軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

会談

「……ご想像の通り『アスナ・ランマーク』は私の娘でございます」

会談の場で初めて会ったダークエルフの男性、『オルトロス・ランマーク』。

彼が苦々し気に言った言葉に僕は内心で驚いていた。

しかし、彼の表情から察するに、アスナとオルトロスの関係はあまり良くないのかも知れない。

僕は、驚きつつも、顔に出さないように心がける。

そして、今は触れないでおこうと考え、頷いた。

「そうだったんですね。ファラの専属護衛であるアスナのご家族に会えたこと。大変、嬉しく存じます」

「こちらこそ、直接ご挨拶できたこと。嬉しく存じます」

彼と僕のやりとりを見ていたザックが、ニコリと微笑みながら補足するように呟いた。

「オルトロス殿……いえ、ランマーク家はレナルーテの中でも武家として由緒正しき御家柄でございます。それ故、『アスナ』殿のような『武人』が出たのも当然でございましょう。オルトロス殿は、ランマーク家を守る為、昨今は『文官』として国の為に今は勤めていらっしゃる方でございます」

ザックはにこやかに淡々と言葉を続けたが、オルトロスは苦々しい表情浮かべたままだ。

見る限り、ザックとオルトロスの関係性にも何か裏がありそうな感じだなぁ……と思いながら僕はニコリと微笑んだ。

「へぇ、そうなんですね。今後ともよろしくお願いします」

僕がオルトロスに手を差し出すと、彼もニコリと微笑みながら僕の手を握る……少し痛い程に。

その時、オルトロスの目に嫌な感じを受け、僕はこっそりと魔法の『電界』を使用して彼の気配を探る。

すると、彼から僕に対し抱いている黒い感情はまさに憎悪だ。

しかし、僕は彼に何かした覚えはないんだけどな。

その時、岳父のエリアス王が声を響かせる。

「挨拶はその辺で良いだろう。では、そろそろ会談を始めようか」

「承知しました。御父上」

僕は、オルトロスとの握手を終え、エリアス王の言葉に頷いて改めて会談の席に着く。

エリアス王はザックから封筒を受け取ると、静かに机の上に置いた。

そして、ニヤリと笑みを浮かべる。

「ライナー殿。頂いたこの親書には、婿殿を中心に発明された製品を我が国と有効活用したいとある。特に……『木炭車』なるものは非常に興味深い。早速話を聞かせてもらえるかな」

「承知しました。しかし、『木炭車』を含め利用方法を考えたのは我が息子でございます。故に、リッドに説明をさせたく存じますが……よろしいのでしょうか」

「うむ。では、婿殿にお願いしよう」

父上とエリアス王の会話が終わると、この場にいる皆の視線が一斉に僕に向けられる。

僕は、少し驚く素振りを見せると苦笑しながら頷いた。

「承知しました。それでは僭越ながら、ご説明させて頂きます」

僕は咳払いを行うと、手始めに木炭車の可能性について話始めた。

木炭車は馬車のよりも大きい荷台を牽引することが可能であり、一度の輸送で運べる量を増やすことが可能であること。

そして、動力が『馬』から『木炭を使った内燃機関』となり、馬が必要なくなることで維持コストの削減。

さらに、運転手を二人と燃料さえ用意出来れば持続的な輸送が可能である。

その物量は、レナルーテとバルディア領の発展に大いに貢献できるだろう。

問題があるとすれば『道の整備』と『木炭の補給所』だ。

しかし、『道の整備』はバルディア第二騎士団の部隊を派遣することで解決が可能となる。

木炭に関しても、バルディア領で大量生産が可能な状況があり補給は持続的に可能だ。

ある程度の説明を終えると、エリアス王を含め彼らは表情こそ平静を装っているが、その目には興味と驚きに満ちている。

その中、オルトロスが挙手をした。

「リッド殿。確かに、木炭車の可能性は素晴らしいものだろう。しかし、仮に道が整備できたとして、本当にそれだけの移動速度による輸送が可能になるものでしょうか」

彼は少し僕を挑発するように言葉を述べる。

その様子に、少しだけど父上の眉がピクリと動いた。

僕は、オルトロスの言葉に頷き、ニコリと微笑む。

「はい、オルトロスさんの疑問は当然だと思います。しかし、私達は今日の早朝に、父であるライナーが運転する木炭車でバルディア領の屋敷を出発。そして、皆様よりも早くここに到着しました」

「な……⁉」

オルトロスは、僕達が木炭車で当日の早朝に出発したにもかかわらず、この会談にかなり早い段階で到着していたことを理解すると驚きの表情を浮かべた。

馬車であれば、当日の早朝出発では今回の会談場所となる関所に着くのはまず不可能だ。

しかし、『木炭車』であればそれが可能となるということを実際に示して、実演したということである。

エリアス王はオルトロスの驚きに満ちた表情と僕の笑みを見ると、ニヤリと笑った。

「なるほど……バルディア領とレナルーテを繋ぐ、新しい流通網になるというわけだな」

「はい、仰る通りです。しかし、それだけではありません。私はこの機にバルディア領とレナルーテにおいて『特別辺境自由貿易協定』を締結したいと存じます」

笑みを浮かべているエリアス王に、僕は今回の会談において重要とも言える『特別辺境自由貿易協定』を提言した。

エリアス王を含め彼らは聞き慣れない言葉に思わず首を傾け、顔を見合せる。

やがて、エリアス王が僕に怪訝な表情を見せながら呟いた。

「婿殿……すまんが、『特別辺境自由貿易協定』とはどういうものになるのかね」

「はい。その点についても詳しく説明させて頂きます。ディアナ、皆さんに資料をお願い」

「承知しました」

僕は、エリアス王に答えながらディアナに視線を移す。

彼女は、ペコリと敬礼すると用意していた資料をエリアス王と他の皆に配布する。

彼らの手に資料が渡った事を確認した僕は、またニコリと微笑んだ。

「それでは、説明を続けさせて頂きます」