軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ニキークとの再会

「よぉ、坊ちゃん。久しぶりだな」

「ニキークさん、ご無沙汰しております」

父上とバーンズ公爵との会談が終わった後、ダークエルフのオルトロスの案内でカペラやビジーカ、クリスと共にニキークがいる研究所の建設現場にやって来ている。

目的は勿論、エリアス王と前回行った会談で決まり、現在建設中である『研究所』の視察だ。

挨拶を返すと、彼は楽しそうに話を続ける。

「それにしても、驚いたぜ。まさか、わしが坊ちゃんお抱えで国とやり取りするようになるなんてよ。役人達が来た時には、何事かと思ったぜ」

「あはは、驚かせてすみませんでした。だけど、ニキークさんの研究が認められたということですよ」

僕の答えを聞いたニキークは、嬉しそうに照れ笑いを浮かべている。

現地協力者であり、『ルーテ草』の研究や『月光草』の栽培などをしてもらっている彼には、レナルーテに建設される研究所を任せる予定だ。

今後のことも考え、ニキークの所属はあくまでも『バルディア家』となっている。

レナルーテの所属だと、影響力の強い帝国貴族に情報開示を求められると断れないからだ。

だけど彼と研究所の所属が『バルディア家』なら何か言われても、レナルーテは表向きの理由としてバルディア家の研究支援に土地を貸しているだけという言い訳が出来るからね。

僕と話している中、ニキークが僕の後ろにいるビジーカが気になったらしく視線を向けた。

「ところで坊ちゃん。その後ろにいる男は何者だい」

「ああ、ごめん。紹介がまだだったね。彼は『ビジーカ』と言って、バルディア家で『魔力枯渇症』を含めて、様々な病気を研究している医師なんだ」

そう言うと、ビジーカが笑みを浮かべてニキークの前に一歩出て手を差し出した。

「どうも、ご紹介頂きました『ビジーカ・ブックデン』と申します。ニキーク殿が書かれた『ルーテ草と魔力枯渇症』に関する論文は非常に興味深いものでした。是非とも、今後は一緒に研究をしてきたい所存です」

「お、おおう。わしはニキークだ、よろしくな。あの内容を理解するなんてあんたも中々だな。だが、レナルーテには『魔力枯渇症』の患者がおらんぞ。研究するのであれば、バルディア家に居た方が良いんじゃないか?」

ビジーカと握手と挨拶を交わしながら、ニキークは問い掛けるように僕に視線を向ける。

彼の言う事はもっともだろう。

だけど、その問題点は解決済みなので、僕は笑みを浮かべて答えた。

「その点は大丈夫だよ、ニキークさん。研究所……というより施設がある程度完成したら『魔力枯渇症』を発症している狼人族の男の子をこちらにビジーカと一緒に移送する予定だからさ」

「なんと、本当か!」

ニキークは驚きを隠せないようで、驚愕の表情を浮かべているがどこか嬉しそうである。

そんな彼の感情を理解したのか、ビジーカが笑みを浮かべた。

「ええ、その男の子は非常に良い実……ではなく協力者です。バルディア家に仕えております故、すべては覚悟の上で治験に協力、挑んでくれていますよ」

「ほほう……それは、わしも会うのが楽しみだ」

「そうでしょう、そうでしょう……ふふふ」

ニキークとビジーカは何やら通じるところがあるらしく、急に彼らだけの世界を構築しており怪しく笑いあっている。

その姿は傍から見ると何やらどす黒い何かを感じさせるものでもあり、彼ら以外は僕を含め思わず顔を引きつらせていた。

その時、近くに控えていたオルトロスが咳払いをして皆の注目を集める。

「えーでは、改めて研究所の敷地や施設などのご説明をさせて頂きます」

「う、うん、よろしくお願いします」

その後、僕達はオルトロスの案内に従って、研究所の建設現場を見て回った。

施設の設計については、ニキークの意見を参考にしながら進めている状況でありそれなりの規模の施設になる予定とのこと。

建設現場をある程度見て回る中、クリスがスッと挙手をする。

彼女の挙手を見て、オルトロスが首を傾げた。

「クリス殿、何か気になる点でもありましたかな」

「はい。恐れながら荷受けをする場所はどの程度の規模を考えておいででしょうか」

「荷受け……ですか。それは、普通に馬車が数台程度……」

そこまで言うと、オルトロスはしまったという様子でハッとする。

クリスは笑みを浮かべて丁寧に話しを続けた。

「恐れながら、バルディア領向けの荷物はクリスティ商会が行うことになります。その時は馬車ではなく『木炭車』となるでしょう。従いまして、荷受け場所もある程度の大きめの規模がよろしいかと存じます」

