軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第233話】ゴルベルの決断④ 若き王の覚悟

「ーーーー私が思っていた以上に、父は求心力を失っていたようです。私が覚悟を決めると、あっという間に賛同者が集まり、、、、、」

ルデク城内の謁見の場で、王の交代に関する経緯を滔々と語るシーベルト。

「一つ、よろしいか?」ゼウラシア王が口を挟む。

「なんでしょうか?」

「前王は、如何にされたのだ?」

「、、、やはり気になりますか。父、、、いえ、前王ガルドレンは強制蟄居。といえば聞こえは良いでしょうが、城の一角に幽閉しています。我が父ながら、今は正気ではない。可哀想ですが国政が落ち着くまでは、このままと考えています」

「、、、、そうか」

「もしかして、ゼウラシア王は前王の首をお望みですか?」

逆に問われたゼウラシア王は「何故、そう思われる?」と返す。

「以前はルデクとゴルベルはそれなりに良い関係を築いていたと思っています。しかし、帝国の侵略を聞くと、あっという間に手のひらを返し、貴国へ攻め入った。父は、ゼウラシア王とルデクの民にとっては憎むべき相手なのでは、と」

「なるほど、、、、」

ゼウラシア王の言葉を聞く前に、シーベルトは深く頭を下げる。

「できますれば、前王の首まではご容赦いただけませんでしょうか? あのような人でも、私にとっては父、サクリに誑かされるまでは、それなりに良き王であったのです」

その態度に慌てたのはゼウラシア王だ。

「いや、貴殿は何か誤解をしておられる。頭を上げてほしい。私は別に前王の首など欲してはおらぬ。単純にどうなったのか知りたかっただけだ。すまぬ」

その言葉を聞いてようやくシーベルトは頭を上げ「でしたら良かった。私としても、そこは譲れぬと考えておりましたので」と笑顔を浮かべる。

「私も質問をしても?」今度はリヴォーテが声を上げた。

「えっと、貴殿は、、、、」

「失礼、私はグリードルの将でリヴォーテと申します」

「貴殿があの高名な。ご挨拶が遅れ、失礼いたしました」

「いえ、それよりも。今の話では、ルデク側はゴルベルと対等な関係を提案していたように聞こえましたが、何故、従属を望むのですか?」

言いにくいことをはっきり言ったな。リヴォーテ。けれどそれは僕も疑問に思っていた点だ。

手紙をフランクルトに頼んだ段階では、制圧したゴルベル北部のうち西側の半分の明け渡しで、なんとか休戦に漕ぎつけられれば御の字と思っていた。

あえてぼかしていた点を聞かれたシーベルトであったけれど、それほど気にするでもなく簡潔に答える。

「間に合わなかったから、です」

「間に合わなかった?」

「はい。手紙には帝国との同盟が成立するまでに交渉を、とありました。ですが、想像以上に早くことが進んだとはいえ、前王を幽閉し、将官の意見を集約するには時間が足りませんでした。そうこうしているうちに、フランクルトから再び手紙が」

皆の視線がフランクルトに注がれる。

「帝国との同盟の成立を知らせたのです。本当に時間がない、と添えて」

そうか、僕らが帝国に滞在している間に、皇帝が送り出した伝令がルデクに到着し、フランクルトはそれを聞いて慌てて手紙をしたためたという流れか。良い判断をしてくれた。

「なるほどの。帝国と同盟が成立した以上、ゴルベルとしては通常の交渉では話がまとまらぬと判断したわけか」ザックハート様の言葉にシーベルトは深く頷く。

「それからもう一つ理由があります。王が変わったばかりの我が国は、隣国から見ればさらなる弱体化に映ることでしょう。隣国が動けば、今の我が国に跳ね返すだけの力はない」

シーベルトの言う隣国とは西のルブラルのことだろう。

確かにルデクに従属するとなれば、ルデクは見捨てる事はできないし、ルデクが帝国と同盟したと知れれば、ルブラルとて簡単に手を出してはこない。

それにしても思い切ったな。だけど、悪くない一手だと思う。

「ほほう。ルデクのロアといい、ゴルベルの新王といい、それぞれの国から新たな力が台頭してきておりますなぁ。これは帝国もうかうかしておれん」エンダランド翁がしゃしゃと笑い、「それで、ルデク王はどうされるおつもりか?」と促す。

それから少し考えて「ルデクに断られたら、帝国に話を持ってくると良い」と付け加えた。

エンダランド翁の言葉には、ゼウラシア王も苦笑するしかない。

この提案、すでに答えは決まっているようなものだ。数少ない問題としては、ルデク国内の感情面だけれど、帝国との同盟に比べればなんのことはない。

「相分かった。これよりゴルベルは盟友であり、我が国が庇護する相手でもある」

「ご英断、感謝いたします」

シーベルトが再び深く頭を下げると、ファイスと、新王の息子もそれに倣う。

こうしてルデクは大きな問題であった、全方位から攻められる危機を完全に脱したのである。

ルシファル。僕はここまで来た。

謁見の場を包む和やかな雰囲気の中で、僕の視線の先に、あの男の背中が見えた気がした。