軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第76話】災難の日⑥ おじいちゃんと娘

ラピリア様の話をまとめると、ルファは実家から見放され、養子となるはずだったリフレアの神官はルファを生贄にするために引き取った。

継母がいる以上、実家に帰ることは叶わず。リフレアに行くことは即ち、死を受け入れると言うことだ。それも、いかれた人間のくだらない思想のために。

また、負けられない理由ができた。

ルデクが滅べばルファがどうなるか分からない。そんなことは僕が認めない。絶対に、だ。

「、、、ルファよ。わしの養女にならんか?」

不意に、ザックハート様が口にする。

「え? でも、、、、」

ルファは少し目を見開いて、それから困ったように視線を彷徨わせる。

「突然こんな話をされてルファが困惑するのは分かる。だがな、実は今思いつきで決めたわけではない」

「どう言うことです?」ラピリア様が間に入ると、ザックハート様はよくぞ聞いてくれたとばかり胸を張る。

「ラピリアは知っての通り、我がローデル家は既に息子に家督を譲り、その息子も良い年だ。孫もそろそろ成人近く、家名を保つのになんの問題もない」

「はい」

「故に家督騒動にはならん。そして、ルファに寄る辺がないと言うことは、前回薄々勘づいていた。ワシはこの娘が気に入ったのでな、うちで良ければ、ルファの帰る場所にしてやりたかったのだ。すでに息子には養子をとる打診はしている。息子は好きにしろと言うておる。故にルファに、ゲードランドへ遊びに来るように手紙を出したのだ」

「では、ザックハート様は最初からそのつもりで?」

「無論、強要をするつもりはないのでな。今回、ルファに話をするつもりであった。しかし今の話を聞いて、多少強引でも我が家に迎え入れたほうが良いような気がしてきたわ。ローデル家の娘となれば、流石に今回のような阿呆が湧く可能性が低くなるであろう?」

ザックハート様の提案は、僕から見ても現在考えられる最高の選択肢に思える。本人が言う通り、ローデル家の子女となれば扱いは大きく変わる。この国を長く支えたザックハート様の娘、これ以上の抑止力はそうそうない。

けど、、、、

無意識なのか、ルファはさっきから僕の服の袖をぎゅっと握っている。

ザックハート様の娘となれば、第10騎士団との別れを意味しているのではないか?

親に裏切られ、会ったこともない義父にも裏切られたルファが、ようやく手にした場所。それを手放す不安。ザックハート様は良くしてくれるだろう。けれど、他に知っている相手がいない環境。それは、少女が選ぶ選択肢として、過酷なんじゃないか?

でも、ここで引き止めてザックハート様が養子の話をなしにしたら、この先、ルファの人生はどうなるんだ? 第10騎士団がずっと面倒を見ることはできるのか?

でも、ルファはやっと僕や、ラピリア様や、ディックや、ウィックハルトや、ネルフィアにサザビー、リュゼルやフレインだって、本当にやっと、心を開き始めてくれたんだ。

とにかく何か言わないと。考えがまとまらないまま「あの!」と僕が声を上げた瞬間、ザックハート様が言葉を重ねる。

「所属はそのまま、第10騎士団で良い」と。

ザックハート様は僕の服の裾を掴むルファの姿を、優しげな目で見つめる。

「しかし、養女とはいえローデル家の子女を第10騎士団の小間使いとするわけにはいかないのでは?」ウィックハルトが懸念を口にする。

「なら、正規の部隊員にすればいいじゃない」というのはラピリア様。

「そんなに簡単になれないのでは?」

「私にいい考えがあるわ。ザックハート様。この件、後日レイズ様よりちゃんとお返事を差し上げる形でも宜しいですか? それからルファ。貴方はこのお話を受け入れるべきよ。第10騎士団に残れるかどうかは貴方次第かもしれない、けれど覚えておきなさい。自分自身を守ってくれるのは、結局本人の決断しかない。貴方がこの話を断るのも自由だけど、それも貴方の決断だと心にしっかり刻んでから決めなさい」

ラピリア様は凄いな。僕では何もできなかった。

ラピリア様の言葉を受けて、ルファは僕の袖から手を離す。

それから目に強い光を湛えながら

「ザックお爺さまの提案を受け入れたいと思います。けれど、私は第10騎士団にいたいです」と最後は少し泣きながら、それでもしっかりと口にする。

「任せておきなさい!」と自分の胸を叩くラピリア様。

この件はラピリア様に任せたほうが良さそうだと思いながら、僕らはザックハート様も含めて、本格的に泣き出してしまったルファをアワアワしながら宥めるのだった。

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ひとまずルファの件が落ち着いた翌日。

ゲードランド滞在最終日。

僕らは行きと同様にルエルエで一泊して帰るつもりだったので、昼頃には出発する予定だ。本日はザックハート様もしっかりと予定を空けていたので、存分にルファを甘やかす予定らしい。昨日行けなかったところも回ると息巻いているザックハート様。完全に好好爺の様相である。

そんな束の間の平和を乱す人物が部屋に乱入してきた。

「おいおい! ザックハート! 久々に帰ってきてみたら、こりゃあなんの騒ぎだ! 裏町が蜂の巣を突いたようになってやがるぞ!」

ザックハートを呼び捨てにしながら乱暴に扉を開けたのは、海軍司令のノースヴェル様だった。