「そうだね。今後『木炭車』の台数も少しずつ増えていくだろうから、将来的なことも考えて今から規模は大きめにして欲しいかな。オルトロスさん、お願いしても問題ないですか」

彼女の言葉に僕が同意するように話を続けると、彼はスッと丁寧に会釈した。

「承知しました。こちらこそ、気付けずに申し訳ない。その点、すぐに手配するように致します」

「いえいえ、こちらこそ無理を言って申し訳ないです」

僕の答えを聞くと、心なしかオルトロスは安堵したような表情を浮かべた。

こんな感じで、研究所の建設現場や月光草の栽培施設などの視察を行う。

栽培施設に行った際には、ビジーカとクリスがかなりはしゃいでいたのが印象的だった。

ビジーカはニキークとかなり意気投合したようで、二人はずっと立ち話をしている。

オルトロスは先程の荷受けの指摘の件から、クリスと良く話しているようだ。

しかし、彼と話している彼女の表情をよく見ると、目が獲物を見つけたかのように怪しい光を放っている気がする。

まぁ、オルトロスはレナルーテの中核にいる華族だろうから、クリスの嗅覚は間違っていないとは思うけどね。

建設現場の視察が終わると、ビジーカとニキークから情報共有をもっとしたいという申し出を受けたので、これを了承。

ビジーカには別途に護衛を付けることになった。

クリスも今後の取引のことで、オルトロスと少し商談をしたいということで彼女にも護衛を用意する。

そして、僕は皆より一足先にカペラと共に戻ることになった。迎賓館に帰り着くと、ザックが出入口で出迎えてくれる。

「リッド様、お帰りなさいませ」

「ただいま、ザックさん。建設現場をオルトロスさんに案内してもらったけど、凄く良い感じだね。完成が楽しみだよ」

笑みを浮かべ明るく答えると、彼は畏まりつつも嬉しそう話を続けた。

「お気に召して頂き、何よりでございます。エリアス陛下もお喜びなると存じます。それはそうと、エルティア様がリッド様と面談をしたいと申しており来賓室でお待ちでございますが如何いたしましょう」

「え……エルティア義母様が? わかった、すぐに行くよ」

昨日のファラに続いて、エルティア義母様までどうしたのだろうか。

僕は何事だろうと思いつつ、彼女の待つ来賓室に足早に向かうのであった。

一方その頃、獣人族の子供達が過ごす宿舎にある医務室では、狼人族のシェリルが魔力枯渇症を患う弟のラストのお見舞いに来ていた。

姉弟楽しく談笑しているなか、突然ラストの背筋に冷たい何かがゾクッと走り、思わず尻尾や耳の毛が逆立ってしまう。

そんな彼の様子を、心配そうにシェリルが尋ねた。

「どうした、ラスト。そんなに毛を逆立てて」

「え、あ、いや。何か急に悪寒を感じて……あはは、多分気のせいだとおもうけどね」

「そうなのか。しかし、油断は禁物だぞ」

心配するシェリルに誤魔化すように答えるラストだが、実はこの感覚に覚えがあった。

それは、ビジーカやサンドラが嬉々として研究を行う時に感じるものと瓜二つだったのである。

だが、この場にはビジーカもサンドラもいない。

ラストの目の前にいるのは、心配顔をしている姉のシェリルだけである。

不安を振り切るように首を横に振ると、笑みを浮かべた。

「あはは、本当に心配しなくても大丈夫だよ。姉さん」

ラストはそう言いながらも、ふとビジーカがレナルーテに行っていること。

そして、ニキークという『魔力枯渇症』を研究しているという人物に会うのが楽しみだと、彼が話していたことを思い出して心の中で呟いた。

(ふぅ、ビジーカさんもサンドラさんも悪い人じゃないんだけど……ニキークさんはどうか、もう少し普通の人であってほしいかなぁ)

そんな遠い目をしながら何かを考えている様子のラストを見て、姉のシェリルはきょとんとした表情を浮かべているのであった。