作品タイトル不明
88 これもお茶会といいますかしら?
「アセリアちゃーん!」
と手を振ってくれたのは、ウィンリーだった。
隣にはすでに、ミラとベラがいる。
「あ、パン屋さん」
ウィンリーがワクワクと手を出した。
「粉屋だよ」
突っ込みながら、バルドがお盆ごとパンを渡す。
そこでバルドは帰るわけもなく、
「よっと」
なんて言いながら、地面に座り込んだ。
まあそうだろうと思う。
お盆に載ったパンは、5つなのだから。
アセリアも切り株の上に座る。
何をするでもない、ただお喋りするだけのために、みんな集まったのだった。
不思議ですわね。
王都でも、女性同士で集まることはある。
お茶会だのなんだのというアレだ。
王都のお茶会は、まず招待状を送るところから始まる。
家を飾り付け、食器を揃え、ドレスもお茶会用のものを用意する。
お茶を出す時は、そのお茶に関する情報も話せるようにする。
お菓子も最高級のものを。
それらが全て、家の評価に繋がった。
そして、お茶会は、暗黙の了解で次の主催へと移る。
誰が主催をするなんて誰からも説明がないので、女性のグループに入るには、そのグループの誰かのお気に入りにならなくてはならない。その人から色々と教わって初めて、王都での女性としての生活が始まるのである。
これも、お茶会といえばお茶会だろう。
手に持っているのが木のカップに入った水だけだとしても。
一人一つずつ配られるパンに、アセリアも手を伸ばす。
ただ、約束するだけのお茶会。
評価も何もなく、息苦しいこともなく、ただ、話すことだけを目的にしたお茶会。
男性が混じっていても、誰も何も言わないお茶会。
アセリアはパンをかじりながら、間もなく夏だと主張する真っ青な空を見上げる。
あの頃だってきっとこんな青空を見ていたはずなのに、覚えていないものですわね。
「で、なんで二人で来たのぉ?」
ミラがニヤつく。
……話題はどこも似たようなものですわね。
「偶然お会いしましたの」
「ああ。このジャム、アセリアちゃんのなんだよ」
「へぇ、美味しい」
ベラが感心する。
「正しくいえば、ハルムが作ったジャムですわ」
「器用〜」
「私すぐ焦がしちゃう」
ウィンリーがぷっと頬を膨らませた。
「実際さ、ハルムって、アセリアちゃんのなんなの?」
そう、尋ねてきたのはバルドだった。
何、って。
「執事ですわ」
「じゃあ、夫婦じゃないのか?」
「夫婦ではあるでしょ」
ウィンリーたちがキョトンとする。
「だって、布団……」
そう言いかけたミラの口をベラが抑えた。
胸が、チクリと痛んだ。
「夫婦では、ありませんわ」
そう。夫婦ではない。
夫婦ではないどころか、婚約者でも、恋人でもない。
けれど、ずっと共にいた。共にいることを約束した相手ではある。
「今!どんな関係でもいい。結局アセリアは、独身ってことでいいんだよな」
「え?……ええ、そうですわね」
その返事は、空虚だった。
けれど、こう答えるしか、答えは存在しなかったのだ。