軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第143話 お兄ちゃんのあほ~

エルダートレントを無事に撃破した僕たちは、次の階層へと降りてきていた。

「ほえー、砂ばっかり~」

「今度は砂漠の階層か……」

見渡す限り砂の大海原だ。

一体どういう原理なのか、ダンジョン内だというのに空にはギラギラの太陽が浮かんでいて、灼熱の光を降り注いでくる。

「でも外はたぶん夕方」

「今日のところはここまでにして、いったん戻った方がよさそうですね」

「む、虫いない……? いないわよね……?」

アニィがこんな状態だというのもあって、この日の探索は終了し、いったんアーセルに戻ることにした。

通常ならダンジョンから脱出するだけでも丸一日かかるだろうけれど、菜園転移のお陰で一瞬だ。

「アニィ、明日大丈夫?」

「だ、大丈夫……あの階層でなければ……おえ……」

真っ青な顔のアニィは、シーファさんに肩を貸してもらいながら帰っていった。

そして翌日。

再び僕たちはダンジョンの砂漠の階層にやってきた。

「えー、やだよ! 昨日頑張ったから、今日は王都の観光しようよーっ! ほら、アニィちゃんもまだ調子悪そうだし!」

「わ、わたしはもう大丈夫よ」

アニィをダシにして喚くセナに、僕は真剣な顔で言う。

「セナ。実は一つ重要な話があるんだ」

「え? 何お兄ちゃん?」

「ここ王都にある家庭菜園は今あるこれだけなんだ。地上に別の家庭菜園を置いてくるのを忘れたから、すぐに地上に帰ることができない」

「えええええ!? ……どういうこと?」

「理解できてないのに何で驚いたんだよ……」

つまり、もし王都で観光しようと思ったら、ここまで来たのと同じルートで地上まで戻る必要があるということだ。

そうすると、次にまた同じルートを通って降りてこないといけなくなってしまう。

アニィが苦手とする森林エリアを二度も通ることになる。

「あー、失敗したな~」

「何やってんのさ、お兄ちゃん!」

……まぁ嘘なんだけど。

実はちゃんと王都の傍に別の家庭菜園を置いてきた。

でもそれだとセナが観光観光とうるさいので、嘘を吐いたというわけだ。

これでしばらくはダンジョン攻略に専念できるだろう。

「お兄ちゃんのあほ~」

不貞腐れてしまった妹を余所に、砂漠の中、家庭菜園を進めていく。

普通なら灼熱の太陽に照らされ、かなり暑いはずの階層だけれど、菜園の結界が防いでくれているのか、まるで熱さを感じない。

「っ! 魔物が来るわ!」

森林エリアを突破して調子を取り戻したのか、アニィが敵の気配を察して叫ぶ。

ただ、周囲にそれらしき影はない。

「も、もしかしてまだメンタルが……」

「違うわ! 砂の中よ!」

どうやら砂の中に身を潜めながら魔物が近づいてきているらしい。

直後、間欠泉のように砂が噴き上がって、その正体が明らかになった。

「わー、おっきい芋虫~」

セナが楽しそうに言う。

確かワームというのだったか、巨大なミミズのような芋虫のような魔物だった。

先端部分が円形の口になっていて、鋭い牙がぐるりと並んでいる。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」

「アニィ!?」

アニィが白目を剥いてぶっ倒れた。

「アニィ、大丈夫?」

「ここは……?」

「ダンジョンの中。第四階層」

「第四……じゃあ、砂漠は……」

「突破した。ボスは倒してない」

「……そう」

目を覚ましたアニィは、シーファさんからの説明で、すぐに状況を察したようだった。

アニィが気絶した後、僕たちはそのまま砂漠を進み、次の階層への階段を発見。

それを降りて、第四階層へと足を踏み入れていた。

常に薄い霧に包まれた不気味な場所だ。

泥の多い湿った大地で、沼地エリアとして知られる階層である。

「……やっぱりわたしがいなくても全然問題ないってわけね……」

ぼそりと呟くアニィ。

彼女がいないことで、確かに砂の中に身を隠した魔物の襲撃を幾度となく受けた。

ただ、菜園結界によって奇襲はすべて塞ぎ切ることができ、階層を突破するのに苦労することはほとんどなかった。

……つまり結果的に、これまでアニィが担っていた役割を僕が奪ってしまったことになる。

セナだったら大喜びするところだろうけれど……。

「アニィ……その……なんか、ごめん」

「はあ? あんたに謝られたらかえってムカつくんだけど!?」

思わず謝ったら逆効果だった。

「ていうか、まさかわたしが索敵以外に何もできないとか思ってんじゃないでしょうね! 舐めじゃないわよ! 見てなさい、コンチクショウ!」

なぜかヤケクソ気味に叫んだアニィは、どこからともなく弓を引っ張り出してきて矢を番えた。

「そこぉっ!」

そして沼の中を狙って、矢を放つ。

「~~ゲコッ!?」

どうやら沼の中に魔物が潜んでいたらしく、矢が背中に刺さった蛙のような魔物が飛び出してくる。

すかさずアニィが放った第二射が、蛙の脳天を撃ち抜いてトドメを刺す。

「ふん! これからはこっちで活躍してやるから!」

……うん、一応元気を出してくれたようでよかった。

「わーい! アニィちゃん全部任せた!」

すかさず丸投げして横になろうとするぐうたら娘。

「おいこら。もし寝たら結界から放り出して沼に沈めるぞ?」

「じゃ~、水棲ポーション飲んでおく~っ!」

「沈められるのはいいのかよ……」