軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12話 櫓を作りました!

「ひ、姫が、敵の首級を上げた」

驚いていたのは、メッテたち鬼人もそうだった。

しかしメッテがすかさず、叫ぶ。

「敵将を討ったぞ! 追撃だ!!」

「メッテ、待つんだ! 他に敵が潜んでいるかもしれない、第二波に備えよう!」

「そ、そうか! 皆、今のはなしだ!」

鬼人たちはメッテの言う通り、その場で構える。

そんな中、俺はイリアのもとに駆け寄った。

「イリア、無理をするなと言ったのに……イリア?」

俺が声を掛けると、イリアはぴくっと体を震わせ、俺に振り返った。

「あ、ヨシュア様……私、いつの間にか」

イリアは何がなんだか分からない様子だった。

体が勝手に動き出したとでも言うのだろうか。

「……まあ、その刀がなかったら、こいつの黒魔鉄の装甲は抜けなかっただろう。君の角だから、斬れたんだ」

「あ、ありがとうございます、本当にヨシュア様のおかげです!」

俺もたかが奴隷狩りと見くびっていた。

まさか、騎士……それも俺が所属していたシュバルツ騎士団が出てくるなんて夢にも思わなかった。

ロイグの奴、本当に奴隷狩りに騎士を送っているのか?

もっと防備を万全にする必要があるな……

「……とにかく、俺はこいつらの装備を回収して、遺体も焼く。イリアは他の鬼人たちと、引き続き周囲を警戒してくれるか? あと、交代で睡眠も取らせるんだ」

「は、はい!」

イリアはそう言って、メッテたちの元に走った。

俺はその後、ガイアスと奴隷狩りの装備を回収し、彼らの遺体を焼いた。

ガイアスの顔を最後に見た時、言いようもない気持ちが俺を襲った。

素行は悪いが仲間として共に戦場に立ったこともあり、その身が無事であるように武具を作ってやったんだ。

それが、こんな悪事に手を染めるなんて──

その後、俺は不眠不休で、クロスボウとボルトを生産するのだった。

結局その後は特に襲撃もなく、朝を迎える。

ガイアスほどの人物をつけるわけだから、あれが奴隷狩りの本隊のようなものだったのだろう。

それでも、拠点のようなものはありそうだが。

「ヨシュア様、お疲れ様です」

イリアは俺に、水の入った木の杯を差し出す。

「イリア、ありがとう。いただくよ」

「ヨシュア様、そろそろ寝られてはいかがですか? 私もメッテもお休みをいただきましたし。あとは任せていただいても」

「そうするか。クロスボウもだいぶ作れたからな」

全部でクロスボウ五十丁を作った。

鉄の槍も三十本ほど。

深夜と同規模の襲撃にも、十分対応できるだろう。

メッテは今、鬼人たちにそれ等の武器の訓練をさせている。

鬼人たちの見張りには交代で寝させているし、俺が寝ても大丈夫なはずだ。

「ただ、もう一つやっておきたいな。イリア、ここら辺に頑丈な木はあるか」

「そうですね……この周辺の森の木は、どれも石斧では切り倒せないほど堅いですよ」

だから、鬼人たちの村には木造建築がないのだろう。

ただ、それだけ頑丈な木材なら、これから造るものに好都合だ。

「木こり用の斧も用意するとしても、その前に造っておくほうが安心だな。イリア、森に行ってくる」

「はい! 私がご案内します」

「頼む」

イリアは村から数分の森に入ると、一本の大木を指さして言う。

「この木が特に堅いかと。火でもなかなか燃えません」

「アイアンオークか。なるほど、上質な木材になるな。だが大きすぎる……」

この大きさとなると、吸収しきれるかどうか。

でも、ここらへんのアイアンオークはこの大きさしかないようだ。

「もしよければ……私が斬りましょうか!」

イリアは笑顔で刀を見せる。

……なんだか、ちょっと怖い。鞘もあとでつくってあげよう。

「いや、それ木を伐る道具じゃないから……伐れるとは思うけども」

まあ駄目だったら、斧を作るか、他の木を使えばいい。

俺は木に手を向けた。

「──吸収」

そう唱えると、木は一瞬で消える。

イリアが声を上げた。

「なっ!? ヨシュア様は、こんな大きさの木まで吸収できるのですか!?」

「あ、ああ……前は、人の背丈の木で精一杯だったんだが」

自分でも少し驚きだ。

俺の闇魔法が上達し、魔法工房の空間が広がったのかもしれない。

「ヨシュア様は本当にとんでもない力をお持ちなのですね……」

「いやあ、上には上がいると思うよ」

俺は騎士団という狭い世界で、この十年過ごしてきた。

世界にはもっとすごい生産魔法師がいるはずだ。

「とりあえずこの一本で十分だな。村に帰ろう」

俺はイリアと共に村に帰ると、ちょうど村の真ん中あたりの小高い場所へ向かう。

「よし、ここなら見晴らしが良いはずだ」

「ここで何をなさるので?」

「見張り櫓を作る。襲撃や異変をすぐに察知できるようにね」

「見張り、櫓……ですか」

「とりあえず作ってみるよ。ビルド──タワー」

ビルドはクラフトと比べ、大型のものをレシピ化したものだ。

見張り櫓はそこまで高くないものも、何回か戦場で造ったことがある。

今回は結構大きな木だから、建物四階分の高さには組めるんじゃないかな。

すると、俺の目の前に巨大な木の構造物ができあがった。

当然のごとく、鬼人たちは「なんだあれ!?」と声を上げる。

「よ、ヨシュア様は、建物も造れるのですか……」

「こういう簡単なものならね。さ、はしごを上がってみよう」

俺はそう言って、はしごを上っていった。

イリアもその後を追い、上がってくる。

「すごい! こんな高い場所から村が見えるなんて!」

櫓を上るなり、イリアは周囲を見渡し、声を上げた。

西と北には森が、東にはこの前ヘルアリゲーターを狩った河原、南には河に沿って広がる平原がある。

「ここからなら、襲撃が把握しやすい。夜は周辺に松明を置いておけば、もっと安全だ」

「森の中でなければ、釣りや狩りをしている者の異変にも気が付けますね!」

「ああ、そのための見張り櫓だ。ここに交代で見張りを立ててくれるか?」

「かしこまりました。目と耳が良い者がいますので、彼らを連れてきます」

「頼む……それと鉄の斧を作っておくから、もしよかったら木を伐るのに使ってくれ」

欲をいえば、丸太の柵かなんかで村を覆いたいよな。

石材で城壁を建てるのもいい。

だが、もう眠気でいっぱいだ。明日やるとしよう。

「ありがとうございます! ここから見える範囲で、木を伐らせておきますね」

「それが安全だろう……ふぁあ。とにかく、これでゆっくり寝られそうだ」

「本当に、お疲れ様です。お世話のほうは……また、今度にさせていただきますね」

「いや、本当にそれは大丈夫だから……それじゃあ、俺は行くよ」

「はい、おやすみなさいませ!」

こうして俺は、フェンデル村で初めての睡眠を取る。

ぐっすりとは眠れた。

しかし起きたのは、北から何かが来るぞという叫びのせいだった。

そして何故か隣では、イリアとメッテが俺と一緒に目を覚ますのだった。