軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

208話 偽物でした!?

空から、配置に就いた天狗が俺たちに手を振る。

彼らの抱える麻袋には、粉が入っている。隠れているのがアンデッドの可能性も考えて、アンデッドを倒せるエントの葉を使った。

「アスハ、いけるな?」

「はい、いつでも」

アスハの声を聞いた俺は天狗たちに頷く。

すると、天狗たちは一斉に西に向かって飛んでいき、袋から粉を散布し始めた。

アスハは杖を森に向け、風魔法を放つ。

森の草木が一斉に揺れ、粉は風に吹かれ西へ飛ばされていく。

「──っ!? なんだ、これは!?」

すぐに森から声が上がってくる。

「やはり、潜んでいたか」

粉が付着し、慌てているのだろう。

俺は望遠鏡を使い、森の中の様子を確認する。

粉が付着し、森に潜む者たちの型が見えてくる。

「あの形は……大きなトカゲ? まさか……」

望遠鏡を下ろし、エクレシアに言う。

「彼らの四肢を拘束してくれ。おそらくやつらは」

「リザードマンか」

エクレシアも気が付いたのか、そう言ってすぐに森の植物を動かす。

やがて森の中から声が上がった。

「待て! 降参だ!」

「その声は……エクレシア、連れてきてくれ」

俺の声にエクレシアは植物を操り、一体のリザードマンを森から連れてくる。

「オルト……なぜ、ここに」

「交渉決裂の腹いせに、死兵を命じられただけだ。姿を隠す魔導具だけを与えられてな」

森から現れたオルトはそう答えた。

俺はエクレシアに視線を送り、オルトを解放させる。

「何か危険物を持っている可能性もある。部下はしばらくそのままにさせてもらうぞ……ところで、オルト。お前は魔王に交渉を持ちかけてくれたみたいだな」

「ああ、確かに伝えた……だが結果はお前たちも知っての通りだ」

「あくまで従属を命じるか」

「それをお前たちは断った。ゴブリンの王グリニアのフェンデル滅ぶべしという言葉に、魔王も他の魔物の首長たちも賛同した」

「しかし、その割には……」

オルトたちだけしかやってきていない。

リザードマンは数百名程度だ。

「他の魔物の話だと、毎回こうなのだと聞く。声だけは大きいが、結局人間の街を攻めきれない。今回も、結局戦線が停滞してしまっている。魔王直々にやってきて、今まで以上の戦力を投じているというのに」

「そうか……」

キュウビやヨモツの後方工作もその大攻勢の一環……だとしたら、やはり何故王国を攻めなかったのだろうか。

単に機を逸しただけ……

いや、魔王とも呼ばれる者が本当にそんな失態を犯すだろうか?

「オルト……正直に話してくれれば、お前たちを南の海から解放しよう」

「帰してくれるなら、何でも話す。俺たちはもう、戦いはこりごりだ」

オルトはこくりと頷いた。

「そうか……今、魔王軍の前線には、魔王領のほとんどの魔物が集まっているんだな?」

「そのはずだ。地域によっては働き手を取られて、飢えている部族もあるようだ」

オルトの言葉が本当なら、魔王軍の大攻勢はかつて類を見ないものだ。

そんな大攻勢でミスをする……やはり、にわかには信じがたい話だ。

ゴブリンの王グリニアが、ヨモツたちを知らなかったのも引っ掛かる。

魔王はグリニアの声に同調したのだ。思ったよりは魔王に一目置かれているのだろう。

そもそも、あの黒い鎧が言う”魔王”には、交渉の余地がありそうだった。俺たちにヨモツの助命を嘆願したのだ。

そいつが、フェンデルを攻めるという声に同調するのは、少し違和感がある。

……そういえば、あの黒い鎧は魔王に俺が頼んだ停戦協定のことは伝えてくれたのだろうか?

「オルト。魔王は、黒い鎧の報告になんて答えていた?」

「黒い鎧? ……なんだ、それは?」

「うん? グリニアのすぐ近くを警護していた黒い鎧だ」

「す、少なくとも俺は魔王と同じ陣幕にいるときは、そのような者は目にしたこともない。お前は、その黒い鎧に何の言伝を頼んだんだ?」

「停戦協定だ」

「そんな話は、議題にも上がってなかった。最初からずっとだ。だから、グリニアを寄こしたんだ……お前は一体、誰と話していたんだ?」

オルトの問いかけに、俺たちは顔を見合わせる。

魔王は、黒い鎧の話を聞いていない?

それとも、裏では報告を受けているのだろうか。

やはりただの敵情視察……いや、どうにもおかしい。

「オルト……お前の見ていた魔王は、本当に魔王なんだよな?」

「何を、馬鹿な……いや、そもそも俺もこの大攻勢以外は、年に一度魔王城でお会いしただけだ……いつも仮面と黒いフードをかぶっておられる……」

「本物かどうかは、分からないということだな」

オルトはコクリと頷く。

「……証明はできないな」

何のためかは分からないが、魔王領の戦力を全て前線に投入させるため自身の影武者を前線に向かわせた。一方で、キュウビとヨモツに人間の国々で破壊工作をさせる……

魔王はなにか、自領でやろうとしていることがあるのではないだろうか?

それは、キュウビやヨモツの願いをも叶える。だからこそ、二人は魔王に手を貸した。

ヨモツは妻であるミナを失った。キュウビもまた、大事な母を……二人の願いは明白だ。

つまり……魔王はやはり死者を復活させようとしているのか?

「……オルト。お前たちを南の海から解放するついでに、一つ頼んでもいいか」

「……なんだ?」

「魔王城に行き、本物の魔王がいないか調べてほしい。いれば、改めて交渉をしたいと伝えてくれ……場所は、白砂島がいいか」

「……分かった。捕虜として捕まり、フェンデルからの伝言を頼まれたと伝えよう。もちろん、その本物がいればの話だが……」

「ありがとう。船は俺が用意する」

そうして俺たちは、オルトたちを南の海から解放するのだった。