軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第186話】レイズ=シュタインの一手27 ルシファルの誤算(下)

早々に始まったホッケハルンの砦の攻防戦は、一進一退の状況が続いていた。

守備側の第六騎士団は4000、それに砦の常備兵を加えて5000を少し超える。

対する第九騎士団は、5000に届かない程度に見える。同数の戦いであれば守備側の方が有利だ。そう簡単に陥落することはないと思うが、相手を追い払うほどの兵力でもない。

それでは困るのだ。こうしている間にも、反乱軍の本体である第一騎士団やリフレアの兵が王都へ迫っているかも知れないのである。

どうにかして現状を打破しなければ、、、、

焦れるフォガードだったが、戦況に大きな変化を見出すことができない。

第九騎士団も無理やり攻めると言うよりは、細かい攻撃を繰り出しながら、どちらかといえば取り囲んでいるような状況である。

状況が変わったのは、戦いが始まって二刻も経った頃であろうか?

第九騎士団が完全に包囲の体制に落ち着いたため、第六騎士団の主だった面々が一旦集まって攻勢を仕掛ける方法を相談していた時のことだ。

「外が騒がしいようですが、、、」

最初に気づいた若い部隊長が訝しげに窓の方を見やる。それからすぐに

「煙が!」

と言って立ち上がった。

その場にいる全員が窓のほうへと駆け寄ると。一筋の煙が砦の中から立ち上っていた。

「、、、狼煙?」

フォガードの脳裏に嫌な予感がよぎる。

フォガードがそれを口にするよりも早く、伝令が部屋に飛び込んできた。

「砦内に多数の内応者!! 北門が開けられ、第九騎士団が突っ込んできます!!」

「やられた! 急ぎ対応する!! それぞれ兵を動かせ! 他の門も開けられないか気を配れ!!」

慌てて駆け出す第六騎士団の将達。

最後に出てゆくフォガードは唇を噛んだ。

ルシファルならこの程度の準備をしていたはずだ。にも関わらず警戒を怠った私の失策だ!

客観的に見れば、状況も把握できぬまま砦に急行し、息つく暇もなく戦闘が始まったのだ。常備兵を主兵と使うのは当然のことで、フォガードにそこまで落ち度があった訳ではない。

だがこれで戦況は一気に第九騎士団へと傾いた。

以降、第六騎士団は非常に厳しい戦いを強いられることになる。

「第六騎士団の誇りに懸けて押し返せ!!」

フォガードの怒声が戦場に轟く。

第六騎士団も必死で押し戻そうとするも、勢いは完全に第九騎士団にある。はずだ。

しかし。

何かおかしい、、、

混戦の中でフォガードが感じとった違和感は、自軍からではない。第九騎士団の兵達にあった。

普通、戦況が優位になれば、勢いに任せどこか高揚した兵士が増えるのだが、フォガードが見る敵兵は高揚というよりも焦燥を感じる。

何かに駆り立てられ、どの兵士も必死の形相で襲いかかってきていた。

しかし今はその原因を探っている余裕はない。フォガードは喉が裂けんほどに檄を飛ばし、槍を振り回し続ける。

それでも砦に侵入する第九騎士団を止めることは叶わない。

ーーーここまでか。せめて、第九騎士団は道連れに、、、、ーーー

悲壮な覚悟を固めようとした時のことだった。

塁壁で戦っていた兵士たちから歓声が上がり、同時に

「味方だ!!」

「援軍が来た!!」

「援軍だ!!」

との声が次々に耳に届いた。

援軍? どこから? 一体どの騎士団が?

近くの敵を蹴散らして塁壁へ駆け上がり、第九騎士団の背後から襲いかかっている一団に目を凝らしたフォガードが見たのは、俄には信じられない光景。

「まさか、、、、第10騎士団!! これほどまでに早く戻ってきただと!?」

フォガードが驚愕に目を見開いている間にも、第10騎士団は面白いように第九騎士団を叩き伏せていった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「なんだ歯応えがないな!」

「お前らそれでも騎士団か!」

モーニングスターを振り回す双子、その横ではディックが棍棒を振るい敵を吹き飛ばしている。

恐れをなして横に逃げればリュゼルとフレインが待ち構え、運よく暴風のような暴力から生き残っても、ウィックハルトの矢が息の根を止めた。

第九騎士団は完全に油断しており、予期せぬ急襲にまともな対応を取れずにいた。

「、、、間に合ってよかったけれど、なぜ、第九騎士団?」

「わからないけれど、、、少し、弱すぎる、、、何かあったかな?」

ロアとラピリアは前線から少し離れた場所で戦況を眺めていた。

ラピリアがそばにいるのはロアの希望だ。レイズ様も、グランツ様もいない今、第10騎士団を最もよく知るラピリアに補佐を頼んだのである。

「それに第一騎士団はどこかしら?」

「最悪、この砦は第九騎士団に任せて先に進んだのかも知れない」

「それなら急いで追わないとまずいわね」

「うん。第九騎士団は蹴散らすだけでいいや。追撃はせずに、王都へ向かおう」

2人がそんな会話をしている間にも第九騎士団は確実に兵を減らしてゆくのだった。