軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第187話】レイズ=シュタインの一手28 レイズ=シュタインの一手

「馬鹿な!? なんだあの軍は!? 聞いていないぞ!! おい、貴様らは何を見ていたのだ」

「おい! 話が違うではないか!」

背後からものすごい勢いでやってくる敵に、第九騎士団の指揮を預かるノゲルデ、パームスの両将は周囲へ当たり散らす。

ルデク側に援軍はなく、砦には内応者がいる。機を見て開門するのでなだれ込めば一気に制圧できる。

ノゲルデはそのように聞いていた。

「今後の第九騎士団を任せるお二人の箔を付けるにも、手頃ではないかな?」

ルシファルにそのように勧められてここまでやってきたのだ。先ほどまで予定通りの展開だった。なぜこのような事態となっているのか理解できずにいる。

「敵兵近づいてきます! どうなされますか?!」

指示を求める側近に

「す、、、すぐにルシファルを、第一騎士団を援軍に呼べ!」

などと、聞いた側近ですら呆れるような命令が飛ぶ。

第一騎士団は離れた場所で待機している。伝令が届くより早く第九騎士団が崩壊するのは、火を見るより明らかだ。

ーーーーそんなことも分からないのかーーーー

側近は今更ながら、絶望的な気分になっていた。

そもそも、ルシファルが砦攻略を第九騎士団に任せた理由は何か。側近は、「勝ち馬に乗るなら相応の成果を示せ」そのように言われているように感じていた。

この考えは第九騎士団内である程度見識のあるものならば、共通認識といえる。

勝ち馬、、、、そのはずだ。10の騎士団のうち3つの騎士団がリフレアについた。頼りの第10騎士団はゴルベル領内に釘付け。第四騎士団と第六騎士団は再建中。存在がいまいち怪しい第八騎士団を除くと、ルデクでまともに戦えるのは第三騎士団、第五騎士団、第七騎士団しか残らない。

