軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

敵か味方か2

リーファは目を細めながら口元を緩めると、アーモンドの問い掛けに答え始める。

「私なら……バルディアにいる狐人族を拉致する為にバルディア領内、工房の位置、出入りする人々。それらを予め念入りに下調べを行い、行動を起こすわね」

自信満々に語る彼女の様子は、まるで全てを知っているかのような印象を受ける。

思わずリーファを訝しんで見据えるが、彼女は意に介さない。

むしろ、楽しそうだ。

「そして、工房を襲撃した後は、確実に情報を持って帰るために部隊を分けるわ。でも、拉致した子達を散り散りになった部隊……少人数でそれぞれ運ぶなんてことはしたくないわね。時間と手間がかかるから効率良く移動する為、貴方の言う通り国境を超える前にバルディア領内で落ち合うでしょうねぇ」

リーファはこちらを見てニコリと微笑んだ。

彼女の言動に嫌な印象を受けつつも、あまり表に出さないよう相槌を打つ。

「リーファさんもそう思うんですね。しかし、問題は彼等が落ち合う場所がどこかということです。貴女なら……何処にしますか?」

「そうねぇ……」

リーファは口元に手を当てて少し思案すると、ゆっくりと右手の人差し指で地図のとある場所を指し示した。

そこは狐人族、バルスト、バルディアの国境がそれぞれ重なり合う場所から少し南にある何もない位置である。

「私ならここにするわ。地図には載っていないけれど、この場所の近くには商人達が休憩したり、取引をするのに使う秘密裏に建てられた小屋が何カ所かあるの。そこで、拉致した子達を偽装した商会の馬車に乗せれば怪しまれずにズベーラとバルスト……どちらの国境を超えることもできるわ」

