軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

所属不明の新手

「君の名前。もしかして『イリア』かい」

「……違う。だが、お前は私の敵だ」

彼女がそう答えると魔波が吹き荒れ、どこからともなく『矢』が飛んできた。

「く……⁉」

僕とメモリーは咄嗟に飛び退くが、矢には魔力付与か何かが施されているらしく、こちらの動きを捉えて素早く追ってきた。

躱しきれない分は切り払うが、彼女の背後から次々と新たな矢が襲いかかってくる。

「私の攻撃から、逃げられると思うな」

「なら、攻めるまでだ」

メモリーはそう言うと、多少の傷を覚悟で一気に間合いを詰めていく。

魔力で実体化している彼は魔法、物理攻撃のどちらを受けても『死ぬ』ということはない。

ただし、損傷を継続的に受け続ける。

もしくは、一気に多大な損傷を受ければ実体化を維持できずに霧散してしまう。

通常、実体化に使用した魔力は解除した際に戻ってくる。

実体化中のメモリーが僕から魔力供給を受けているのと同様に、メモリーの魔力を僕が使用することも可能だ。

これは利点のように思えるが、弱点でもある。

霧散するほどの損傷をメモリーが受けた場合、彼を実体化させるために使用した魔力を丸々失うことになるからだ。

槍系統魔法、螺旋槍、身体強化、身体属性強化、魔力付与、等々。

色々な魔法を扱える中でも、メモリー実体化は群を抜いて魔力消費が大きい。

連発すれば、魔力量の多い僕でも魔力切れを起こす危険性がある。

圧倒的な格上に支援魔力体でメモリーを呼び出すのは、下手すれば自滅に繋がるだろう。

当然、メモリーもその点を十分に理解した上で鳥マスクの少女との間合いを詰めている。

彼女の攻撃では、そこまでの損傷にはならないと判断したのだろう。

猛攻を掻い潜り、彼女のすぐ目の前まで迫ったメモリーの右腕に赤く揺らめく炎が灯った。

「これなら、どうだ。灼熱魔槍拳」

「お前の考えていることなんて、全部お見通しなんだよ」

彼女は予め動きがわかっていたように寸前で躱し、腰の帯剣を抜剣し鋭い斬撃で繰り出す。

次の瞬間、メモリーの右腕が切られて霧散した。

「な……⁉」

目を丸くするメモリーの胸を、彼女は剣で貫いた。

「お前は魔力らしいから、この程度で死にはしないだろう。でも、さっきの右腕を見る限り、維持にも限界があるとみた。なら、これでどうだ」

そう告げた瞬間、彼女の持つ剣から雷撃が迸り、メモリーが苦悶の表情を浮かべた。

どうやら激しい電流が魔力体を維持するための魔力そのものにも影響を与えているらしく、メモリーは身動きが取れないようだ。

加えて雷撃による持続的な損傷の勢いが凄いから、このままだと僕からの魔力供給でも再生が追いつかず、魔力体を維持できない。

何とか援護したいけど、メモリーと対峙していても彼女が操る『矢』による追尾攻撃の激しさは変わらない。

むしろ、メモリーの動きが止まった分、僕を襲ってくる矢の数が増えている状況だ。

止むを得ない、そう判断した僕は『火槍三式』を発動。

自身の周囲に火槍を一六槍生成して、一気に解き放った。

火槍三式は、通常の火槍と変わらない威力を維持しつつ、標的を視界に捉えていなくても弐式同等の追尾性能を持っている魔法だ。

当然、消費魔力量は今までの槍系に比べて格段に増えている。

多少威力は抑えているが、飛んでくる矢を飲み込みながら攻撃するぐらいの火力は込めた。

「く……⁉ 小賢しい真似をする」

矢が火槍に焼かれて無効化される光景を見た彼女は、すぐにメモリーから剣を引き抜いて空へ飛び上がった。

「良い判断だけど、こっちも追尾するんでね」

火槍は急上昇して追いかける。

でも、彼女は両手で雷撃弾を次々と生成し、火槍にぶつけてあっという間に相殺してしまう。

爆音が地上に降り注ぎ、空には黒い爆煙が漂った。

威力を抑えていたとはいえ、火槍を相殺できる威力の雷撃弾を放つなんてこと、そんじょそこらの傭兵や冒険者くずれにできることじゃない。

「……見かけも怪しさ満点だけど、君の背後関係がとても気になるね」

「ふん、自分の姿を鏡で見てから言うんだな。今のお前に言われたくはない」

「あ、確かに。それもそうだね」

変装していたことを忘れていた僕は、指摘に苦笑しながら頬を掻いた。

するとその時、「おい。こっちは終わったぜ」と空から綺麗ながら棘のある声が響く。

ハッとして見上げれば、そこには対峙していた彼女同様、頭巾と鳥の嘴を模したマスクで顔を隠した鳥人族が飛んでいた。

だけどよくよく見れば、口元部分に少し穴が空いているし、長い横髪が左右から出ている。

しかし、驚くべきことは、細い片腕だけで満身創痍のガリエルを持ち上げていることだ。

声と細めの体格から察するに、新たに現れたこの鳥人族も女の子の可能性が高い。

少し、探ってみるか。

「そいつを、どこへ連れて行くつもりだい」

「あぁ? んなこと、言う必要ねぇだろ」

「つれないね。でも、簡単に僕達から逃げられると思わないことだね」

やっぱり、彼を何処かへ連れて行くつもりらしい。

会話をしている間に、腕が再生したメモリーが僕の横にやってきた。

「ごめん。油断した」

「良かった。もう大丈夫みたいだね」

そう答えると、僕は空にいる二人の鳥人族に視線を向ける。

「これで、二対二だ」

「は、笑わせるぜ。魔力体だかなんだか知らねぇが、そんな奴がいたところで、あたし達に敵うわけねぇだろ」

口調の悪い鳥人族はそう言うと、ガリエルを仲間と思われる少女に向かって投げた。

「ぐぁ……⁉」

「……無駄に重い奴だ」

渡された側の彼女は、ガリエルの片足を持ってぶらさげるように受け取った。

扱いが雑だ。

そして、口調の悪い鳥人族が空気を思いっきり吸い込み始める。

この期に及んで何をするつもりだろうか。

僕とメモリーが身構えたその時、鳥人族の口元が不敵に歪む。

「特別に聞かせてやるぜ。あたしの美声をさ」

「美声……?」

訝しんだ次の瞬間、雷撃を伴った暴風による衝撃と耳をつんざく高音が正面から襲いかかってきた。

「な……⁉」

すぐに魔障壁を球体状に展開するが間に合わず、僕とメモリーは暴風と衝撃波によってその場から吹き飛ばされてしまった。

その上、魔障壁では耳をつんざく高音を防げない。

耳を両手で塞ぎ、何事かと正面を見た時、口調の悪い鳥人族が大声を発しながら口角を上げている姿が目に入ってきた。