軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッド対ガリエル、第二戦

「よく回る減らず口だ。なら、見せてやろう。俺の新しい力を」

魔波が吹き荒れ、ガリエルが六尾の銀狐へと獣化していく。

でも、ラファの銀狐とは違い、奴の周囲にはどす黒い魔力が渦巻いている。

さっき対峙した時、奴の獣化姿が四尾の黒狐だったことを考えれば、傭兵達を魔力原として取り込み、魔力量増強を図ったのは確かだ。

やっぱり、あの翡翠色の丸玉は感じた嫌な気配は間違いじゃなかった。

「まだだ。まだこの程度ではないぞ」

奴が不敵に口元を歪めると、再び周囲に魔波が吹き荒れた。

正面に魔障壁を展開し、何事かと凝視していれば、ガリエルの六尾に黒い魔力がまとわりついていく。

六本の尻尾は、まるで蛇頭のような姿へと変貌すると、赤黒い目を光らせ、大口を開けて睨んできた。

あまりのおぞましい気配と気色悪さに、あれには触りたくない。

いや、何が起きるかわからないから絶対に触っちゃダメだと、寒気を感じて鳥肌が立った。

「どうやら、この恐ろしさに気付いたようだな。まるで、蛇に睨まれた蛙のようだぞ」

喉を鳴らし、優越感たっぷりにガリエルが笑い始めるが、僕は肩を竦めて笑い返した。

「あれ、知らないのかい。大きい蛙はね、蛇を食べるんだよ。それとも、君は小さい蛙しか相手にしない臆病者なのかな」

「……⁉ 貴様。その口、二度と開かぬようにしてくれる」

青筋を走らせたガリエルはこちらに向かって跳躍し、その途中で黒い魔力を使って転がっていた『剣身の広いバスターソード』をたぐり寄せた。

「塵も残さず消え失せろ」

大剣を肩に背負ったガリエルは、跳躍の勢いそのままに力一杯振り下ろす。

対する僕はバク宙して身を翻し、距離を取りながら斬撃を避けた。

魔障壁を張れば防げなくはないけど、奴の尻尾が変貌した六頭の蛇がどんな動きをするのかわからなかったからだ。

「逃がさん。やれ」

ガリエルがこちらを凄んで叫ぶと、六頭の蛇が息を吐くような声で咆吼し、次々と大口を開けて襲い掛かってきた。

予想通り、あの蛇頭は飾りではなかったらしいが、長く大きい体を生かして噛みつこうとするだけで、動きは単調だ。

蛇行して襲いかかってくるのが少し鬱陶しいけど、カーティスの繰り出す『魔布術』と比べれば大したことはない。

「こんな攻撃で、僕を捕らえられるとは思わないことだね」

躱しながら吐き捨てると、僕は左手で『火槍・弐式六槍』を発動し、蛇の六頭に射ち放った。

しかし、蛇頭達は目を細めて動きを止めると、大口を開けて火槍を飲み込んだ。

「な……⁉」

僕は目の前で起きたことに目を瞬いた。

蛇頭達はご馳走でも食べたような恍惚な笑みを浮かべて噯気を轟かし、細く先の割れた舌を素早く出し入れする。

まるで、もっとくれと言わんばかりだ。

ちょっと可愛いかもしれない。

いや、そんなことはないか。

「馬鹿め、馬鹿め、馬鹿め、馬鹿めが。貴様も今の魔法同様、俺の糧としてやるわ」

ガリエルは勝ち誇ったような高笑いを響かせ、蛇頭達の攻撃を再開させる。

僕は表情に出さないよう、『やっぱり』とほくそ笑んでいだ。

黒い魔力が吸収していた以上、あの蛇頭達も同じことをしてくる可能性は考えていた。

火槍を飲み込まれて驚いたのは、考えが当たっていたからに他ならない。

加えて言うなら、『俺の糧』という言葉も重要な情報だ。

『傭兵達を魔力源として吸収した』という仮説が、ほぼ間違いないという言質が取れたことになる。

蛇頭達の連撃を避けて後退していくなか、そろそろかなと思ったその直後、蛇頭達の動きが少し鈍くなった。

すると、仁王立ちしていたガリエルが眉を少し動かし、こちらへ向かって動き出す。

なるほど、蛇頭達の射程距離はこれぐらいか。

回避に徹して後退を続けていたのは、蛇頭達の射程範囲と動きを見極めることが目的だ。

そして、この情報を元に今度は攻撃に転じるべく、僕は土の属性魔法で地面の土から『大岩』を生み出し、樹の属性魔法で丈夫な樹の蔓を編み込み、あっという間に大岩を包み込む。

「貴様、一体何の真似だ」

「決まっているだろ。今度はこっちの攻撃さ」

僕は先端に大岩が付いている蔓を両手に持ち、身体強化・烈火を発動。

鎖鎌の分銅を回すように大岩を回し出す。

「お前ご自慢の蛇頭は、魔力生成された魔法は吸収できた。だけど、『操質魔法』で生み出した物質のある攻撃なら、果たしてどうかな」

ガリエルと傭兵達を拘束する際に僕が魔法で使用した『蔓』が、一度黒い魔力に飲み込まれている。

でも、傭兵達を取り込んで奴が今の姿になった時、その蔓の破片がガリエルの足下に落ちていたのだ。

樹の属性魔法と土の属性魔法は『操質魔法』と呼ばれ、『術者が魔力で現存する物を操り変質』させて扱うものだ。

僕の想像通りなら『黒い魔力』が養分として吸収できるのは、魔力で生成されたものと魔力源となる生物のみ。

まぁ、対象となる生物の範囲は現状不明だけど、少なからず、この攻撃は吸収される可能性は低いはず。

蔓が切れないように魔力付与を施し、大岩を操って一体の蛇頭目掛けて勢いよくぶつけると、蛇頭が爆散して弾け飛ぶ。

どうやら、僕の仮説はある程度当たったようだ。

「どうだ。もう、その攻撃は通用しないぞ」

「ぐ……⁉」

悔しげに顔を顰めたガリエルだが、すぐに黒い魔力が体の胸元から溢れ出て、潰れた蛇頭が復活した。

「一つ潰れたぐらいがなんだ。いくらでも再生できるわ」

「そうかい。なら、何処までやれるのか。試してみようじゃないか」

言うが早いか、僕は両手に持つ蔓で大岩を振りまわし、蛇頭を一気に二頭潰す。

ガリエルが舌打ちをし、残った四頭がこちらへ差し向ける。

僕がほくそ笑んで飛び退くと、蛇頭達の動きが途端に鈍くなる。

すかさず大岩でその四頭を潰すと、ガリエルが目を見開いた。

「な、なんだ。何が起きたというのだ⁉」

「所詮、お前の力は付け焼き刃なんだ。自分の力を全く理解していないのさ」

僕が振り回す大岩の射程距離は、二〇メートル以上はある。

一方、蛇頭の有効射程範囲は約一五メートルだ。

その有効範囲を超えると、蛇頭は途端に動きが鈍くなる性質があるらしい。

奴もそれは何となく感じているはず。

しかし、急に得た力、それも理解の範疇を超えた力だ。

使いこなせていないどころか、翻弄されていることにガリエル本人が気付いていない。

蛇頭が再生するまでの隙を突き、大岩を頭上目掛けて振り下ろすと、ガリエルは大剣の広い剣身で受け止めた。

その衝撃で、奴の足下の大地に亀裂が入る。

「ほら、やっぱり。その剣、盾じゃないか」

僕はそう告げるが、ガリエルに余裕はないらしく、返事はなかった。