軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鉢巻戦開始

僕はダイナス達に先導されながら、試合会場の武舞台中央に移動する。

獣人族の子供達はすでに武舞台に上がっており、各部族でまとまっているようだ。

あちこちから刺すような視線に加えて、観客席からは暖かい視線も感じる。

その中、武舞台の中央に辿り着くとダイナスが大声を会場に響かせた。

「これより、リッド・バルディア様と獣人族の子供達による『鉢巻戦』を行う。ルールは簡単だ。額にしている『鉢巻』が取られる、もしくは場外に落とされたら失格だ。魔法は使用可能、武器は禁止、鉢巻を獲る為の戦闘行為はある程度許容となる。審判は私、バルディア騎士団団長ダイナス、副団長のクロス、騎士団のルーベンス、ネルス。以上の四名で行う。以上だ」

ダイナスは言い終えると、僕に視線を移す。

「リッド様からも、何かありますか?」

「そうだね……」

僕は咳払いをして、深呼吸をするとダイナス同様に大きな声を響かせる。

「皆、見に来てくれてありがとう。折角だから、今日は楽しんでもらえれば幸いかな。さて、獣人族の皆にも言っておくよ。君達の本気を僕に見せてほしい。特に、宿舎で僕に大見得を切った子達は特にね。楽しみにしているよ」

観客は何やら、大盛り上がりだ。

対して、獣人族の子供達からの視線はさらに鋭利なものに変わっている。

鳥人族のアリアに教わった魔法の『電界』を使うと、すごく嫌な感じで心がざわついた。

(ふむ……これが、敵意的なものなのかな)

アリア曰く、『電界』を通じて感じる様々な気配は個人によって違うそうだ。

その感覚は魔法を使い続けることで段々とわかっていくらしい。

後は『勘』だそうだ。と、その時、ダイナスが笑みを浮かべて問い掛けてくる。

「リッド様、ではそろそろ開始しようと思います。よろしいですね?」

「うん。あと、絶対に贔屓はしないで、公平な判断をお願いね」

「承知しております。では、我らは端に移動致しますので、失礼致します」

ダイナスが一礼すると、他の騎士達も僕に向かって同様に頭を下げる。

そして、東西南北にある橋に彼らは移動した。

そして、ダイナスが再度、大声を響かせる。

「では、鉢巻戦、試合開始‼」

こうして、鉢巻戦の火蓋は切られる。

そして、それとほぼ同時に狐人族のラガードらしき声が会場に響いた。

「この瞬間を、待っていたんだぁああ‼」

「うん?」

声が聞こえた場所に振り返ると、そこでは狐人族の皆が魔法を発動しているではないか。

それも、ファイヤーボールや僕の火槍とはまた違う感じでおどろおどろしい。

言うならお化けと共に出て来そうな『火の玉』のように揺らめいている。

やはり、種族や文化によって魔法は様々な形があるようだ。と、感心しながら周りを見てふと気が付いた。

「なるほどね。まずは魔法の一斉発射というところかな」

魔法を生成しているのは狐人族だけではなかった。

ラガードの声に気を取られたが、周りをよく見ると各部族には数名、魔法を生成している者がいる。

乱戦になると魔法は使いづらい。

まずは、魔法戦ということだろう。

いいね、面白い。

その時、空からもざわつきを感じて見上げると、アリア達がすでに空を舞いながら魔法を生成しているようだ。

僕が周りを見ながらニヤリと不敵に笑みを浮かべた瞬間。

ラガードの声が再度会場に響く。

「いっけぇえええ‼」

その瞬間、四方八方から僕に様々な魔法が放たれた。

避ける、逃げる?

いや、そんなことはしない。

僕は自身を『魔障壁』で囲い、すべての魔法を受け止める。

同時に、あたりに爆音が鳴り響いた。

うん、中々に良い威力だけど『まだまだ』だな。

受け止めた衝撃であたりには煙が立ち上がり、視界が悪い。

しかし、煙も次第に晴れて来る。

そして、無傷の僕を見たラガードや獣人族の子供達はギョッとした顔を浮かべていた。

僕はニヤリとラガードに微笑んだ。

「やれやれ。君達の魔法は、ただホコリを巻き上げるだけで終わりなのかい?」

「な……⁉ 馬鹿にしやがって……ありったけ撃ちこめぇええ‼」

ラガードや他の皆も僕の安い挑発に激昂したようだ。

再度魔法を一斉に放ってくるが、僕は嬉々としてその魔法を魔障壁で受け止めていく。

その結果、武舞台はしばし爆音と煙に包まれることになる。

(ふむ。煙で視界は悪いけど、『電界』で皆の焦りと疲れは感じるね。空にいるアリア達は様子見しているみたいだな。さて……そろそろ動くかな)

