軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第285話】ゾディアック家の人々⑤ 賛成と反対

僕とビルドザル様が食堂に入ると、既に全員が揃っていた。

「まったく! 父上はいつもこうだ! 私は手短にとお伝えしたのに!」

ぷりぷりと怒るベルトンさん。

「ところで私の酒はあるのか?」

苦言を呈するベルトンさんを無視して、開口一番自分のグラスを持ち上げて酒を要求する。

「お酒は控えるように言っているでしょう?」

「今日くらいは良いだろう。大切な客人のもてなしだ」

「私はまだ大切な客人だと認めておりませんがね!」

言いながらも、ビルドザル様のお酒を用意するように執事さんに命じるベルトンさん。なんだかんだ言って人が良いのかもしれない。

お酒が用意されるまでに視線を走らせれば、ビリアンは既にルファに大変懐いているようで、何かと話しかけては楽しそうに笑っている。

対照的にレアリーは浮かない顔。

ネルフィアはリウラさんと何やら話し込んでおり、ウィックハルト、サザビー、ディックは大人しくしていた。

「では、乾杯を、、、そうだな。。。。せっかくだからラピリアに頼むか」ビルドザル様の指名で、立ち上がるラピリア。

グラスを掲げたまま、何を口にするか少し考える仕草をしてから

「、、、、久しぶりに家族の顔を見られて嬉しく思います。特にここしばらくは大変でしたから。まだ、全てに決着が付いた訳ではありませんが、今日は大切な客人とともに、良い時間を過ごせればいいと思います。乾杯」

「「「「「「「乾杯!!!!」」」」」

音頭と共にグッと杯を空けるのはビルドザル様と、リウラさん。二人とも飲みそうだなぁ。

出てきた料理はどれも見事なものだ。ディックが嬉々としていることからも良くわかる。

しばらくはベルトンさんも僕に絡むことなく、穏やかな談笑が続く。

最初にぶち込んできたのはビルドザル様だ。程よく料理が減ってきたところで、やおら口を開いた。

「さて、ロアとラピリアの婚約であるが、私は認めようと思う」と。

びっくりしたのは僕だけではないはずだ。確かにその件でやってきたことは周知の通りだけど、順番としてはまず然るべき席を設けて、そこで僕が申し出る流れのはずだった。

だからこそベルトンさんもこの晩餐では大人しくしていたのだ。出会って早々に絡まれたけれど。

展開としてはかなり急だし、乱暴である。何せ僕はまだ願い出てさえいない状態なのだ。

流石に虚を突かれたようで、ネルフィアさえキョトンとしているあたり、いかに唐突だったかわかるだろう。

「何を突然申されるのか! そもそも、、、、」ベルトンさんが言い終わる前に、「私も賛成ですわ」と同意したのはリウラさん。

「お前まで一体何を!?」

「あら、今日、ロア様たちが婚約の申し出に来ていることは今更の話。それならさっさと済ませてしまったほうが良いではないですか。ただでさえ今までどんな縁談もお断りして、場合によっては逃げ回っていたラピリアがようやく決心したんですもの、先方の気が変わらないうちに決めてしまった方が良いわ」

「何を乱暴な! そ、そもそもそのロアという人間を我々は何も知らないだろう! そんな相手に、、、」

「何も知らない? ロア殿といえば第10騎士団の副団長、この度の大反乱における主役、新しいルデクの英雄、王の覚えどころか、次期後継者の教育係も兼ねておられるお方。まるで御義父様のお若い頃のよう。今、このお方を知らない人間などそういないと思いますけれど?」

「い、いや、、、そう言うことではなくてだな」

まだ食い下がろうとするベルトンさんに、リウラさんは続ける。

「これ以上の縁談、アナタには他に候補があるのかしら? それとも、今度お越しになる、バーミトン家の子息が良いのかしら?」

「バーミトン家の息子など論外だ! 一連のこと、策謀の臭いしかせん!」

「それからもう一つ。そもそも、当家に持ち込まれた良縁のいくつかは、アナタのせいで潰れたのを忘れたわけではないでしょう? 」

止めの一撃を放たれて「ぐうっ!」と言葉に詰まるベルトンさん。過去にも似たような感じで反対したんだろうなぁ。

「では、反対なし。と言うことで話を進めても良いな」

僕らが呆気に取られている間に話が進む中、

「私は反対よ!」と立ち上がったのはレアリーだ。

「私はまだ認めてないんだから! お姉様が結婚するなんて、絶対に嫌!」

それだけ言うと、食堂から走って出ていってしまう。

「あらあら、不躾な娘でごめんなさいね。あの子、姉を取られるような気がして寂しいのよ。少し私の方から話しておきます。皆さんはこのままお食事を楽しんでいてください」

そう言ってレアリーの後を追うリウラさん。

ベルトンさんがお前のせいだぞと言わんばかりに僕を見るけれど、流石に僕のせいではない。

「一晩経てば落ち着くであろう!」と笑うビルドザル様の声が、食堂に妙に大きく響いた。

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翌朝、何やら騒がしさで目を覚ました僕がリビングに行くと、ゾディアック家の人々や執事さん達が全員集まって、深刻そうな顔をしていた。

「おはようございます。何かあったのですか?」と聞くと、ラピリアが僕に一枚の手紙を見せてくれる。

「今朝、レアリーの部屋にあったそうよ」

そこには

「お姉様の婚約に抗議して家出します」

とだけ書いてあった。