作品タイトル不明
180 番外編 お前らは何を話してるんだ
ガタゴトと馬車がいく。
ファエンに格安で借り受けた馬は、ハルム、アセリア、ウィンリー、ミラ、ベラの5人を乗せた馬車を引く。
今日は、近くにある大きな湖に魚の購入についての話し合いの日だ。
アセリアが必須、馬車を扱える俺も必須、というところで、別に二人でもよかったのだが、三人娘が行きたいと言い出したのだ。
まさかこれほどの大人数で来ることになるとは思わなかったけれど、ちょっとしたピクニックだと思えば悪くはないだろう。
ハルムは一人、御者台に座り、後ろの会話をなんとはなしに聞いていた。
「今日はキャンディーを買ってこいって言われてるの」
ミラが少しウキウキした声で言う。
「私は新しいまな板が欲しくて」
ウィンリーがそう話すと、ベラが嬉しそうに、
「私はまた新しい本が欲しいわ」
と言い出した。
「本って……!」
ウィンリーとミラが反応する。
本がそんなに珍しいのか?
ぼんやりと思いながら聞いていると、
「アセリアちゃんがまた大変なことになっちゃうじゃない!」
そこに唐突にアセリアの名前が出てきた。
「な、何をおっしゃいますの!」
アセリアも慌てる。
本って、どんな……。
「アセリアちゃんが、バスタブから生足出して『うっふ〜ん』ってするようなことになってもいいの!?」
「プッハ!!」
あまりのことに思わず変な声が出てしまう。
いや、お前ら何の話をしてるんだ。
「何言ってるの、うちの村にはバスタブなんてないじゃない」
ベラの冷めた声がした。
それは事実だ。
村には川が流れている。確かに馬車は通れないが、浅瀬もあり、人間が水に入るのに困ることはない。
わざわざ大量の水を沸かして湯の中に入ろうとする者も、この村にはあまりいないようだった。
「つまりアセリアちゃんが小さな桶の中から足を出して……!?」
ミラがワナワナと震えた声を出す。
「ちっちゃ!」
ウィンリーが笑い転げる。
「だってこうだよ!?」
どうだっていうんだよ。
「この手はこうで、こっちの手がこうでしょ」
一体どういうことなんだ。
「しませんわよ」
アセリアが呆れた声を出す。
淑女の魂は何処へ行ったんだよ……。
キャアキャア騒ぐその声に、俺は無表情で真っ直ぐ前を見ていることしかできなかった。
その夜。
家で桶に湯を張った状態で、俺とアセリアは湯気の上がる桶を、ついじっと眺めてしまった。
「フッ……」
思わずハルムの口から、笑い声が漏れてしまう。
「しませんわよ?」
アセリアがジト目で呆れた声を出す。
その顔を見て、ハルムの笑い声が大きくなる。
「フハハハッ」
「しませんからね!?」