ノゲルデやパームスがどのように考えたかは分からないが、少なくとも側近はルデクに勝ち目なしと断じた。

ゆえに側近はノゲルデ、パームスの両名に付き従ったのだ。一兵卒はともかく、斯様な判断をした将は少なくない。

だが、援軍は来た。それも第10騎士団が。これが意味するものは何か。

「、、、、では、早速手配いたします」深く頭を下げた側近は、陣幕を出るなり馬に飛び乗って逃げ出す。目指すは北。

その後も理由をつけては側近達が一人、また一人と陣幕を後にする。

だが、ノゲルデ、パームスは陣幕の中で当たり散らしながら爪を噛むばかり。

この時、一歩でも陣幕の外に出ていたらノゲルデ、パームスの運命も変わっていたかも知れない。

最後の側近が天幕を出た頃には、本陣の周辺にはすでに、味方は誰もいなかったのだから。

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「見ろ、間抜けの末路だ」

「ああ。もはや滑稽だ」

双子は丸裸の本陣の前で呆れた声を出す。

本陣は制圧され、ノゲルデ、パームスは拘束済み。

双子はウィックハルトを見た。

「いいのか?」

「ロアに怒られるぞ?」

ウィックハルトは頷きながら、自ら剣を抜く。

「予想通り、貴族の出の者達です。ここで斬ります。ロア殿の叱責は全て私が」

おそらくロア殿なら生かして情報を聞き出そうとするだろう。ロア殿はあまり無用な犠牲を好まない。だが、貴族相手にそれは望ましくない。

貴族というのはなまじ権力を持つだけに、恨みを忘れずにいつまでも邪魔をしてくるものが多い。特に第九騎士団の椅子を買えるほどの家柄なら尚更だ。

ーーー生かしておけば、後々必ず禍根を残すーーー

いっそ戦場で死んだ方が、今後の軋轢が減る。だからこそウィックハルトは無断で屠ろうと決めた。

冷めた目で見下ろすウィックハルトに、猿轡の奥からノゲルデとパームスの必死の呻き声が聞こえる。恐らくは命乞いをしているのだろうが聞くつもりもない。

ウィックハルトはそれ以上言葉を発することなく、剣は鋭く振り下ろされた。

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「助かりましたぞ! ロア殿、それにラピリア殿!」

第九騎士団は散々に蹴散らされ、生き残ったものはみな北へ逃げていった。わずかな時間で第九騎士団は1000名以上の被害を出したので大敗と言えよう。

「フォガードさん! 良かった、無事ですか! 遅くなってすみません!」

「とんでもない! ロア殿には再び助けていただいた、、、なんと礼を言って良いか、、」

「いえ、フォガードさん達第六騎士団の皆さんが迅速に動いてくれたから、ホッケハルンの砦が落ちずに済みました。あまり時間がないので、僕らは行きます! 後から歩兵部隊が追ってくるので、万が一再度敵がきたらそのまま使ってください。問題なければ王都へ向かうように指示をお願いします!」

この場に第一騎士団達がいない以上、先に進んだのではないかという懸念は拭えない。もしも王都へ迫っているのなら、息をついている暇はない。

フォガードも引き留めることなく「ご武運を!」とだけ口にする。

そして早々に出立しようとする僕らに対して

「お待ちください!」

と声をかけてくる人がいた。

どこかで聞き覚えのある声だなと思って振り向けば、そこにはボロボロの格好をした一団が。

その先頭では第九騎士団の部隊長、グリーズさんが跪いてこちらを見上げ「我らも同行をお許しください!」と願い出たのだった。

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ホッケハルンの砦より北へ少し離れた場所で、状況を注視していた第一騎士団とリフレアの部隊。

時が経つにつれ、本陣にいるルシファルに不快な知らせが次々と飛び込んできた。

「第二騎士団、第10騎士団に疑いを持たれて追放。リフレア側から帰還中!」

「第10騎士団、わずか1日でヒースの砦を攻略の報告に間違いなし!」

そしてついに

「第九騎士団、第10騎士団の急襲に遭い潰走!! 残兵がこちらへ向かっております!!」

ルシファルはヒーノフを見て、「、、、生きているようだな」と言った。

「まさか、信じられません」

目の前でレイズが倒れたのを確認しているヒーノフには信じがたい事実だ。あの状況で生きているなど、、、

「では、第二騎士団に疑念を持ち追放し、使える兵が減ったにも関わらずゴルベル北部最大の砦を一日で落とし、信じられぬ速さで帰ってきて第九騎士団を撃破するような芸当を、レイズ以外の誰ができるのだ?」

「、、、、っ」

レイズ以外あり得ない。ヒーノフでもそう思わざるを得ない。

「兵を退く。ひとまずオークルの砦で体制を立て直す」

「ここまで来てですかな?」リフレアの将が少し不満げに溢したが、ルシファルは諭すように淡々と言葉を紡ぐ。

「レイズが生きているとなれば、ここから無理攻めは悪手ですな。何、状況はなんら変わりません。我が軍に加え、第二騎士団と第九騎士団が裏切った以上、ルデクの戦力は大きく減じております。適度に帝国とゴルベルを利用してやれば、王都陥落は時間の問題」

「、、、、今回の行軍は貴殿が大将だ。命令には従うが、、、」

まだ少し納得のいっていないリフレアの将に、ルシファルは余裕の表情で両手を広げて演説を始めた。

「何、悪いことばかりではございません。オークルの砦をはじめ、ルデク北部の領地をリフレアに組み入れるためにはちょうど良い猶予ができました。次はそうですな、、、帝国が動いた時に合わせて一気に決めて見せましょう」

このような言い回しはお手のものだ。見た目の良いルシファルの言葉は、さも正しいことのように将の胸に響く。

「確かに、ルデクの北東部という戦果があれば、主人もお喜びになられるだろう。分かった。ここは退こう」

「第九騎士団はどうされますか?」

ベリアルの言葉に、ルシファルは心底興味なさそうに「逃げおおせたら、適当に第一騎士団に吸収しておけ」とだけ指示を出すと、早々に撤退の準備を始めたのだった。

未だルデク側は、ロア達は気づいていない。

だがこの瞬間、レイズ=シュタインは死してなお、ルシファルを退かせることに成功したのである。