軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

会談4

大まかな目的である『特別辺境自由貿易協定』の締結と『商業査証』の概要のまとめ。

クリスとエレンにも途中から会談に参加してもらい様々な目線と意見を出して話を詰めてく。

やがて、補足説明を終えたクリスとエレンの二人は退室。

その後も様々な意見をお互いに出しあった結果、エリアス王、ザック、オルトロスの三名は納得した上で『特別辺境自由貿易協定』と『商業査証』について改めて合意と締結を約束してくれた。

そして、僕と父上は目配せをした後、満を持して机の上に『錠剤』を差し出す。

「これは、恐らくレナルーテとバルディア領の間で最も重要な商品となるでしょう」

「……最も重要な商品。ここにきてまだ隠し玉とはな。それで婿殿、この商品は何かね」

彼らは目の間に出された錠剤に、不思議そうな表情を浮かべている。

そんな彼らに、僕は笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。

「この錠剤は『魔力回復薬』です」

商品名を伝えると、岳父のエリアス王と彼らがギョッとなり顔色が変わる。

その中、ザックが僕に視線を向けた。

「リッド殿。これは、本当に『魔力回復薬』なのですか。もしそうであれば、世界に激震が走ることになります」

さすがのザックも驚きを隠せないようで、懐疑的な面持ちを見せている。

そして、彼を追うようにオルトロスも言葉を発した。

「ザック殿の言う通りです。どの国においても『魔力回復薬』の開発をしようとしている現状をご存じでしょう。その中で、バルディア領において開発を成功させるとはにわかには信じられませんな」

「ザックとオルトロスの言う通りだ。失礼だが、ライナー殿。婿殿の言うことは本当なのか」

エリアス王も、ザックとオルトロス同様に半信半疑の様子で、訝しい視線を父上に向けた。

しかし、父上は会釈をしたのち重く、低い声を響かせる。

「はい。この場において偽りをする必要はありません。息子、リッドの言う言葉はすべて事実です。私自身も把握しておりますこと故、ご安心ください」

「なんと……」

彼らが驚きの表情を浮かべると同時に、僕に視線が集まった。

その時、僕は微笑みながら答える。

「御父上に初めてお会いした時に婚姻後、様々な考えがあると申した通りでございます。しかし、とある事情により、この薬はまだ公にはできません」

「確かに、初めて会った時にそのようなことを申していたな。しかし、公にできないある事情とはなんだね」

エリアス王は、頷いた後に怪訝な表情を浮かべて質問を投げかける。

彼の問い掛けに、僕は頷きながら答えた。

「はい。それではご説明致します」

父上に目配せをした後、僕はエリアス王と彼らに『魔力回復薬』を開発した経緯。

母上の病名と病状と合わせて、現在治療中であること。

そして、レナルーテにある『ルーテ草』が『魔力枯渇症』の治療薬になることを伝えた。

エリアス王と彼らは、僕の説明を驚きつつも厳格な面持ちを崩さずに聞いている。

僕はそのまま、さらに新たな提案を行う。

それは、レナルーテの土地をバルディア領が借りて、魔力回復薬と魔力枯渇症の研究所を設立させることだ。

勿論、研究所を建設する費用はバルディア領が出す予定である。

魔力回復薬の原料の栽培は、レナルーテでしかまだ成功していない。

今後、『魔力回復薬』を大量生産するにしても、レナルーテ側の協力は必要不可欠なのだ。

そして、母上の『魔力枯渇症』における治療薬の原料となる『ルーテ草』においても、原料が手に入るレナルーテで研究を行う事で、より効率を上げることが可能となるだろう。

それに、先程まで行っていた会談において、国境地点からレナルーテの首都までの『道整備』も受注できた。

つまり、近い将来、木炭車による『人の移動』と『物の移送』も迅速に可能となるわけだ。

僕が状況と今後の展望について説明を終えると、オルトロスが難しい表情を浮かべる。

「……リッド殿のお考えが素晴らしいことはわかりました。しかし、我が国に技術を提供……後は我らに任せて頂いても良いのではないでしょうか」

彼の言葉に、僕は首を横に振ると睨むように目を光らせた。

「それはできない相談です。この技術は、私が大切な人とバルディア領を守るために、様々な人と知恵を出し合って得た物です。おいそれと渡すわけにはいきません」

「しかし……」

オルトロスは、『魔力回復薬』と『魔力枯渇症』という可能性を秘めた商材を出されたせいか、少し鼻息が荒いように感じる。

エリアス王やザックも、彼を止める気配はない。

恐らく、僕と父上がどう出るのか様子見をしているのだろう。

僕は、エリアス王とザックにもチラリと視線を送った後、食い下がるオルトロスに向かってハッキリと強い口調で述べた。

「特大の利益を国にもたらす可能性のある技術。それを目の前にしたオルトロス殿のお気持ちも……わからないではありません」

「それでしたら……」

彼が少し安堵したような表情を見せるが、僕は口調を緩めずに言葉を続けた。

「しかし……この技術を貴国が持っている事を帝国の中央貴族が知れば、必ず欲する事でしょう。その時、貴国は断れる立場にはありません。技術はあくまでもバルディア家が保持。表向き、レナルーテはバルディア家に土地を貸しているだけ……という方法が技術の秘密保持。そして、貴国の利益を考えても、一番良いと存じます」

