軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

172話 即位しました!?

「陛下、おめでとうございます!」

宮殿のバルコニーで即位を宣言したイーリスが玉座に戻ると、周囲の者たちは口を揃え即位を祝った。

トレア王は敗走したその日に降伏し、退位を内外に宣言した。

そのまま辺境に向かい、余生を過ごすようだ。

それから二日後の今日、イーリスは正式にトレアの王となった。

まだ王国が混乱を極めている中での即位。

祝宴などは省略し、イーリスは早速、方々へ指示を出している。

被害を受けた農村への税の免除や、行き場を失った民衆のための開拓村を設けるなど、やはりまず、この騒動からの復興を目指しているようだ。

玉座の横に置かれた膨大な命令書。

その中には、ベイロンたちグランク傭兵団への追放令の取り消しも含まれていた。また、トーリン伯の遺族には、ベイロンたちへ約束した報酬の支払いをするよう命じた。

イーリスは俺たちとの約束を守ってくれたのだ。

王の間の片隅でそれを見ていた俺は、隣にいるイリアに言う。

「これでもう、この国は大丈夫そうだな」

「はい! ヨシュア様のおかげで、家もたくさんできましたし」

この数日で、俺たちは王都とその周辺に尽力した。

おかげで住宅不足は解消し、城壁や上下水道なども修理できた。王都外では、エクレシアが作った畑からすでに作物が芽吹いている。復興は一段落ついたと言っていい。

それでもまだまだ問題は山積みだが、俺たちもずっと村を空けているわけにもいかない。

「俺たちは明日にでも帰るとしようか。イーリスに別れの挨拶をしてくるよ」

俺はイーリスが小休止を挟むのを見て、玉座の前に跪く。

「陛下」

「ヨシュア……」

イーリスは何か言いたげな顔をするが、ぐっとこらえている。

こんな堅苦しい挨拶は、イーリスも好きではない。

しかし彼女はもう王だ。

ここでは、王らしく振る舞わなければいけない。

「……今回のあなた方の働き、トレアは決して忘れません。そこで、我が国は正式にフェンデル同盟の存在を認め、その領地を尊重することを宣言します」

これを聞いた宮殿がどよめく様子はない。

すでに調整済みといった感じだ。俺たちの王国への貢献が知れ渡っているのも大きいだろう。

「また、両国間で不戦の条約を結び、交易を開始したい。そして両国の交易は当面の間、ヨシュア……あなたに一任したいと思います」

イーリスは、侍従にスクロールと印象が刻まれた指輪を手渡し、俺に持ってこさせる。

スクロールを開くと、そこには交易に関しての取り決めがあった。

まず、フェンデル同盟は王国の都市や交易所ならどこでも取引ができる。

一方で王国商人は、フェンデル同盟が許可を出した場所でのみ交易できる。

指輪はその権利を証明する印を押印するためのものだ。

イーリスが相手とはいえ、大事な条約だ。

隅々まで目を通したが、俺たちに非常に有利な取り決めだった。

「ですが、陛下。いいのですか?」

「悪いけど、私は忙しいの。あと、これだけの命令書を渡さなければいけないのよ。不満があるなら、捨てて結構」

適当と言いたいわけではない。

王が替わり、多くの政令が変わる今なら、誰も気に留めないということか。

「ありがとうございます、陛下。では、こちらからも」

俺は魔法工房から、木箱を取り出す。

その蓋を開くと、そこには液体の入った瓶がずらりと並べられていた。

これはエントの葉の粉末をベースに、色々な薬草を調合したポーションだ。

「それは?」

「これは、我が同盟のポーションです。どんな病や傷にも効くでしょう」

「……ありがたくいただくわ」

イーリスは木箱に手紙が一緒に入っているのに気が付いたようだ。

手紙にはこの王都では発見できなかったキュウビについて記述している。

以前、神官がおかしくなったのはそのキュウビの魔法のせいではとも。

このポーションは、確かにどんな病や傷も癒せるだろう。

しかし、キュウビの魔法にかかった者の正気を取り戻すために使ってほしい。

特別な贈り物と理解したイーリスは、ポーションを宝物庫ではなく自室へ運ばせた。

「それでは、陛下」

「ええ、ヨシュア。また、会いましょう……必ず」

俺はコクリと頷くと、イリアと共に宮殿を後にした。