軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

160話 見覚えのある亜人でした!?

商業区の広場のほうには人だかりができていた。少しするとその広場の方へ、人が波のように向かっていく。

「ずいぶんと騒がしいな」

「見に行ってみるか?」

エクレシアの声に俺は首を縦に振った。

「ワシも興味があるのじゃ!」

「あんなに人間がいっぱい……迷子にならないようにしないと」

ユミルもエナがそう言うと、エクレシアが二人の手を引いて自分に寄せる。

「二人とも私から離れるなよ」

あまりに自然で慣れた動作に、俺はいつもエクレシアが留守番を務めていたことを思い出した。

「うん? どうした、ヨシュア?」

「いや……俺も迷子にならないよう、ちゃんと見ておく」

「ああ、まだ二人とも小さいからな」

それから俺たちは商業区の広場へ、人混みの流れに乗りながら向かった。

「しかし、何を皆求めて……うん、あれは?」

俺は、広場の中央で少し高くなっている場所に気が付く。

そこではオレンジ色の耳としっぽを生やした亜人が、声を張り上げていた。

「さあさあ、寄った寄った! 穀物はもちろん、新鮮な肉、魚、卵、酒まである!! 早くしないと、品切れになっちゃうよ! 売り切れごめんだ!」

それを見たエクレシアが言う。

「あれは虎人……」

「本当じゃ! 以前、村でリーセという者と遊んだのを思い出すのう!」

エナは知らないせいか、ユミルから説明を聞いてなるほどと答えた。

こんな場所で虎人がいるとは……いや、虎人の商人がいるとは思えない。彼らは虎人で構成されたグランク傭兵団だろう。

事実、虎人たちは武装しており、腰には曲刀が提げてあった。グランク傭兵団の長ベイロンやその娘ネイアが持っていた物と一緒だ。

彼らには以前、オークのビッシュ率いる魔王軍との戦いに手を貸してくれた過去がある。

また、彼らが育ててくれたグランク麦は俺たちにたくさんの麦をもたらしてくれた。美味しいパンが食べられるようになったのだ。

俺の魔法工房には、いくらか収穫したグランク麦と、それを粉にして保存したものがある。

「……ちょっと、会いに行こう。ベイロンがいるかもしれない。収穫した麦を見せたら、喜ぶかも」

「ああ。フェンデルの土でしっかり育ったと見てもらおう」

俺はエクレシアの声に頷き、虎人の露店に向かおうとする。

しかし、人が多すぎる。皆、新鮮な食料とあって欲しくてたまらないようだ。

またそれだけでなく価格が他よりも安いのがこの人気の原因らしい。破格だとかいう街の人の声が聞こえる。

「──完売、完売! 売り切れだ! また明日も来るから、買ってくれよな!」

その声に、集まっている人々は落胆したような顔で広場を去っていく。

虎人たちも颯爽と撤収してしまった。

「追いつかない……」

今度は人の流れに逆らうような形になるので、到底追いつかない。

エクレシアやユミル、エナもいる。ここは無理しないでおこう。

「……また明日来るなら、明日会いに行こう。この広場で待っていればいいだろう」

「そうだな。急ぐ必要はない」

エクレシアはそう言ってくれた。

だが、近くからはこんな声が響いてきた。

「あいつら、グランク傭兵団だろ?」

「ああ、人間と魔物の間を行ったり来たりしてるやつ……コウモリ野郎め」

「あそこで売っていたのも、そこらの放棄された村から勝手に奪っていたんだろうな」

街の人々のグランク傭兵団に対する心象は非常に悪かった。

無理もない。彼らの裏切りで命を落とした人間もいる。

俺がシュバルツ騎士団にいる頃から、彼らの評判は最悪だった。また、俺たちとも戦ったあの奴隷商コビスのように、亜人を奴隷とする者には容赦なく報復していた。たしかに悪人だが、その残虐な殺し方は人間から忌み嫌われていた。

エクレシアが言う。

「……しかし、どうしてこんな場所に来たのだろうな?」

「近くで仕事をしていたとかかな」

魔王軍を裏切ったのだ。しばらくは人間のもとで働くしかない。

そんな中、エナが人混みの中に指をさした。

「あの子……なんだか道に迷ってませんか?」

「ふむ……おお、本当じゃ。ワシとエナぐらいの大きさじゃのう」

俺たちには見えないが、ユミルとエナは小さいから見えるらしい。

「人間の子供か?」

「いや、虎人じゃ……いや、あれはリーセじゃ!」

「ベイロンの娘の? なんでここに」

しかし、ユミルは顔を強張らせる。

「どうやら誰かとはぐれたようじゃな……ぬ? なんだか怪しそうな者が手を引いていくのう……あの、鶏の頭のような髪型のやつじゃ!」

ユミルの言葉に、俺は背伸びして人混みの頭を探る。

「虎人じゃない? ……もしかしたら誘拐かもしれない。ついていこう」

俺の声に、エクレシアたちは頷く。

それから人混みをかき分けて、俺たちはリーセを追うのだった。