軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドワーフ姉弟

「……か、変わったメイドさんですね」

「でも、ドワーフの作品を見たいっていうのはセンスあるよ、君」

二人のドワーフは姉弟らしく、顔つきや背丈がとても似ていた。

僕はちょっと恥じらいながらも、ディアナの前に出てお店の中に入った。

そして、置いてある武具を一つずつ見ていった。

すると、武具がとても丁寧で繊細な加工がされていることに驚いた。

そして、気になったナイフを見つけたので手に取って良いか聞いてから、直接持たせてもらった。

うーん。

多分これはとても良い商品だと思う。

バルディア家の屋敷においてある剣を見たことがある。

その剣は、どこか歪さや多少のバリなど粗さがどうしても目につくところはあった。

もちろん、騎士団用の大量生産用の武具とドワーフの一品物を比べるのは酷な話だ。

それでも、このナイフは良いものだと思う。

僕は手に取ったナイフを返そうとして名前を聞いていないことに気付いた。

「これ、ありがとうございます。えーと……」

「いえいえ、お気になさらず。僕はエレン。あっちは弟のアレックスだよ」

ナイフを僕から渡されたエレンは後ろにいるアレックスに指を指した。

アレックスはニコリと笑顔で返事をしてくれた。

このやりとりだけでも、とても良いお店だとわかる。

それなのに何故、閉店セールなどしているのだろうか? 僕は思い切って聞いてみた。

「そういえば、外に『閉店セール中』ってあったけど、お店を閉めてしまうのですか?」

「ああ、あれはね……」

エレンは少し寂しそうな顔をしながら話してくれた。

彼女も誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

二人は元々、ドワーフ国のガルドランド(以降:ガルドランド)に住んでいたらしい。

だが、様々な事情がありガルドランドからレナルーテに流れ着いた。

無一文に近い状況だったが、ドワーフという存在は希少価値が高い。

そこで、エレンは自身が担保となり借金をしてお店と工房を整えた。

最初は評判だったが、段々と客足が遠のいた。

評価は良いのに、客足が遠のく理由がわからない。

ある時、エレンが武器を買ってくれた冒険者に話を聞いた。

するとジェミニの武具を買って持っていると、他の武具店で物が買えない。

もしくは請求が高額になるという嫌がらせを受けるのだと言う。

そんな、馬鹿な話があるかとエレンは憤慨した。

だが、よそ者の台頭をよく思わない者達が圧力をかけているのは事実だった。

残念ながら、エレンやアレックスはそれに対抗できる力を持っていなかった。

そして、借りた資金は返せずにとうとう借金だけが残り、エレンが身売りせざる得ない状況になってしまった。

そこまで話すと、エレンはおどけた様子で言った。

「ダークエルフは長寿だからね。変化を嫌がるのかもしれないね。でも、返済日までまだ少し時間があるから、僕は最後まで諦めずに頑張ろうと思っているよ」

「……そっか。大変だね。ぼ……じゃなくて、私も何か力になれれば良いのだけど」

僕はエレンの話を聞いて彼らを助けたいと思った。

そして、何か決め手になる材料がないか、辺りを見回していた。

ちなみに、エレンの話を聞いていたファラとアスナは途中からとても複雑な顔をして聞いていた。

すると、僕はある「刀」に目を引かれた。

その刀は、まるで漂っている魔力を吸っているようなそんな印象がある刀だった。

僕は、エレンにその刀について質問をした。

「エレン、あの『刀』は何?」

僕が指を指した先をみて、エレンは少し驚いた表情をするが、咳払いをして説明してくれた。

「ゴホン、君は目が良いね。あれは、僕とアレックスの二人でないと作れない逸品で『魔刀』っていうのさ」

「魔刀……ひょっとして、魔刀を持っている人の属性素質によって何か変化が起きるとか?」

僕の言葉を聞いたエレンとアレックスは目を丸くして驚愕した表情を見せた。

「君、なんでそれを知っているの? 『魔刀』を作れるのはもう僕達だけで、現存数も少ないのに……」

「へ……? あ、いや、魔刀って名前だから、何か特殊能力があるのかなって、アハハ」

僕は乾いた笑い声を出してごまかした。

そして、内心は感激していた。

魔刀が作れる存在に出会えるなんて運が良い‼

「魔刀」は乙女ゲームの「ときレラ!」にも出てくる武器の一種だ。

前衛職のキャラに良い装備がなければとりあえず「魔刀」を装備させとけばなんとかなる。

そう、言われるほどに使い勝手の良い武器だった。

効果は使い手の属性魔法の攻撃力アップと、物理攻撃属性をキャラの持っている属性素質に変化出来るというものだった。

その為、ゲームにおいてのリッドはこの「魔刀」を持つと、物理攻撃と全属性攻撃が扱えるようになる。

つまり、汎用性が抜群でとても相性の良い武器だった。

ただ、この世界はゲームのように装備すれば簡単に使えるということはないだろう。

それでも試す価値はある。

僕はエレンに期待に満ちた目で言った。

「あの、魔刀を見せてもらっても良いでしょうか?」

「へ……? まぁ、いいけど。とても高い商品だから気を付けてね」

「はい。ありがとうございます‼」

エレンは僕に魔刀を鞘に入っている状態で丁寧に渡してくれた。

持ち手を優しく握ると魔刀が僕の魔力に反応しているような感覚がした。

思い切って僕はもう一つお願いをした。

「……これ、刀を抜いてもいいですか?」

「へ……? で、でも危ないよ?」

エレンはさすがに怪訝な顔をして抜かせてくれない。

その時、やりとりを見ていたディアナが助け船を出してくれた。

「……この子は武器の扱いに長けております。どうか、抜かせてもらえないでしょうか?」

「……そこまで仰るならいいですけど……メイドで武器の扱いに長けているって、どんな育て方をしているのですか?」

エレンは僕とディアナの言葉に首を傾げながら魔刀を鞘から抜いてくれた。

その刀身はとても綺麗で、波紋はうねりの出てきた波を模しているようでとても綺麗だった。

僕は、試しに魔力を流してみた。

すると、刀の色がみるみる変わり漆黒の色に染まった。

おお、凄い‼ と僕は目をキラキラさせながら見ていた。

だが、エレンとアレックスは目を丸くして叫んだ。

「はぁ‼ なんで‼ どうしてこんな小さい子供が魔刀に魔力を通せるの‼」

「そうだよ‼ 魔刀に魔力を通すなんて、初見じゃ出来ないよ‼ どんな人だって訓練をしてようやく使いこなせるようになるのに‼」

エレンとアレックスの驚愕した様子を見て、ディアナはため息を吐いて呆れた様子で言った。

「はぁ……また、常識を突き抜けたことをしましたね。ティア」

「いや、私が非常識みたいな言い方はやめて……」

僕の様子を見ていた、ファラとアスナは少し呆気取られた表情をしていた。

だが、すぐに「さすが、ティアです」と言いながら「クスクス」と笑っていた。