軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第245話】ホッケハルンの決戦⑦ フレインと騎士団長達

「やはり、動かんか」

リュゼルが新兵達の緊張をほぐしている頃、フレインは第六騎士団長、第七騎士団長の両名と膝突き合わせて難しい顔をしていた。

ここには2人の騎士団長とその側近。加えて第10騎士団からはフレイン、それにシャリスが立ち会っている。

ロアが合流するまでの名代はフレインであり、第10騎士団の行動についてはフレインが責任を持たねばならない。

早々に布陣したルシファルであったが、砦を囲むでもなく様子を窺う状況が続いている。

その狙いはフレイン達にも分かっていた。ホッケハルンの砦には致命的な仕掛けが隠されている可能性がある。

最初に気づいたのは第六騎士団長のフォガードだ。彼はこの砦に元々いた守備兵の手引きによって、危うく壊滅の危機を味わっている。

以降もホッケハルンの砦の守備を任されていたフォガードは、ルシファルが他にもこの砦に何か仕掛けをしたのではないかと思い立った。

そうして部下に調べさせると、案の定、いくつかの秘密の通路が発見されたのである。

しかし、フォガード達第六騎士団が全ての仕掛けを発見できたかといえば、そこには疑問符がついた。ホッケハルンの砦の規模が邪魔をし、徹底的に調べ上げるには時間が足りなかったのだ。

彼らの懸念は正鵠を射ている。

実際にルシファルの仕掛けの幾つかは未発見のままだ。その中には致命的とも言える城門を簡単に開ける方法や、訓練を受けたものであれば塁壁を登れるように、入念にカモフラージュされた凹凸なども残っていた。

つまるところ、ルシファルは夜襲を考えているのだろう。というのが彼らの結論だ。

何を仕掛けてくるにせよ、人の目の届きにくい夜間の戦闘となれば、こちらが後手を踏まざるを得なくなるのだから。

「ロア殿は何か言っておられたか?」フォガードがフレインに問う。

「なるべく早く片付けて、ルシファル達が動かざるを得ない様にするから、それまで耐えて欲しいと」

併せて「無理ならホッケハルンは諦めよう。全て燃やしちゃって」と続けたが、それは今言うことではないだろう。

フォガードの発見は、すでに第10騎士団にも情報が届けられていた。そのためルシファルが夜襲を企てるであろうことは、ロアにも予測の範囲内である。

こちらとしては夜襲には持ち込みたくない。そのためにロアは第10騎士団を割って、ルシファルが夜を待てぬような展開に持ち込こもうと考えたようだ。

「なるべく早く片付ける、か、、、だが見る限り、ロア殿の方へ向かったのは第二騎士団のようだが、、」

フォガードが言うように、ルシファルの陣営から第二騎士団の旗印が消えた。当然、ロア達への手当であろうと考えられる。

第二騎士団は騎馬に乗せていれば、恐らく全ての騎士団で最強の破壊力を持っている。それはこの場にいる人間の共通認識と言って良い。

その第二騎士団に対して「なるべく早く片付ける」とは、非常に甘い見込みであるとしか思えない。。。ただし、ロア以外が口にすれば、だ。

ロアは「多分、僕らの方に向かわせるのはホックさん達だと思う」と言っていた。そして、ロアの言葉の通りになった。

今回だけではない。

ゼッタで雪が降るといえば雪が降り、帝国と同盟するといえば、同盟を成し遂げてきた。

フレインにとっては、ロアが言葉通りに第二騎士団をなんとかしても、もはや全く驚くべきことではなくなっている。

「ロアができると言ったら、多分、できるんだと思います」

フレインがそのように口にすると、「信頼されておられるのですな」とフォガードが微笑む。

信頼、どうなのだろうか? 第10騎士団の中で一番付き合いが古いのは俺だ。まさかアイツに騎乗を教えている時は、こんなことになるとはつゆ程も思わなかった。

それがどうだ。俺は中隊を任せられ、アイツは第10騎士団の副騎士団長様に納まっている。

全く不思議なやつだが、ま、期待はできる。ああ、信頼よりも、期待という言葉の方が俺達には合っている気がするな。あいつは一体、どこに向かうのか、それを見てみたい。

黙ってしまったフレインを見て、フォガードが不思議そうに首を傾げたところで、もう一人の騎士団長、トール=ディ=ソルルジアが口を開く。

「ロア殿の策はともかく、このまま指を咥えて眺めているのもどうかと思う。少し挑発してみるか?」

「挑発というと?」

「私の第七騎士団が出よう。何、適当に揶揄って帰ってくる。短気な将が引っかかってくれれば儲け物だ」

「それならば我々も是非!」と名乗りを上げたのはシャリス。彼らは汚名を雪ぐ機会を望んでいる。意気込む気持ちも分からなくない。

フレインは少し考える。ロアの言葉を守るのであれば、シャリスの提案は却下すべきだろう。砦に籠ってロアの到着を待つ。

そこまで考えてから、フレインはふと、思う。

この状況で、ロアならどのように考えるだろうかと。

単に命令を守るだけなら簡単だが、ロアは俺に任せるといった。なら、ロアがこの場にいると仮定して考えるべきではないか?

そう考えれば、シャリスの出陣もそこまで悪い提案ではない。

いずれにせよルシファルに動いてもらいたいのだ。ならば挑発は常套手段であるし、挑発が成らずともシャリス達が出れば、旧第九騎士団の兵には何かしらの影響を与えられるかもしれない。

それに第七騎士団は2500しかない。シャリス隊が共に出れば4500。不測の事態にも対応がしやすくなる。

そこまで考えてフレインは苦笑する。

俺がロアの真似事をするとは、、、、だが、心は決まった。

「分かった。シャリス中隊の出撃を許可する。トール様、いっとき指揮権を貴方にお任せしたい」

フレインの言葉に、トールは面白そうに頷いた。

「、、、、やはり第10騎士団の者達は柔軟だな。まかせろ。だがね、シャリス。共に出る以上は覚悟はしておけ。多分、”何匹か釣れる”ぞ」

そのように言いながら、トールは不敵に笑うのだった。