俺は続ける。

「俺たちは自分たちの国を築く。誰にも利用されないように、襲われないように。手を取り合うんだ」

アルベルトはふっと笑う。

「とてもじゃないが、仇の相手と手を取り合うなどできない」

「分かっている。だが、俺たちとはどうだ?」

「……フェンデル同盟とやらか?」

「そうだ。俺たちは亜人の共同体。お前たちもミノタウロスも、俺たちを介し、共に人間と魔王軍に立ち向かうんだ」

しかしアルベルトはやはり首を縦に振らない。

そんな中、モニカが口を開く。

「皆、私たちはヨシュア様に助けられたようなもの。恩は返さねば。それに恐らく……これからも私たちは、ヨシュア様たちの力が必要になるでしょう」

モニカの声に、エルフの一人が声を上げる。

「この弓があります! これの恩を返すのは分かりますが、協力は!」

「私たちがいただいたのは、弓だけじゃありません。この住まいに食料。それに弓もいつかは壊れます。それに矢はどうするのです? 私たちに作れますか?」

「そ、それは……」

エルフの一人はモニカの指摘に黙り込む。

モニカは皆に訴え続ける。

「私たちには、ヨシュア様たちの力が必要です。私たちもヨシュア様たちに協力する……そうすれば、あのような悲劇はもう……」

モニカの目にも涙があふれていた。

その声に、アルベルトたちも涙を流す。

皆、亡くなった仲間のことを思っているのだろう。

突然、日常が壊されたのだ。

道具がなかろうと、平和に楽しく生きていたはずだ。それが一夜にして奪われた。

許せるわけがない。

魔王軍に故郷を焼き払われた俺にも、少しは気持ちは分かる。

やがてアルベルトは涙を拭うと、俺に言った。

「……殿下は我らの王家の正統な後継者だ。私は家臣に過ぎない。私は殿下の命に従う……」

他の者たちも、何かを断ち切るように力強く頷いた。

「皆ありがとう……だが、最初はやはりお互い気まずい部分もあるだろう。時間と距離が必要だ……ベルドス。お前たちミノタウロスは、南の開拓に手を貸してくれるか?」

俺の問いかけに、ベルドスはうんと頷く。

「我らの力が必要と言うなら……我らの祖先もニンゲンに閉じ込められた。それを阻止できるのなら、手を貸そう」

「決まりだな……あっ」

ベルドスは立ち上がると、改めてアルベルトたちの前で頭を下げた。

エルフたちは複雑な表情でそれを見る。

「申し訳なかった。我らのやったことは許されないだろう……しかし、少しでも償いをさせてほしい」

ベルドスたちも地下で静かに暮らしていたのだろう。人間への怒りはあっても。

彼らももともと、好戦的ではないのかもしれない。

他者の痛みが分かるのだから。

ベルドスの声に、モニカはゆっくりと手を差し出した。

「私たちの出会いは悲しいものになってしまった。ですが、これからは手を取り合い、共に理解を深めていきましょう……そしていずれは」

モニカは端で手を繋ぐフレッタとモーに視線を移す。

「ああ。いずれは、互いの子らが肩を並べて遊べる日を……」

ベルドスとモニカは祈るように握手を交わすのだった。