「……」

今までと違う僕の雰囲気と、強い口調に気圧されたのか。

オルトロスは難しい顔のまま黙ってしまった。

しばし、静寂が部屋の中に漂うと、やがてエリアス王が険しい表情のまま「ふぅ」と深く息を吐く。

「……まさか、我が国の『ルーテ草』にそのような効用があるとはな。それに、『魔力回復薬』の原料を我が国の土地を使い栽培する……か。わかった、その件も認めよう」

「……⁉ 陛下、よろしいのですか」

驚きの声を上げたのはオルトロスだ。

彼に視線を向けたエリアス王は言葉を続ける。

「良い。それに、婿殿からの情報が無ければ『ルーテ草』の価値にも我らは気付いておらん。魔力回復薬にしてもそうだ。むしろ、関われるだけ儲けものだろう。それに、婿殿の母上の命にも関わる問題だ。バルディア家を……婿殿を敵に回すような真似はしてはならん。オルトロス、ザック……それで良いな」

「承知しました」

オルトロスとザックは彼の言葉を聞き畏まった様子で頷いた。

僕は一連の流れを見てから、ペコリと頭を下げてからエリアス王に視線を向ける。

「御父上のご配慮に感謝致します」

「よいよい、気にするな。婿殿は娘の夫であり、私の義理の息子でもある。当然のことだ。これからも、何かあれば話を聞こう」

「ありがとうございます」

エリアス王との会話が終わると、僕は満面の笑みを浮かべるのであった。

こうして、レナルーテとの会談は無事に終わりを告げる。

その後、バルディア第二騎士団の子達による魔法の実演と木炭車の仕組みと試乗も行う。

その中で、魔法の『教育課程』について、エリアス王と彼らは特に興味を持った様子だ。

いずれ、留学生としてダークエルフの子供達を受け入れるのも面白いかもしれないな。

そんな事を思いながら、時間が過ぎて行く。

やがて、僕達もバルディアに帰る時刻となり、改めて僕はエリアス王に挨拶を行った。

「御父上、今日は良い会談となったこと、心から御礼申し上げます」

「婿殿、そう硬くならなくて良い。あと、ファラも来たいと言っていたのだが、エルティアから会談に連れて行くべきではないと反対されたのでな」

「……そうだったんですね」

エリアス王の答えに、僕は少しシュンとなる。

実は、今日は久しぶりにファラに会えるかも、という期待があったのだ。

手紙のやりとりもしており、今回の会談についても彼女には伝えていた。

しかし、ファラにも立場があるし、来られなかったのは仕方がない。

彼女に手渡しする予定だったバルディアの紋章が彫られた小さめの木箱を、僕はエリアス王におもむろに差し出した。

「あの、御父上。これを、ファラに渡してもらえませんか」

「わかった、預かろう。念のため、中身を聞いても良いかな」

エリアス王の問い掛けに、僕は少し顔を赤らめて照れ笑いを浮かべた。

「……その、バルディアで開発した『懐中時計』です」

「ほう……それは娘も喜ぶだろう。しかし、次は『私の分』も用意して欲しいものだな」

「あ……⁉ そ、そうですね。気が付かずに申し訳ありません」

僕の笑みを見たエリアス王は、ニヤリと意地の悪い顔を浮かべている。

しかし、僕が慌てた様子を見ると満足そうに笑った。

「はは、冗談だ。ファラには間違いなく渡しておこう。ではな、婿殿」

エリアス王は豪快に笑いながらその場を後にする。

その時、僕の近くに控えていたカペラが、一通の手紙を差し出して呟いた。

「リッド様。恐れ入りますが、こちらの手紙をザック殿に渡してきても良いでしょうか。気になるようでしたら、中身を改めて頂いても構いません」

「え、うん。別に良いけど……一応、中身を見せてもらうね」

彼に差し出された手紙を読ませてもらうが、特に不審な点はない。

内容としては、カペラとエレンが結婚したことが書かれている。

正直、二人の惚気でお腹いっぱいになりそうだ。

しかし、この内容をカペラが書いたのかと思うと彼の意外な一面を見た感じがする。

僕は、呆れ顔をしながら首を横に振ると、手紙をカペラに返した。

「手紙を見せてくれてありがとう。それにしても、カペラって意外と情熱的なんだね」

僕は軽く言ったつもりだったんだけど、彼は考えるように俯いてしまう。

やがて、木炭車の近くで作業をしているエレンを眺めながら彼は、ほくそ笑んだ。

「ふむ……確かに、言われてみればそうかもしれません。結婚を申し込んだのにもかかわらず、エレンさんを見ていると……こう、何と言いますか。そう、独占欲が湧いて来るんです。ふふ……私にもこんな感情があったのだと驚いておりますよ」

「そ、そうなんだ。まぁ、二人が幸せなら良かったよ」

カペラと僕の言葉では、ちょっと意味が違う気がする。

しかし、僕は深くは突っ込まないことにした。

何にせよ、カペラとエレンの二人が幸せならそれで良いと思う。

手紙に関しては、カペラやザックでしかわからない暗号とかあるかも知れないけどね。

その後、僕の許可を得たカペラはザックの元に行き手紙を渡す。

彼ら二人が何やら会話を行った後、ザックが驚愕の表情を浮かべて唖然としている。

その様子を、僕は遠巻きに眺めているのであった。