軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

会談の始まり

レナルーテの首脳陣と会談を行う為、国境地点にあるレナルーテの関所に『木炭車』で来た僕達だったけど予定より早く到着してしまう。

その後、レナルーテの関所に駐在する兵士達に、会談場所となる屋敷の貴賓室に案内された。

木炭車での移動に関しては、事前調査も行い時間に余裕を持って出発したのは確かだけど、こんなに早く到着した理由はもう一つある。

僕は貴賓室のソファーに腰かけた状態で、おもむろに懐から取り出した懐中時計の時刻を確かめた。

そして、目の前のソファーに座っている父上に呆れた視線を向ける。

「それにしても、こんなに早く到着するなんて……飛ばし過ぎですよ、父上」

「……開始時刻に遅れるよりは良いだろう」

父上は僕の指摘に、少しバツの悪そうな面持ちを浮かべる。

すると、その様子を見ていたドワーフのアレックスが苦笑する。

「あはは、リッド様、そう言わないで下さい。初めての長距離運転。その上、道も綺麗で走りやすいとなれば自然と飛ばしてしまいます。本当に飛ばし過ぎた時は、私からも進言させて頂きました」

「そうなの? それなら良いけど、木炭車で事故を起こしたら大変だからね。父上も飛ばし過ぎには注意して下さい」

僕はアレックスに振り向き答えると、再度父上に視線を戻す。

父上は僕の言葉に「うむ……」と頷くのであった。

なお、貴賓室にいるのは僕と父上だけでなく、ディアナやカペラ。

ドワーフのエレン姉弟。

エルフのクリスなど、バルディア家の要人とも言える人物が揃っている。

恐らく彼らにも、会談の状況に応じて協力してもらうことになるだろう。

それから、皆で雑談やクリスが持っていた『トランプ』をしながら時間を潰していると、貴賓室のドアがノックされる。

父上が返事をすると、「失礼致します」とドアが開かれレナルーテの兵士の声が部屋に響いた。

「エリアス陛下が、ご到着致しました。ライナー様とリッド様、会談を行う部屋にご案内致します」

「うむ。行くぞ、リッド」

「はい、父上。じゃあ皆、行って来るね」

僕は、貴賓室に残る面々に向かって、ニコリと微笑んだ。

その時、クリスが「ご武運を」と綺麗な所作で会釈を行いながら呟き、答えてくれる。

彼女に「ありがとう」と返事をした僕は、従者のディアナとカペラを引き連れて父上の後を追う。

そして、ファラの父親であるレナルーテの国王。

エリアス王が待つ部屋に、意気揚々と向かうのであった。

ちなみに、『トランプ』は皆で『ババ抜き』をしていたのだけど、何故か僕とアレックスばかりが負けてしまう。

挙句に、僕とアレックスだけしかいない状態にもかかわらず『ババ』が連続で二人の間を行き交いする珍事が起きた時は、貴賓室が大爆笑に包まれた。

まぁ、おかげで僕の緊張は解れたけどね。

「エリアス陛下、ライナー様とリッド様をお連れ致しました」

僕達を案内してくれた兵士が、部屋のドアの前でハキハキとした声を張り上げた。

すると、すぐに部屋の中から返事が聞こえ、ドアがゆっくりと開かれる。

開かれたドアの先には、エリアス王とザック。

それに、初めて会うダークエルフの男性が待っていた。

父上と僕達が部屋に入ると、部屋まで案内してくれた兵士がゆっくりとドアを閉じながら退室する。

部屋の中にはバルディア領からは父上と僕、ディアナとカペラ。レナルーテ側は、エリアス王とザックに加えダークエルフ男性という状況だ。

部屋のドアが閉じられ間もなく、エリアス王がニヤリと笑った。

「久しぶりだな、ライナー殿」

「ご無沙汰しております、エリアス陛下。この度は、会談に応じて頂き感謝致します」

父上が丁寧に会釈をしながら答えると、エリアス王が頷きながら言葉を続けた。

「うむ。何やら、素晴らしいものを婿殿が中心となり発明。さらに、今後のことで我が国と話したいことがあると言われれば、当然のことだ。さぁ、早速話を聞かせてくれ」

その後、僕達はエリアス王とザックに促されるままに椅子に座る。

そして、ザックがこの場にいる全員にお茶を用意してくれた。

お茶が全員に配られると、エリアス王が僕に視線を向ける。

「婿殿も息災であったかな」

「はい。『御父上』もお元気そうで何よりです」

ニコリと満面の笑みを浮かべ、僕はエリアス王をあえて『御父上』と呼んだ。

何故なら、帝国の書類上において、エリアス王はすでに僕の義理の父親……つまり『岳父』になっているので『御父上』と呼んだのである。

エリアス王は虚を突かれた様子で一瞬唖然とするが、すぐに笑みを浮かべて大笑いを始めた。

「ははは‼ そうであったな。書類上ではファラと婿殿はすでに婚姻している。確かに、そうであれば私は、婿殿の義理の父であるな。ライナー殿とも、すでに親類になるわけだ。ならば、言葉遣いなどにも遠慮はいらん。お互いに、余計な気遣いなく話そうぞ」

エリアス王は、ひとしきり笑った後、僕と父上に視線を向けさも楽しそうに言葉を続けた。

しかし、彼の言葉を聞いて、隣に控えていた初めて会うダークエルフの男性が進言する。

「エリアス陛下、お気持ちはわかりますが仮にも違う国同士のやりとりになるのです。親しき中にも礼儀ありかと存じます」

「オルトロス……進言は有り難い。しかし、ライナー殿や婿殿には特別いらぬ心配だ。そのような言葉こそ、失礼にあたるぞ」

『オルトロス』と呼ばれたダークエルフは、エリアス王の諭すような言葉に「失礼致しました」と会釈を行う。

同時に、エリアス王が咳払いをしてから、父上と僕に視線を向ける。

「ライナー殿、婿殿、気を悪くしたならお詫びしよう」

「とんでもないことでございます。それだけ、役目を尽くしておられる証拠と存じます。良ければ、そちらの方の事をお伺いしても良いですかな」

父上は、エリアス王の言葉に会釈をしながら丁寧に答え、『オルトロス』と呼ばれていたダークエルフに視線を向けた。

エリアス王は頷きながら、父上の言葉に答える。

「うむ、紹介が遅れてすまんな。この者は『オルトロス・ランマーク』だ。以前からどうしても、ライナー殿と婿殿に直接会いたいと申しておってな。今回の会談に同席させることにしたのだ」

オルトロスは、エリアス王が言い終えると同時に僕達にペコリと敬礼する。

そして、顔を上げると僕と父上に視線を向けながら言葉を紡ぐ。

「エリアス陛下よりご紹介頂きました。『オルトロス・ランマーク』です。以後、宜しくお願い致します」

口上を述べると同時に、オルトロスと僕の目が合った。

その時、彼が持つ『眼光』に見覚えを感じ、さらに『ランマーク』という名前にも聞き覚えがあった僕は、思わず呟いてしまう。

「ランマーク……って、まさか、アスナの……?」

僕の呟きが聞こえたようで、オルトロスは眉を顰めながら苦々しく答える。

「……ご想像の通り『アスナ・ランマーク』は私の娘でございます」