軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アレックスの思惑?

木炭車の試乗が終わり、僕達は工房の来賓室に一旦戻る。

そこには、アレックスと猿人族のトーマとトーナが、『懐中時計』を少し見た目が豪華な木箱にいれた状態で準備をして待っていてくれた。

僕が部屋に入ると、アレックスが丁寧に会釈する。

「リッド様、ご指示頂いていたとおりに懐中時計を用意しておきました」

「皆、用意してくれてありがとう。じゃあこれは持っていくね」

彼らにお礼を言うと、『懐中時計』の木箱を僕は手に取った。

同時に、ディアナが「私がお持ち致します」と手を差し出したので、僕はそのまま彼女に渡す。

そして、ニコリと彼らに微笑んだ。

「アレックス、トーマ、トーナ、本当にありがとう。改めて、これからもよろしくね。それに、エレンとトナージも木炭車の件もすぐに父上に報告するよ」

「いえいえ、出来ることをしただけです。それに、まだまだ僕達も色々と挑戦したいですからね」

エレンは笑みを浮かべて自信満々に答えてくれる。

「ふふ、頼もしいね。じゃあ、今日はこれで失礼するね」

彼女達に答え、僕が立ち上がると急にアレックスが声を発した。

「あ、あの、リッド様」

「うん? どうしたの」

急に呼び止められた僕は、彼に振り返る。

彼は、少し照れた様子で僕に髪留めを差し出した。それは中々に綺麗な細工がしてあり、とても女性が喜びそうだ。

しかし、僕に見せる意図はなんだろうか? 怪訝な面持ちを崩さずに僕は彼に視線を向ける。

「とても、綺麗で可愛いと思うけど、これは?」

「あ、その、試作で何個か作りまして良ければメイドの皆さんにも、ご意見を聞かせて頂ければと思っております」

その時、僕はハッとする。

アレックスが以前、うちの屋敷に勤めるメイドに意中の女性がいることを漏らしてことを思い出したのだ。

なるほど、そういうことか。

合点の言った僕は頷いた後、優しく問い掛ける。

「わかった。ちなみに、個数にも限度があると思うけど誰の意見を聞きたいんだい?」

「あ、それは……此処にいるお二人と、メルディ様。あと、ニーナさん達でしょうか」

ほう、アレックスはニーナ達とも面識があったのか。

僕は、ニヤリと笑みを浮かべて受け取った。

「わかった。じゃあ、屋敷に戻ったら渡すと約束するよ」

「はい、ありがとうございます‼」

その時、僕達のやり取りを見ていたメルが、髪飾りに目を輝かせる。

「ね、にいさま。わたしはもうえらんでもいい?」

「あ、それはまだやめておこう。屋敷に戻ってからにしないと、壊れちゃうかもしれないからね」

「えぇ……でも、わかった」

メルは少し頬を膨らませたがすぐに頷いてくれる。

その後、エレン達に別れを告げた僕達は馬車に乗り込み次の目的に向けて出発したのであった。

来賓が帰ったあとの工房では、エレン達が来賓室の片付けをしながら、笑みを浮かべ一息入れていた。

なお、片付けに参加をしているのは、エレン達と猿人族のトーマ達だ。

トナージはすでに、現場に戻っている。

片付けが一段落すると、ソファーに腰を下ろしたエレンがアレックスに視線を向けて呟いた。

「ふぅ、リッド様達が帰って少し静かになったね、アレックス」

「そうだね。でも、木炭車と懐中時計がお気に召してもらって良かったよ……まぁ、新たな難題もきたけどね」

エレンとアレックスの二人が楽しげに談笑していると、不思議そうな面持ちを浮かべたトーマが問い掛けた。

「お二人は、リッド様の言う『無理難題』について楽しんでいる感じなんですか?」

「ん? そうだねぇ……僕は結構楽しんでいるよ。何せ、リッド様が持って来る話はどれも、聞いたことの無いような考え方ばかりだからね。ドワーフとして、これ以上の面白いことはないかも」

「確かに。姉さんの言う通りだ。後、俺達もリッド様のおかげで今があるから、恩返しの意味もあるけどな」

その時、彼らのやり取りを横で聞いていたトーナも、不思議な面持ちを浮かべてエレン達に質問をする。

「エレンさん達も、リッド様のおかげで今があるってどういうことなんですか?」

「あれ、言ったことなかったかな?」

エレンはそう言うと、トーマ達にバルディア領に来ることになった経緯を楽しそうに話すのであった。

その内容を聞いたトーマ達は、目を丸くしたあと笑みを浮かべる。

やがて、感嘆した様子でトーナが呟いた。

「へぇ、リッド様は以前からあんな感じだったんですね」

「そうだよ。無茶ぶりも以前からだから、僕とアレックスは鍛えられて防御力が上がったかもね」

「あはは、確かに、それはあるかも」

来賓室にいる全員で談笑していると、ハッとしたエレンがニヤリと笑みを浮かべてアレックス尋ねた。

「ところで、アレックス。誰が意中のメイドなの? 僕が思うにダナエさんかニーナさんかな?」

「な、なんだよ姉さん、藪から棒に……。大体、そんなつもりじゃないし、それにそんなのどうだっていいだろう⁉」

「もう、意地になるところが怪しいんだって。ほれ、お姉さんに言ってごらん」

その後、エレンがアレックスを問い詰めるやりとりが続く。

やがてその様子に、トーマが呆れ顔を浮かべて呟いた。

「はぁ……いつまで、やっているんだか……」

「ふふ、でも、お兄ちゃんもたまには、エルビアさんにプレゼントでもしたら?」

「な……⁉ なんで、アイツの名前が出て来るんだよ‼」

トーナの突然の問い掛けに、トーマは思わず顔を赤らめた。

ちなみに、エルビアというのはトーマ達同様にバルディア領にやってきた猿人族の少女である。

トーナはムッとした顔で答えた。

「だって、エルビアはいつもお兄ちゃんのことを気にかけてくれているのに……お兄ちゃんはそれをないがしろにしているでしょ? ちゃんとエルビアさんに、たまにはお礼をしてよね」

「べ、別に、俺とアイツはそんな関係じゃないぞ‼」

「はぁ……エルビアさんが可哀相……」

トーナは、トーマの返事にため息を吐きながら俯いた。

来賓室の片づけ中に行われた、淡い四方山話の一幕……。