軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第82話】王の子息③  旗

ゼウラシア王の長男ゼランドは、 弟(ウラル) に盤上の戦術戦で勝てたことがないらしい。何度も負けることで、だんだんと自信を失っていったゼランド。

ウラルの取り巻きも、遠回しにウラルの方が次期王にふさわしいのではないかと言い始め、ゼランドの取り巻きもウラル寄りの発言をし始めたため、ゼランドはすっかり参ってしまった。

対するウラルは、ご覧の通りの増長ぶりである。

しかし、このくらいの世代の少年同士で、一回も勝てないと言うのは何かおかしい気がするな。

何人かは同じような思いを抱いたようで、見ればウィックハルトをはじめ、リュゼルやフレインも少し腑に落ちない顔をしている。

まあいいや。その辺りは僕が首を突っ込む話ではない。

「しかし、それではウラル王子は指揮官の才能があるのかもしれんな」と、一応懸念を口にするリュゼル。

けれど、そんな気はしないんだよなぁ。

「ウラル王子の才覚はともかく、相手はあのグランツ様とラピリア様だ。仮に指揮官が無能であっても、簡単に勝てる相手ではないぞ?」とフレインが言う。

「ロア殿、どのような策をお考えで?」ウィックハルトが僕を見たけれど、実はもう決めているのだ。

「相手がレイズ様でないなら、そんなに難しい話じゃないと思うんだよね、、、」

僕が策を説明すると、一番驚いたのはゼランド王子だ。「そんな簡単なことで、、、勝てるのですか?」と目を丸くする。

「まぁ、勝てると思いますよ。一応失敗した場合の方法も考えておきますが」

「確かに単純ではあるが、成功すれば効果は絶大だな」フレインが賛意を示し、他の面々も頷いてくれたので、これで決定。

そういえば、レイズ様がゼランド王子にもいい経験になると言っていたな。それなら折角だから、、、、

僕がゼランドにとある役割をお願いすると、ゼランド王子はいよいよ大きく目を見開いて、それから視線を彷徨わせて、最後にルファの笑顔に後押しされるように、「やります」と言った。

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「遅い! 臆したのか!」

演習場は東の高台に陣取ったウラルは不機嫌そうに声を荒らげる。

約束の時間はとうに過ぎているのに、ロア隊がやってこないのだ。

「おい! どうなっている!?」と喚いてもレイズは黙したまま。グランツもラピリアも黙ってウラルを見つめるだけだ。

「ちょっとお前が調べてこい!」ウラルはグランツでもラピリアでもなく、取り巻きの一人に指示を出す。取り巻きが慌てて陣幕を出ようとしたところで、騎馬隊の足音が聞こえた。

その音にウラルが陣幕を飛び出ると、ロア隊がウラルの本陣を迂回するように西の陣地へと走ってゆくのが見える。

「ウラル様。これは好機です」取り巻きが囁く。

「攻めろと言うのか? しかし、向こうは着陣もしておらんぞ?」

「しかし、今回、着陣を待つという取り決めはございません。ウラル様が仰ったではありませんか? 戦場の如く決まりなどないと。まして遅れてきたあの者らに文句を言う筋合いはないかと」

「、、、、確かにそうだな。よし! あやつらの準備が調わぬ内に蹂躙する! グランツ、ラピリアに出撃するよう命じよ!」

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ウラル王子が出撃を命じた少しあと、ウィックハルトが東の陣から出撃する部隊を眺めながら「予想通りですね」と言った。

「じゃあ、ディック、合図を」

「あいよぉ!」

僕の指示に従って、ディックが馬上からリュゼル隊の旗を左右に大きく2度振る。それを3回繰り返した。

「しかし、ロア様。旗印は決めないのですか?」ディックが振る旗を見ながら言うのは、監視員役のネルフィアだ。

「、、、やっぱりいるかなぁ」

「必要でしょう。誉れ高い第10騎士団の中隊ですよ?」

僕も薄々必要かなと思ってはいたけれど、なんだか気恥ずかしい気もして保留にしておいた案件だ。

「でも僕はフレインみたいに家の印があるわけではないし」

「それはリュゼル様とて同じでしょう? リュゼル様?」

「ああ。俺の場合は騎馬隊と決まっていたからな。最初から蹄鉄と稲妻と決めていた。ロアも好きなものにすれば良いのだ」

「うーん。ちょっと考えてみるよ」

「できればキツァルの砦に出立前には決めて欲しいものだな」

「それって明後日くらいまでってこと? 時間がなさ過ぎない?」

「いや、俺もネルフィアに言われて思い直したのだが、やはり隊旗がないと言うのは、少し格好がつかない気がしてきた」

「けどさ、思い付いたって出発までに間に合わなくない?」

「あら、それならお任せください。今日中に決めていただければ、王宮にいる縫師を集めて間に合わせますよ」ってネルフィアが言うけれど、それって僕が考える時間が短くなってないですか?

「どうせこの後、暇でしょう? もうこの茶番も終わりそうですし」

「いや、暇ではないよ? 出陣前だからね?」

ネルフィアの言葉に一応否定はするけれど。確かに時間に余裕はありそうだ。

なにせ、僕の視線の先では、すでにこの戦いの決着がつきつつあったのである。