軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

136話 釣り船を作りました!

「これは……とても便利ですね」

イリアは手鏡を覗き込んでそう呟いた。

「家具の鏡を作っていたら、天狗の女の子が持ち運べたらいいのにって言っててね。作ってみたんだ」

「なるほど。これならどこでも髪を整えられます」

そう言ってイリアは、手鏡を持ちながら自分の顔を確認する。

なんというか、年頃の女の子という感じがして可愛らしい。

「よ、ヨシュア様……そんなに見られると」

イリアは顔を赤くする。

「ご、ごめん。ちゃんと映っているかなと思ってさ」

思わず見とれてしまったようだ

俺はこの日、亜人たちの手鏡を作っていた。

身だしなみを整えるためだけでなく、太陽光を反射させて信号を送ることもできる。

……まあ、正直必要かどうかは個人による。

しかし、それだけもう必要な物が少なくなってきているのだ。

この頃は、思いついたものや、欲しいと言われたものを作る日々が続いていた。

「よし、手鏡はこんなもので十分だな。百個ほどあるし足りなくてもすぐ作れる……しっかし、これでまた作るものがなくなっちゃったな」

「では、ヨシュア様がご自分で欲しいものを作ってはいかがでしょうか? 私もお手伝いします!」

「そうだな……でも、必要な物は揃っているし、欲しい物か、欲しい物……」

しばらく考え込んでみる。

だが、ついに考えつかなかった。

「俺……よく考えたら、あんまり趣味とかないんだな……」

思わず肩を落としてしまう。

ずっと仕事一筋だったせいだろう。本当に、やりたいことや欲しいものが見つからない。

それでも、街にいれば本を読んだり、服を見てデザインを勉強したりしていたが。

「ご、ごめんなさい、ヨシュア様。でしたらヨシュア様、少しくつろげるような場所でも作ってみませんか?」

「くつろげるような場所?」

「はい。ヨシュア様を見ていて気が付いたのですが、船を動かしたり釣りをしているヨシュア様はなんだかいきいきしていて」

騎士団で働いていたころは、あまり海や川に行くことがなかった。それも影響しているのだろう。

「そう、かもしれないな……でも、釣りなら結構暇な時にやっているし」

「では、寝泊まりできるような船を造ってはいかがでしょうか?」

「なるほど。王や貴族が持つような、遊行船か。川や海で釣りをして、疲れたら船の中で寝る……おお、結構面白そう! いい案だ!」

「ふふ、気に入っていただけたようでよかったです!」

「ああ。早速造ってみよう」

こうして俺は、趣味のための船を造ることにした。

とはいえ、何かあれば輸送船としても使えるようにしたい。

海にでることも考え、少し大きめにして頑丈な造りにしよう。

まあ魔王軍とのこともあるし、何かあったときのためにあまり遠くにはいけない。

しばらくは海で釣りなんてできないだろう。

でも、川の上で寝泊まりするだけでも、いつもと違った感じで面白そうだ。

俺は早速、村の東の桟橋へと向かう。

「どれぐらいの大きさにするか……」

「ヨシュア様が使うのですから、小さくてもいいのでは?」

「でも、一応皆が泊ることも考えたいし……そしたら、幅が四ベートルはあったほうがいいかな、長さは、その三倍は欲しい」

形としては、普通の帆船だ。だが、船尾に家みたいなものを付ける。船乗りが船尾楼と呼ぶものだ。

「帆柱は二本にしておこう。よし、こんなものか」

俺は早速魔法工房で、船を造り始めた。

船体は主にアイアンオークと紫鉄を用いる。

アイアンオークは硬く軽いし、紫鉄は錆びない。

この二つが組み合わされば、頑丈で速い船になるだろう。

船尾楼には窓ガラスを使って、明るいように……よし。

できあがった帆船を、俺は川へと浮かび上がらせた。

イリアが声を上げる。

「おお! 前のよりも大きいですね!」

「ああ。せっかくだから、皆で食べたり飲んだりできるようにしてみた」

今までこの村で作った中でも、一番大きな帆船だ。

本音を言うと、これからももっと大きな船を造ってみたい。

ちゃんと船が浮かぶか試しつつ、徐々に大きくしていくつもりだ。

俺は造船所に勤めていたわけじゃないから、設計には不安が残る。安全第一だ。

だが今回は、ダンジョンで手に入れた飛行艇の設計図の船体を参考にしている。それだけの設計図だから、頑丈な構造なのだろうと考えた。

船体は細長い流線形で、どちらかというとちょっと頼りない形かもしれない。その分、見た目は美しく見える。

「よし。まずは乗って、沈まないか確認してみるか」

俺は桟橋からその船へ飛び乗ってみる。

さすがに俺一人ではたいして揺れない。

イリアもすぐに後を追って乗り込んでくるが、特に問題はなかった。

「飛び跳ねても大丈夫。少し待って、浸水しなければ大丈夫だな」

船底と人の立つ甲板の間には、スペースがある。

人間はとても歩けないが、ドワーフやスライムなら、この中でも歩けるだろう。

一番下には重りとなる石を詰めているが、開いた部分は荷物を入れたりもできる。ここに水が入ってこなければ、とりあえずは大丈夫だ。

イリアが言う。

「では、待つついでに食事でもしましょうか」

「そうだな。せっかくだから、魚を釣ってそれを食べようか」

それから俺はしばらく、作った船の上で釣りをするのだった。