軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

カーティスの実力

「どうした、お前達。もう終わりか?」

全身に黒い魔力を纏ったカーティスは、そう言うと彼自身の手で魔力付与を行った布を鞭のようにしならせ、不敵に笑った。

なお、彼の周りには獣化した分隊長の子達が息も絶え絶えとなり、揃いも揃って片膝を突いている。

やがて、獣化により白い毛に覆われたオヴェリアがゆっくり立ち上がり、怨めしそう彼を見据えた。

「く、くそ……。忌々しい布とマスターエルフだぜ」

彼女の言葉に同意するように、分隊長の子達はカーティスを睨みながらそれぞれに立ち上がっていく。

その姿を見たカーティスは、「うむ。その意気や良し」と満足気に頷いている。

最初から一部始終を見ていた僕は、思わず唸った。

「……さすがアスナの祖父と言うべきか。とんでもない強さだね」

「はい。あれ程の実力者となると、帝国内でもライナー様を含めても少数かと存じます」

「カーティス様は家督をオルトロス様に譲りましたが、その武勇だけは未だにレナルーテで随一である。頭目がそう申しておりましたが、これ程までとは……私も驚きました」

ディアナが畏まって会釈すると、次いでカペラが補足する。

そして、アスナが「はぁ……」ため息を吐いて首を横に振った。

「あんなに活き活きした祖父上を見るのは久しぶりです。余程、楽しんでいるのでしょう」

「そうですね。カーティスはバルディアに来たこと、きっと大変喜んでいると思います」

ファラがそう言って笑みを溢す中、シュタインとレイモンドに目をやった。

すると、二人は揃って肩を竦めて首を横に振っている。

どうやらアスナ同様、呆れているようだ。

皆の表情を見回すと、カーティスと第二騎士団の子達に視線を戻した。

そして、今までの一部始終を思い返し始める。

第二騎士団の分隊長達の自己紹介が終わると、オヴェリアを皮切りにしてカーティスの実力を確かめたいという声が上がった。

これに対して、カーティスは自身の実力を皆に見せる良い機会であり、渡りに船だとむしろ喜んだ。

さすが、アスナの祖父である。

手合わせの形式は、一対一の実戦に近い模擬戦でカペラとディアナが勝敗の審判を行う。

身体強化、獣化、魔力付与、魔障壁、木剣などの武具使用も認められた。

その後、分隊長の子達で一斉にじゃんけんをしてもらい勝ち残った数名。

馬人族のゲディング、牛人族のトルーバ、猿人族のスキャラ、鳥人族のサリア。

以上の四名がカーティスと対峙することになる。

「じゃあ、カーティスには木刀を用意しようか」

「いえいえ」

彼は首を軽く横に振ると、服の内側から何の変哲もない長めの布を取り出した。

「まずは、これで十分ですな」

「……それが武具になるの? あんまり、あの子達を舐めない方が良いと思うけど」

しかし、心配をよそに彼はニヤリと笑った。

「なるほど。この『術』は、アスナより聞き及んでおりませんでしたか。では、これも一つの楽しみになりましょう」

「た、楽しみ?」

意図が分らず首を傾げていると、カーティスは意気揚々と僕達から少し離れた場所に移動する。

そして、じゃんけんで勝った四人の子達を見据えた。

「さぁ、お前達の力がどれほどのものか……今後の為にも見せてもらうぞ」

その声が響くと、彼を中心に辺りに凄まじい魔力……というよりも闘気のようなものが放たれて、空気が張り詰めた。

これは、父上が僕に施す胆力訓練にとても良く似ている。

分隊長の子達が普段行う訓練では、ここまでの重圧感はないだろう。

大丈夫かな? 少し不安になり彼等の様子を窺うと、獣人族の子達は誰もがカーティスから目を背けずに武者震いに震えているようだ。

それから程なくして、鳥人族のサリアが自身の身長と同じぐらいの木槍を持って、カーティスの前に進み出た。

「まずは、私です」

「うむ。確か、サリアだったな。良かろう、何処からでもかかって来い!」

その時、見守っていた彼女の姉達の声援が響いた。

「最初から本気でやっちゃえ、サリア!」

「……うん。最初が最高の見せ場」

「バルディアに来て身に着けた力。この場で披露してください!」

アリアに続き、エリアとシリアの声が轟くと、サリアは静かに頷いた。

そして、彼女は目の前にいるカーティスを鋭い目つきで見据える。

「貴方が私達を見るように、私達も貴方を見つめている。だからこそ、最初から全力で挑ませてもらいます。はぁああああ!」

サリアが声を荒らげると、カーティスが先程放った魔力に負けず劣らずの魔波が辺りに巻き起こる。

それから間もなく、彼女の獣化が始まった。

全身が羽毛に覆われていき、心なしか背中の羽が大きくなり、尾羽が生えていく。

同時にサリアの口元にも変化が現れ、可愛らしいクチバシとなった。

その姿は、まさに『鳥人』と言えるだろう。

「ほほう、これはまた可愛らしい小鳥よ」

カーティスは、彼女の変化に目を細めている。

鳥人族のアリア達が獣化を扱えるようになったのは、バルディアで訓練を初めて少し経ってからのことだ。

本人達は初めて獣化した時、羽毛に覆われるだけでなく口元に現れた変化に戸惑っていたけどね。

でも、とても可愛らしい容姿であることから僕やファラ、メル達を始めとするバルディア家の皆にアリア達の獣化した姿は大好評となる。

結果、アリア達が自分達の獣化した姿に自信を持ち、嬉しそうにはにかんでいた様子は、とても微笑ましい光景だった。

ちなみに、獣化は言うまでもなく魔力消費が激しいから、普段は滅多に行う事はない。

だけど、メルやメイドの一部の子達が、アリア達の獣化した姿を見たいとたまにお願いしているそうだ。

サリアの獣化が落ち着くと、彼女はカーティスを再び見据える。

「可愛らしい小鳥と思って油断すると、痛い目みますよ。マスターエルフ!」

「ふふ、問答無用。かかって来い」

言うや否や、サリアは目にも止まらぬ速さで彼に向かって正面から飛び込んだ。