軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドの新魔法開発

鼠人族の三姉妹、長女サルビア、次女シルビア、三女セルビア。

三人の自己紹介が終わるとわざとらしく僕は咳払いを行い、彼女達に視線を向ける。

「さて、自己紹介も終わったね。じゃあ、改めて魔法を披露して欲しいと思うけど、その前にどんな魔法なのか皆に説明してもらってもいいかな」

「は、はい。承知しました。では……」

問いかけに答えたのは、長女のサルビアだ。

彼女は、恐る恐るこの場にいる皆を見渡すと、魔法の説明を始める。

彼女達の魔法……それは『距離が少し離れていても、簡単な会話が可能となる魔法』だ。

ただし、会話の発信は片方からしかできない。

加えて、会話を受け取る側も別途の魔法を発動しておかないといけないそうだ。

会話の距離に関しても、離れすぎると聞こえなくなってしまう。

彼女達が、鼠人族の町で奴隷として売られる前は、この魔法を使い私腹を肥やしている者達から食料を盗んで生きていたらしい。

しかし、彼女達は戦闘力が高いわけではない。

ある時、いつも通りに盗みを働こうとしたが失敗。

そのまま、奴隷として売りに出されてしまったそうだ。

三姉妹は驚いたことに、この『魔法』について僕の所に来るまで魔法という感覚を持っていなかったらしい。

元々、鼠人族自体が気配や物音に敏感であり、それだけに集中すれば結構な音をひろうことができる。

その感覚を研ぎ澄ました結果、少しの距離なら離れていても『会話』出来るようになったそうだ。

彼女達が、自身達のしていることを『魔法』と認識したのは、バルディア領に来て魔法を学んだ後らしい。

今までは感覚を研ぎ澄ますだけだったが、魔法を学んだ後は『魔力』を使っていることに気付いたらしく、僕に話を持ってきたということだ。

サルビアが行う説明に、僕が多少の補足をして大体の内容を伝え終わると、この場にいる皆は三者三様の面持ちを浮かべている。

その中、最初に口を開いたのはカペラだ。

「サルビアとリッド様のご説明はわかりました。しかし、その魔法を基に『新魔法を開発する』と仰る以上、リッド様の中ではすでに何か具体的な想像が出来ているのではないでしょうか」

「ふふ、その通りだよ。じゃあ、次は僕が彼女達の魔法を基に開発しようとしている魔法……『電波発信』と『電波受信』について説明するね」

さすが、レナルーテの元暗部。

彼の鋭い指摘に、不敵な笑みを浮かべて答えた僕は、次に開発する魔法について詳しい説明を始めた。

鼠人族の三姉妹から『距離が離れていても会話が可能』だが『発信』と『受信』が必要と聞いた時、僕が最初に感じたのは前世の記憶にある『無線』だ。

ただ、一口に無線と言っても、様々な種類があるのでさすがに僕もすべて理解出来ているわけじゃない。

しかし、メモリーのおかげでその仕組みを前世の記憶を辿り、情報を資料にまとめることは何とかできた。

その結果、完全に理解は出来ずとも恐らく『雷の属性素質』を使った魔法ではないか? という考察に辿り着く。

合わせて、鳥人族のアリア達姉妹からすでに教わった魔法の『電界』を応用すれば良いのではないか? という算段も付いたのでバルディア第二騎士団設立前に、連絡手段として何とか開発をしたいと考えたというわけだ。

無線の知識に関しては、前世の記憶にあたる情報となる為、僕は上手く誤魔化しながら伝えた。

「……というわけなんだ。つまり、鼠人族のサルビア達が教えてくれた魔法。鳥人族のアリア達が教えてくれた魔法。この二つを組み合わせればきっと、魔法による『会話発信と受信』という『通信』が出来るようになると思うんだ。後、発信は術者が行うのが基本になると思うけど『受信』はいずれ、何か別の道具で使えるようにしたいんだよね」

出来る限り丁寧に説明をしたつもりだったけど鼠人族の皆は理解が追い付かないようで、ポカンとしている。

だけど、アレックスとトーマ。

ディアナとカペラはとても難しい顔を浮かべていた。

サンドラだけは、楽しそうに満面の笑みを見せている。

やがて、ディアナが呆れたように呟いた。

「全く、リッド様の考えることは本当に型破りでございます。ですが、新魔法が開発出来れば、それほど素晴らしいことはないかと存じます」

ディアナの言葉に、同意するようにアレックスが頷く。

「……その、『無線』という仕組みは初めて聞きましたし、わからないことばかりです。しかし、『仕組み』があるのであれば、リッド様に仕えるドワーフとして出来る限りのことをさせて頂きます」

「ふふ、私の知らない『魔法』と『応用』ですか。さすが、リッド様は『型破りな神童』ですね。当然、私も出来る限りのことをさせて頂きます」

アレックスに続くように、サンドラも目を輝かせながら言葉を続けてくれる。

僕は、この場にいる皆を改めて、見回すとニコリと微笑んだ。

「皆、ありがとう。新魔法開発は大変だと思うけど、頑張ろうね」

こうして、新魔法開発に僕達は着手することになる。

しかし、無線については前世の記憶から引っ張り出しただけの知識に過ぎなかったので、新魔法開発は混迷を極めることになったのは言うまでもない。

それでも、鳥人族のアリア達姉妹にも途中から協力を依頼。

最終的に、雷の属性素質を持った獣人族の子供達にも全員参加してもらい、何とか新魔法開発には成功する。

そして、『懐中時計』と合わせて『通信手段』も揃い、いよいよ『バルディア第二騎士団設立』は間近となるのであった。