軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再び本丸御殿

迎賓館で少し休憩した僕達はその後、本丸御殿に移動。

表書院の広間にて、岳父であるエリアス王が来るのを用意されていた椅子に座り待っている。

今回は父上と僕、メルやメイドのダナエやディアナ。

従者のカペラに加えてクリス、エレン達もおり、バルディア家の面々が勢揃いしているような状況だ。

エリアス王が来るのを待っていると、隣に座って目を輝かせているメルが僕に小声で話しかけてきた。

「にいさま、このおやしきはバルディアとはぜんぜんちがうね」

「そうだね。ここはレナルーテの文化で作られたお屋敷だからね。でも、もうすぐエリアス王が来るからあんまりキョロキョロしちゃだめだよ」

「はーい」

メルは本丸御殿の作りが珍しいようで、目を輝かせている。

僕が優しく注意すると彼女は素直に返事をしながら頷いた。

すると、僕の隣に座っていた父上が「ふふ」と笑う。

何かおかしなことを言っただろうか。思わず僕は父上に視線を向けた。

「……? 父上、どうされました」

「いやなに、お前と初めて此処に来た時もメルと同じ様子だったのでな。そのお前が、注意しているのが少し面白かっただけだ」

厳格な面持ちではあるが優しい雰囲気を出している父上の言葉に、僕はハッとした。

確かに、僕も初めて本丸御殿に来た時、あちこちを見て父上に注意された覚えがある。

「あ……あはは……そ、そうでしたね」

父上の指摘を思わず苦笑しながら誤魔化したその時、レナルーテの兵士の声が響く。

「マグノリア帝国、バルディア領、領主ライナー・バルディア様が登城致しました」

兵士の言葉が発せられると同時に、僕達は頭を下げた。

メルもハッとしてすぐに頭を下げる。

やがて、前からスッと襖が開く音が聞こえた後、威厳のある声が広間に響いた。

「皆、面を上げよ」

言葉通りに、僕達がゆっくりと顔を上げると目の前には厳格な表情をした岳父のエリアス王。

そして、リーゼル王妃と側妃エルティア母様。

ファラとアスナに加えて、レイシスという面々が揃っている。

やがて、エリアス王が僕達を見回すと厳格な表情を崩した。

「本日はよく来てくれた。親書にも記載したが、まさか娘をそちらから迎えに来てくれると思わなんだ。婿殿は……余程に我が娘を気に入ってくれたようだな」

エリアス王は、わざとらしくニヤリと笑みを浮かべて僕に視線を向けた。

その言動に僕は思わず苦笑しながら、ファラに視線を向けて答える。

「勿論、御父様の仰る通りではありますが、ファラ王女には『迎えに来る』と前回の別れ際に約束をしております。その約束を果たしたまでにございます」

「ほう……そうであったか。しかし、口約束を違えず、こうして実行するあたりが婿殿らしいな」

「お褒めに与り光栄でございます」

感心するような表情を浮かべるエリアス王に答えながら僕は再度、頭を下げた。

顔を上げるとエリアス王がメルに視線を向けた後、父上に問い掛ける。

「して、そちらの可愛いお嬢さんが、ライナー殿の御息女かな」

「はい、仰る通りでございます。自己紹介をさせて頂いてもよろしいでしょうか」

「うむ。許そう」

エリアス王の許しを得た父上は、少し顔を綻ばしてメルに「さぁ、練習通りにな」と優しく声を掛けた。

メルは緊張した面持ちをしながら深呼吸をすると、エリアス王を真っすぐに見つめた。

「マグノリア帝国、バルディア領、領主ライナー・バルディアの娘、メルディ・バルディアでございます。この度、兄リッド・バルディアとファラ・レナルーテ王女との『華燭の典』にご招待頂きありがとうございます。また、母である『ナナリー・バルディア』に代わり御礼申し上げます」

メルは母上のような凛とした強さと雰囲気を纏い、普段とは全く違う言動を見せつける。

そして、彼女は自身のドレスの左右の裾を両手で軽く持ち綺麗なカーテシーをエリアス王に行った。

その綺麗な所作と迫力は、普段のメルとはあまりにかけ離れており僕は思わず呆気に取られてしまう。

しかし、呆気に取られたのは僕だけではないらしい。

エリアス王を含めレナルーテ側の面々も、メルの雰囲気が一瞬で変わった事に茫然としているようだ。

しかし間もなく、エリアス王がハッとするとメルを少し見つめた後、父上に視線を移す。

「まさか、ライナー殿のご息女もここまでしっかりとしているとはな。いや、見事な挨拶であった。メルディ・バルディア……しかと、覚えたぞ」

「お褒めの言葉、ありがとうございます」

エリアス王の言葉に父上が答えた後、示し合わせたようにメルと父上の二人はスッと会釈を行った。

その後、椅子に座ったメルは「ふぅ……」と息を吐くが、凛とした表情は崩さない。

恐らく父上の『練習通りにな』という言葉通り、この日に備えてメルは口上の練習をしていたのだろう。

メルの言動に感心しながら、彼女からエリアス王のいる正面に視線を戻した時、ある事に僕は気が付いた。

レイシスが……顔を赤らめてこちらをポーっと見ている。

いや、正確にはメルを見ている気がした。

彼の視線に、僕が何やらとても嫌な予感を覚えたその時、エリアス王の咳払いが部屋に響く。

「では、本題に移ろう。我が娘、ファラ・レナルーテとリッド・バルディア殿で執り行う『華燭の典』は今日より三日後に行う予定だ。準備は諸々出来ているが、婿殿が来てからしかできない確認もあるのでな。婿殿には申し訳ないが明日、明後日は『華燭の典』に向けての確認作業に協力してもらいたい」

「承知しました。私で出来る事は協力させて頂きます」

こうして、僕とファラの『華燭の典』はいよいよ数日後に執り行われるのであった。