作品タイトル不明
勧誘
ディアナの平手打ちによって、シュタインとレイモンドは来賓室の壁際で折り重なるように倒れ「うーん」と二人揃って魘されているようだ。
一連のやり取りに、この場にいる皆の目は点になっていた。
「あー……。ディアナ、少しやり過ぎじゃない?」
「いえ。このような方々は、身に染みる痛みを経験しなければ、自らの過ちには中々気付けないものでございます」
首を横に軽く振ってから彼女がそう言うと、カーティスが豪快に笑い出した。
「はは、良い良い。ディアナ殿の言う通りだ。この二人には、良い薬になったであろう」
すると、彼は二人の傍に近寄り「ふん!」と活を入れた。
「ぐぅ……⁉」
「がは……⁉」
彼等は同時に呻き声を発すると、額に手を添えて首を横に振っている。
その様子に、カーティスが呆れ顔を浮かべた。
「全く。この機に自分達の軽率な行いを改めて振り返る事だ。
そもそも、レナルーテでの一件。お前達が真に理解して反省していれば、このような事は起きておらんのだ」
「……面目次第もございません」
流石に反省したらしい。
シュタインとレイモンドは打たれた頬を手で擦りながら項垂れている。
僕はあえて咳払いをすると、二人の前に歩み寄った。
「約束通り、これまでのことは手打ちにしてお互いに水に流しましょう。それに、きっとお二人の力も必要になると思うんです。どうか、お力を貸して頂けませんか?」
手を差し出すと、二人は顔を見合せてからゆっくり頷いた。
そして、僕の手を取りながら立ち上がると、その場で一礼する。
「畏まりました。レナルーテの件、改めて謝罪致します。申し訳ありませんでした」
「申し訳ありませんでした」
「いえいえ、もう過ぎたことです。それに、先程もお伝えした通りこの件はもう水に流しました。改めて、よろしくお願いします」
目を細めて微笑むと、二人は照れくさそうに咳払いをする。
「承知しました。我等でお力になれることがあれば、何なりとお申し付けください」
「うん。じゃあ、改めて本題に移ろうか。皆、そこに掛けて」
ソファーに座るよう促すと、程なくして皆が机を囲むように席に着く。
その際、ディアナがさりげなく濡れタオルをシュタインとレイモンドに渡していた。
少し気になるのは、彼女がその時、二人に向かって何か小声で伝えていたことかな。
なお、座っている位置は、カーティスの両隣にシュタインとレイモンド。
そして、机を挟んだ正面に僕とファラが腰掛けている。
ディアナとアスナは壁際で控えている状態だ。
場の空気が落ち着いたところで、深呼吸してから口火を切る。
「改めて、カーティス。それに、シュタインさんとレイモンドさん。バルディアに来てくれてありがとう」
すると、シュタインがすぐに反応する。
「リッド殿。我ら兄弟のことは祖父上と同様、呼び捨てで構いませんよ」
「わかった。シュタイン、レイモンド」
そう言って頷くと、改めて正面に座るカーティスを見据えた。
「親書に記載してた通り、カーティスには僕が率いる第二騎士団の指揮官として管理を手伝ってほしいんです」
「えぇ。確かにそのような旨が書いてありましたな。しかし、詳細についてはバルディアにてということでした故、我らもこうして訪れた次第というわけですが……何が起きたのですかな?」
探るような彼の問い掛けに、僕はバルディアでここ最近起きた襲撃事件について説明を始めた。