僕が心で呟くと同時に魔法が止んだ。

どうやら、予想通り魔法を使える子達の魔力がある程度尽きてしまったみたいだな。

煙が消え、お互いの顔が見えるようになると、獣人族の子供達は僕が無傷の様子に絶句しているようだ。

そんな彼らに僕は、わざと鼻を手でこすりながら一瞥する。

「ああ、『埃を巻き上げるだけの魔法』はもう終わりかな? じゃあ次は、僕が『本物の魔法』を見せてあげよう」

僕は片手を空に掲げながら軽く圧縮魔法を使い、自身の頭上に大きい『水球』を生成する。

獣人の子供達は、僕の魔法の正体が分からずに警戒して近づいて来なかった。

でもそれは、悪手だ。

僕は魔法の生成と同時に、電界で地上にいる獣人族の子供達の位置を把握し終えると唱えた。

「水球式・水槍……‼」

魔法名を唱えると、僕の頭上にある大きい水球から大量の『水槍』が地上にいる獣人族の全員目掛けて飛んでいく。

勿論、威力は押さえてあるが場外まで吹き飛ばすには十分だろう。

約一五〇本程度の水槍が水球から前後構わず生成され飛んでいく様は、中々の迫力だ。

魔法の発動と同時に観客席からどよめきが聞こえて来る。

しかし、武舞台上ではあちこちから悲鳴と怒号が響いていた。

「うわぁああ‼」

「なにこれ⁉ どうしてこっちに飛んでくるの‼」

「避けろ‼ 無理なら受け止めろぉ‼」

「きゃぁああああ‼」

獣人族の子供達は一斉に魔法が飛んでくるとは思っていなかったのだろう。

あちこちで魔法の対応に追われている。

魔法が終わり、ふと周りを見渡すと予想より結構な人数が場外の水堀に落ちて失格になったみたいだ。

僕は残った子供達に不敵な笑みを見せつけると悠然と呟いた。

「さて……次はどうするのかな?」

「く、くそ、残っているやつは、次の作戦に移行するぞ‼」

ラガードが再度叫ぶと同時に、今度は僕に向かって子供達が向かってきた。

どうやら、次は接近戦をするらしい。

しかし、『次の作戦』とはなんだろうか? ふと周りをよく見てみると、兎人族オヴェリアや猫人族のミア達が、僕の動きを観察していることに気付いた。

なるほど、まずは魔法で攻める。

その次は、残った者で接近戦。仲間内で強者と認定されている者は、僕を観察しながら体力温存というところだろうか?

中々にいい案だ。

「ふふ、良いね。その作戦に乗ってあげよう‼」

僕は正面に迫る狐人族の一団に攻勢を仕掛ける。

最初の動きで、魔法発動者が一番多かったのは狐人族だ。

つまり、接近戦が不得意な者が多いのだろう。

僕が攻勢に出てくると思わなかったのか、狐人族の皆は驚きの表情を浮かべている。

だが、すぐに表情を切り替えて僕の鉢巻を狙い、こちらを待ち受ける姿勢をとった。

だけど、ディアナやクロスと普段訓練している僕からすれば、彼らの動きは非常に緩慢で隙だらけだ。

「あ、あれ⁉」

「え……⁉」

「ふふ、どんどん頂いていくよ‼」

彼らの攻撃を躱すと同時に僕は鉢巻だけをサッと手にする。

僕が体術をここまで扱えると思っていなかったのか、狐人族の皆は困惑しているようだ。

しかし、すぐにラガードの指示が響く。

「リッドは強い‼ 一人で掛かるな、徒党を組んでいけ‼」

「は、はい‼」

彼の指示に皆は頷くと、僕に再度向かってくる。

だけど、彼らが徒党を組んだところであまり結果は変わらない。

僕は淡々と狐人族の鉢巻を獲っていく。

そして、とうとう狐人族でこの場に残ったのは、ラガードとノワールだけとなるのであった。