「な……⁉」

そんな情報は聞いたことない。

しかし、すぐにディアナが補足するように呟いた。

「……確かに、その辺りには商人達が集う事が多い場所です。リーファ殿の仰る通り、数年前に騎士団の巡回でも小屋が建てられているの見つけたことはございます」

「その時、父上はなんて?」

「当時のライナー様は、あまり規制をかけても商人達の反発と不満を買うから注意と警告を行い、度を過ぎない限りはある程度黙認せよと仰せでした」

「なるほど……ね」

騎士団が数年前に発見した時は、まだバルディアはここまで発展していなかった。

領地を発展させる為に、当時は黙認した父上の考えは理解できる。

問題は怪しい笑みを浮かべているリーファが出したこの意見をどう考えるかだ。

その時、無線機から「リッド様、至急応答願います」とサルビアの声が聞こえてくる。

「ごめん。少し席を外すね」と部屋の外に一旦出ると通信魔法を発動した。

「サルビア。どうしたの? 何か新しい情報が入ったの?」

「はい。航空隊、第一飛行小隊のアリアから襲撃犯らしき相手を発見。現在、気取られないよう出来る限り高高度で追尾中とのことです」

「……⁉ そうか、ありがとう。ちなみに、襲撃犯の向かっている方角はバルディア、ズベーラ、バルストの国境が重なっている地点より少し南に位置しているかな?」

「えっと、ちょっと待ってください……あ、そうです! どうしてわかったんですか?」

「こっちでも少し進展があってね。アリア達には、追尾と報告を継続するようにお願い。それと、襲撃犯に近いのはどの分隊になるかな?」

「ええっと……第六分隊です」

第六分隊は狐人族のラガードが隊長で、副隊長をノワールが受け持っている分隊だ。

「わかった。ラガードには僕達が到着するまで、絶対に手を出さないように伝えてほしい。こっちも木炭車が着き次第、すぐに向かうから」

「畏まりました。では、そのように申し伝えます」

サルビアとの通信が終わり、一息つくとまた無線機から音声が発する。

「こちら、セルビアです。リッド様、応答願います」

「どうしたの、セルビア?」

彼女は、先程まで通信をしていたサルビアの妹で三女の末っ子だ。

すぐに通信発動して応答すると、再び彼女の声が無線機から発せられる。

「私も搭乗している木炭車が、もうすぐリッド様に指定された宿に到着いたします」

「そっか……ってあれ、セルビアも搭乗しているの?」

「はい。通信魔法は私達姉妹が一番上手だからと、今回の任務に抜擢されました。よろしくお願いします!」

「わかった。じゃあ、僕達も宿の外で待機するよ」

「畏まりました!」

セルビアとの通信が終わり部屋の中に戻ると、アーモンド達に告げた。

「いま、こっちでも新しい情報がきてね。おそらく、さっきリーファさんが言ったことが当たりだと思う」

リーファに視線を向けると、彼女は怪し気に目を細めた。

「そう……ふふ、お役に立てて良かったわ」

電界を密かにずっと発動しているけれど、彼女から伝わってくる感情は『明るく楽しんでいる』ようなものであり敵意はないようだ。

故にリーファという女性は何を考えているのかよくわからない。

すると、アーモンドがおもむろに尋ねてきた。

「それで、リッド。君はこれからどうするんだい?」

問い掛けに、僕は強い眼差しを返した。

「勿論、僕もこれから現地に向かうつもりだよ。その為に、手配している乗り物もあるからね」

「そうか……」

相槌を打った彼は、意を決した顔つきを浮かべる。

「リッド、お願いがある。僕も一緒に行かせてくれないか。こうして、君と出会えたのも何かの縁だ。最後まで手伝わせてほしいんだ」

「アーモンド……」

電界を通じて彼から伝わってくる感情は、強く暖かいもので敵意はない。

アーモンドと出会わなければ、襲撃犯達の動向がここまで掴めなかっただろう。

リーファのことは気になるけれど、彼のことは信じてもいいのかもれない。

それに、彼にはまだ色々と聞いてみたいこともある。

「わかった。こちらからもお願いするよ」

「……! ありがとう」

彼が嬉しそうに会釈すると、彼の傍に控えていたリックが一歩前に出て頭を下げた。

「恐れながら、アーモンド様の護衛として私も同行させて頂く存じますがよろしいでしょうか?」

「わかりました。良いですよ」と答えると、リーファに視線を向ける。

「リーファさん。貴女はどうされますか?」

「私は……そうねぇ。面白そうだけれど、リドリーと宿にいるわ。バルディアの町が楽しくて、少しはしゃぎすぎたみたいね。ふふ」

彼女はそう言うと、奥の椅子で縮こまっていたリドリーに怪しく笑いかける。

すると、その視線に気付いたリドリーの耳と尻尾がゾワっと逆立った。

その時、ディアナから「リッド様、少しよろしいですか?」と耳打ちされ、一旦部屋を二人だけで退室する。

「リッド様、恐れながら彼等を安易に信用するのは危険と存じます。彼等が襲撃犯の一味であり、我らを罠にかけようとしている可能性だってございます」

彼女の忠告に、ニコリと頷いた。

「勿論、わかってるよ。でも、リーファはともかく、アーモンドのことは少し信じてみても良いと思うんだ。それに、助言や地図のことを考えると彼等とこのまま別れる方がむしろ危険だと思う。かと言って、彼等を拘束するわけにもいかない。なら、傍にいてもらって監視した方が良いと思うんだ」

「しかし……」とディアナは何か言おうとするが、僕の目を見つめた後「はぁ……」とため息を吐いた。

そして、やれやれと首を横に振る。

「畏まりました。ですが、この件はすべて包み隠さずライナー様にご報告するようお願いします」

「う、うん。それは当然だね……」

直接報告した時の父上の表情を想像すると少し怖いけれど、覚悟を決めるしかない。

そう思った時、無線から「リッド様、セルビアです。もうすぐ到着します」と音声が流れた。

僕は通信魔法を発動して「わかった。すぐに宿を出るよ」と返事を行い部屋の中に戻った。

室内ではリーファが先程まで座っていた場所に戻っており、再びリドリーを抱きしめてもみくしゃにしている。

僕はアーモンドとリックに視線を向けた。

「いま連絡があって、迎えがすぐに来るから宿を出よう」

「わかった」

彼は頷くと、リーファに頭を撫でられて人形のようになっているリドリーに視線を向けて優しく微笑んだ。

「じゃあ、リドリー。姉上とお留守番していてね」

「うぅぅ……わかったぁ……」

リドリーが半べそをかきながら答えるが、リーファは手を止めずに目を細めた。

「あらあら。そんなに嫌がらなくても良いじゃない。貴女、とっても可愛いんだもの。うふふ」

アーモンドがその答えに苦笑しつつ、僕達と一緒に部屋を出ようとしたその時、「あ、そうそう」とリーファが後ろ髪を引くように呟いた。

「そういえば、さっき言った偽装する馬車のことだけど、私ならバルディアで一番信用されている商会の馬車に偽装するわ」

「バルディアで一番信用されている商会……」

その言葉を復唱してハッとすると、リーファはリドリーをもみくしゃにしながらこちらを見据えた。

「そう……クリスティ商会よ」