軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第284話】ゾディアック家の人々④ ルデクの大鷲

ラピリアの父はベルトン、母はリウラと名乗る。

「さてでは、まず我が家に踏み入れる前に、 娘(ラピリア) のどこが素敵か10個あげてもらおうか!」

最初の試練とばかりに宣言するベルトンさんであったが、

「あ、な、た」

と、笑顔ながら怒気を孕んだリウラさんの言葉に、一歩後退りしてから「ま、まあ、まずは入りなさい。話はそれからだ」と、踵を返して館へ進んでゆく。

「、、、、ロア、なんていうか、、、ごめん」

既になんだか疲れているラピリアが、僕の耳元で囁くも、別にラピリアのせいでもない。

「いや、楽しいご家族だね」僕もラピリアに小声で返すと、「普段はもっとちゃんとしているのだけど、私の、、、その、私の見合いの話とかが持ち上がると、いつもあんな感じで、、、」

少し恥ずかしそうに言うその様が可愛らしくて、思わずドキリと胸が弾む。

「そういえばお祖父様は?」ラピリアが話題を切り替えリウラさんに聞くと、「御義父様なら、リビングで待ってらっしゃるわ」との返事。

「まずはお祖父様にご挨拶ね。ロアも会ってみたいでしょ?」

「もちろんだよ。ルデクの大鷲と呼ばれたほどの大将軍だもの。楽しみだね」

僕が顔を紅潮させると、ラピリアはふふふと笑って

「ロア、かーお」と僕の頬をそっとつねる。

そんな僕らのやり取りを、ラピリアの妹レアリーがじーっと見ていた。

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リビングにいたのは、痩身の老人。整えられたヒゲと、意志の強そうな眉。そして射抜くような強い視線は戦場のラピリアにも通じるものがあった。

老いて尚、佇まいだけで伝わる圧倒的な存在感。

ラピリアの祖父、ビルドザル様の全盛期は、帝国が大陸東部を制圧するよりも前のことだ。

当時まだ、ルデクの東部、山向こうには3つの国があった。

それらの国が時に連合したり、時に反目しながら度々ルデクに手を出してきていたのである。目的はルデクの港と鉱山。

それらの敵を敢然と弾き返した中心人物が、ビルドザル=ゾディアック様である。

ちなみにラピリアが幼くして、戦巫女の名目で戦場をつれ回されていたのも、その頃のことだろう。

その後、敵対していた3つの国は帝国の台頭とともにルデク侵攻どころではなくなり、攻撃の手は自然に弱まっていった。

既に高齢であったビルドザル様は、戦線に一応の終結を見たところで引退。その後の帝国侵攻においては戦線復帰も検討されたが、ラピリアの第10騎士団加入を聞き、見守ることを選択したらしい。

「貴殿が、ロア=シュタイン公か?」

「はい。第10騎士団副団長、ロア=シュタインです。ビルドザル=ゾディアック様にお目にかかれて、本当に光栄です」

「、、、、そうか。この度は孫が世話になっておる。礼を言う」

「いえ! そんな、、、むしろ僕の方が、ラピリアにお世話になってばかりで、、、、」

「ふむ。。。。少々貴殿とだけで話をしたい、私の部屋に行こう。他の方々はしばしリビングでくつろいでいて欲しい」

そのように伝え、さっと立ち上がるビルドザル様。ベルトンさんが一瞬何か言いたげな顔をしたけれど、結局口を閉じる。

「あら、それじゃあ、私は少しラピリアとお話ししたいわね。久しぶりの母娘水入らずで。あなた、お客様の歓迎、お願いできますかしら?」

リウラさんの言葉に、ベルトンさんは少し迷い結局、反論しても仕方がないと言ったふうに「分かった。父上もリウラもほどほどで戻ってきなさい」と言うに止める。

リウラさんは「ええ。もちろんよ。それじゃあ皆様、少しだけ席を外しますね。何かあれば、主人に申し付けくださいね」と言い残し、ラピリアを連れて別室へ。

こうして僕とラピリアは、ウィックハルトたちを残して、それぞれに連れていかれるのだった。

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ビルドザル様の私室。

樫の木で作られた、統一感のあるデザインの本棚や机が出迎える。とてもセンスの良い空間だ。寝室と思われる奥の扉の前に置かれたソファに通される。

「早々にすまないな。適当にかけたまえ」

「あ、はい」

言われるがままに座る僕。

「早速だが、色々と話を聞かせてほしい」

「色々と、ですか?」

「ああ。貴殿の活躍は既に聞き及んでおる。私が知りたいのは、今後のことだ。リフレアをどうするつもりか、ルデクの貴族はどこまで裏切っているのか、他に懸念すべき相手はいるのか、などをな」

なるほど、他の人の耳があっては話しにくいことも話せ、そういう意味か。確かにラピリアの両親は騎士ではないから、知られてはまずい内容もある。

この人には隠し事をすべきではないな。僕は決断する。

「わかりました。聞きたいことは全てお話ししましょう。余計な配慮かもしれませんが、、、、」

「無論、他言はせぬよ」

「、、、助かります。最初に、大前提として我々はリフレアを滅ぼすつもりでいます。その上で、ご質問を」

「そうか、、、、私も賛成だな。あの国はもはや存続させるべきではない。うむ。では、、、、」

ビルドザル様の質問に、僕は答えられる限りで答える。

どのくらい時間が経ったのだろう。

扉をノックされて外から「そろそろ食事のご用意が、、、、」という執事さんの遠慮がちな声が聞こえて、僕らはもうそんな時間かと驚いた。

「すぐに向かう」ビルドザル様の返事に、執事さんが離れる気配がする。

「中々に興味深い話であった。名残惜しいが、ここまでとしよう」

「はい」

僕らが揃って立ち上がると、ビルドザル様は最後に「それで、うちの孫娘のことはどう思っているのだ」と唐突に聞いてきた。

先ほどの話の中で、今回は相手貴族の牽制で、偽装婚約であることはこの人にだけは伝えた上での質問だ。

「、、、、、大切な人だと、思っています」

僕の答えに、「ならば良い」と、ビルドザル様は今日初めて、優しげな笑顔をチラリと見せた。