軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第91話】ゼッタの大戦⑥ 演出

僕が突然4日待てば雪が降って敵が退くと断言したものだから、室内にはなんだか微妙な空気が漂った。

こちらを見ている人々の表情は様々だけど、多くは「何を言っているんだ、こいつは?」と言う顔をしている。

「ロアちゃん、4日の根拠は?」

良かった。ホックさんが理由を聞いてくれた。最悪、鼻であしらわれて終わりかと思った。

根拠は2つある。ただ、ここでは正直に話すことはできない。

一つは僕の知る未来だ。ゴルベルの猛攻に押し込まれていた第四騎士団と第10騎士団は、第二騎士団が強行軍で到着したことで息を吹き返す。これが開戦から7日後のことだ。その時点で既に戦場には雪がチラついていたと記録にある。

そして第二騎士団が到着した翌日には吹雪になり、その翌日、ゴルベルは兵を引いたのである。

二つ目は敵の軍師、サクリは天候を読むことができるということだ。その点に関しては、僕はサクリという軍師を信用している。ハクシャで痛い目を見ているから。

ならば積雪は7日後かといえば、それは違うはずだ。なぜなら、僕の知る未来とは状況が違う。

僕らはエレン、ハクシャとサクリの狙いを潰した上での、ゴルベルは1万を上乗せしての総力戦。この状況ではゴルベルはもっと短期での決戦を望むはず。サクリが7日間もダラダラと戦うとは思えない。

サクリを信用して考えるなら、限界は3日か4日だと思う。その間に砦を奪えなければ、退く。妥当なところだろう。なら、雪が降るのはその辺りだ。

つまり僕の根拠は未来の記憶と、存在もあやふやな敵の軍師への信頼感となる。こんなことを話しても、僕なら信用しない。

だから今僕がやるべきことは、それっぽい話をでっちあげることだ。

「、、、、ご存じの方がどれだけいるか分かりませんが、僕は元々王都配属の文官でした。王都には、各地の気象記録があるのは知っていますか?」

誰からも知っていると言う声は上がらない。それはそうだろう。僕も見たことない。農地ならともかく、こんな砦しかない場所の気象記録などおそらく存在しない。

「、、、僕はこの辺りの気象記録を何度か見たことがあります。今回、この砦を後詰めするにあたっても、確認してきました。すると、面白いことがわかりました」

「何かしら?」

「不思議と特定の日に積雪になることが多いのです。それが、3〜4日後。それは第四騎士団の皆さんの方がご存じではないですか?」

こう言う聞き方をすれば、数人は「そうかもしれない」と思う人間が出てくる。その中から1人か2人「そういえば、、、、」と言い始める者がいるのものだ。誰かが一言でも賛同すれば良い。どうせ、毎年雪が降った日を覚えている人間などそうはいないのだ。

案の定「確かに」と口にする部隊長が現れた。そうなると自然に「雪が降るかもしれない」と言う空気が漂い始める。ここが勝負どころだ。

「もちろん、必ずとは言いません。ですが、今年だけ降らない理由はどこにもない」

毎年降っているものが今年だけ降らない訳がない。姑息な言い方だけど、一度賛同した聞く側からすれば、今年も降るのが当然で、降らない方が異質と思えてくる。自分で言っておいてなんだけど、詭弁もいいところだ。

「4日か、、、、それならば守り切れるか、、、」一人の部隊長が呟いた瞬間、この場における僕の策は完了したのである。

多分だけど、ホックさんやボルドラス様など、一部の将は僕の言葉が戯言だと気づいているはずだ、だけど、僕の言葉に乗った。

圧倒的な兵力差で援軍もない。客観的に見れば絶望的な状況において、兵士の士気というものは何物にも変え難い。戯言でも兵士が希望を見出せるのなら儲けもののはず。

「3、4日もあれば、第10騎士団が援軍にくるかもしれないわね。何せ、あのレイズ=シュタインですもの」ホックさんが話を総括するように言うと、場の雰囲気は完全に僕の言葉を信じる感じになったのである。

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「そうと決まればルファちゃんの出番ね」ホックさんが僕ら全員を見渡してから、その視線を隅でおとなしくしていたルファで止める。

「私?」

「ええ。こう言うのは運命の女神様からの神託とした方が、言われた兵士の気の持ちようが違うもの。ロアちゃんの手柄を奪う形になるけれど、良いかしら?」

「もちろんです」

「ありがと。じゃあルファちゃんの言葉がより神託っぽくなるように、ルファちゃんを飾り立てないとね」と言うホックさんの目が光った。

「私たちも!」

「手伝う!」

先ほどまで静かだったユイメイの双子が俄然やる気を出して立ち上がる。

「え? え?」後ずさるルファだったけれど、そこに逃げ道はない。ホックさんと双子に担ぎ上げられ、じたばたするももはや手遅れ。

「それじゃあ、アタシたちはルファちゃんの準備があるから、兵士の配備の話し合いはよろしくね」

それだけ言い残して部屋を出ようとしたホックさんは、ふと足を止めて「そうだ、ロアちゃん。今回の戦い、リュゼルちゃんかフレインちゃんの部隊、どちらかを私に貸して」と言うと、今度こそ部屋を出ていった。

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再び中央棟の前に集められた兵士たちは、皆怪訝な表情で指揮官の発言を待つ。

一度話が終わってから再度集められれば、当然何があったのかと思うだろう。

ボルドラス様からキツァルの砦に攻め寄せるゴルベルが2万であること、そしてしばらくは援軍が見込めないことが伝えられると、少なからず動揺が走り、ざわめきが起こる。

それでもボルドラス様が再度口を開くと、場は静まり返る。

「厳しい戦いではあるが、我々は幸運だ! ここには戦巫女のルファ様がおられる!!」

戦巫女がいたからなんだ? と、再びざわめきが起こる。

「このルファ様は、天を操ることができる!」

再度静かになるも、兵士たちの表情には不信感が見えた。

「良いか! この方はその才を見込まれ、第三騎士団長ザックハート=ローデル様の養女として迎え入れられた!」

兵士達に小さな変化。驚きが広がる。

「そして第10騎士団のレイズ=シュタイン様たっての願いで、第10騎士団の戦巫女になられたのだ!」

今度は先ほどよりも大きな変化。多くの兵士が半信半疑の表情となる。

ザックハート様もレイズ様も、実情は全く違うけれど、この際だ、使えるものはなんでも利用させてもらう。

「そのルファ様が先ほどワルドワート様より神託を授かった! 心して聞くが良い!」

ボルドラス様が下がると、入れ替わってルファが前に出る。その姿は白い絹のような衣装を身に纏い、神々しさを感じさせるものだ。

尤も、まとっているのはカーテンだかシーツだか、とにかく白っぽい布を巫女に見えるように無理くり巻きつけただけ。

それでも遠目にはどうにかこうにかそれっぽい感じになっており、ホックさんとユイメイは満足げだ。

そんな急造の神々しさでも、ザックハート様とレイズ様のお陰で兵士たちはルファの挙動に注目する。

「みなさん。私はワルドワート様よりお言葉を授かりました」

ルファの声に、皆静かに耳を傾ける。

「4日後、雪が降ります。積もるほどの。そして、そこまで耐え切れば私たちへ勝ちをくださる、そのようにおっしゃられました。厳しい戦いにはなります。ですが、どうか希望を見失わずに! 勝利を!!」

ルファの言葉は一拍おいて。

「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

地面が揺れるほどの歓声と共に、兵たちに受け入れられたのだった。