軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

移送団・二台目

先程の馬車に乗っていた兎人族と猫人族を主とした獣人の子供達の対応が終わると、続くように最後の馬車が僕達の目の前に到着する。

この馬車にルーベンスも同行しているそうで、警戒すべき子達が乗っているということらしい。

さっきの、猫人族と兎人族の子達も中々に面白かったけど、こっちにはどんな子が乗っているのかな?

僕が、馬車の荷台を見ながら目を輝かせていると、ダイナスが僕に近寄って来てニヤリと笑った。

「あの馬車に乗っている子供達は、さっきの奴ら同様に見込みのあるやつばかりですよ」

「……‼ そうなんだ。ダイナス団長がそこまで言うなら楽しみだね」

彼の言葉を聞いた僕は、ますます期待して満面の笑みを浮かべる。だが、やりとりを横で見ていたディアナが険しい面持ちで呟いた。

「ダイナス団長、リッド様をあまり焚きつけないで下さい。護衛をさせて頂く身として、先程からリッド様が無茶をされないか心配でございます」

彼女はダイナスに注意を促すと、僕に視線を移して心配そうな面持ちを浮かべている。

そして、彼女を追随するようにカペラも無表情で言葉を発した。

「ディアナ様の言う通りです。リッド様、どうかあまり無茶をされないようご注意下さい」

「……二人共、心配してくれてありがとう。でも、そんな無茶をするつもりはないから安心して大丈夫だよ」

まさか、二人からそんなに心配されると思わなかった。

でも、彼等の表情から本気で心配してくれているのがわかる。

うん、皆に心配をかけないように気を付けよう。

そう思った時、荷台から降りる良く知った顔の騎士が見えた僕は、思わず彼に駆け寄ると嬉々たる様子で声を掛けた。

「おかえり、ルーベンス‼」

「……⁉ リッド様‼ わざわざのお迎え頂きありがとうございます」

彼は僕の声掛けに驚きの表情を見せるが、すぐに満面の笑みで返事をしてから一礼する。

顔を上げた彼は、僕の隣にいるディアナに視線を移すと、少し顔を赤らめた。

「……ただいま、ディアナ」

「ルーベンス、おかえりなさい」

うん、何やら少し甘い雰囲気が流れ始めた気がする。

ちなみに、ルーベンスとディアナは幼馴染であり、半年程前から交際を始めた仲だ。

……そういえば先日、ルーベンスのことでディアナに質問された気がする。

確か、僕がルーベンスにレナルーテで渡した『浴衣』のことか何かだったと思うけど。

と思った時、甘い二人に声が掛けられた。

「ルーベンス、それにディアナ……その気持ちはわかるが仕事中だぞ」

「……‼ も、申し訳ありません。クロス副団長」

二人はクロスの注意にハッとして、少し慌てた様子を見せるがすぐに平静を取り戻す。

そして、ルーベンスは荷台の中に視線を移すと、中にいる騎士から獣人の子を受け取り、馬車から降ろした。

彼が最初に下ろした獣人は少し尖った小さな耳が頭にピンと二つあり、髪の毛のような尻尾が生えている少女だ。

この子の特徴からすると、種族は馬人族かな? 僕は少女の特徴が、他の馬車に乗っていた馬人族の子と一緒であることに気付き、笑みを浮かべて声を掛けた。

「こんにちは。君は馬人族の女の子かな? よろしくね」

「…………?」

だが、彼女は僕に首を傾げてきょとんとしている。

そして、少しの間をおいて彼女はハッとする。

「……あ、すみません。なんでしたっけ? えーと、とりあえず好きな食べ物はりんごです……。りんご、ありますか?」

「……そっか、君はりんごが好きなんだね。でも、残念ながらここにはないかな……」

うん、今のやりとりで、この子がなんだか凄く変わった子であることはわかった。

おもむろに視線を横に移すと、僕の両隣にいるディアナとカペラも何とも言えない表情をうかべている。

しかし、彼女は僕達の様子を気にせずにシュンとなり俯いてしまった。

りんごがない事がショックだったらしい。

さて、これはこれで面白い子だけど、どうしよう? と思った時、馬車の荷台からルーベンスによって降ろされた二人の馬人族の子が、僕の側に慌てた様子で駆け寄ってきた。

「すみません‼ 私はアリスと言います。この子はマリス、私の妹です」

アリスと名乗った女の子は、マリスの前に出ると思いっきり頭を僕に下げた。

マリスは、姉が頭を下げた姿を見てハッとする。

そして、彼女同様に僕に向かって頭をゆっくり下げていった。

本当に面白い子だな。

そんな事を思っていると、今度は馬人族の男の子が、僕と彼女達の間に割って入る。

そして、その勢いのまま頭を地面にこすりつけながら、声を発した。

「俺はディオと言います、マリスは少し変わっているだけなんです‼ 無礼があったと言うことなら、俺が罰を受けます‼ どうか、アリスとマリスだけは許して下さい‼」

本日、二度目の土下座をされた僕は乾いた笑みを浮かべると彼等に優しく声をかけた。

「大丈夫だよ。別に無礼だなんて思ってないさ。それより、後が詰まっちゃうから騎士達の指示に従って移動してもらえるかな?」

「……は、はい‼ ありがとうございます‼」

馬人族のアリスとディオは、僕の言葉を聞くとマリスを連れてすぐにその場を移動する。

マリスはまたきょとんとしながら、二人に連れていかれるが僕に振り返るとニコリと笑う。

「ばいばーい」

「あはは……ばいばーい」

マリスの発言にアリスとディオはギョッとして僕に振り返ると、凄く申し訳なさそうにペコペコしている。

その様子に僕は苦笑しながら「大丈夫」という意図で手を振った。

すると、マリスは嬉しそうに手を振ってくれる。

その後、彼等はペコペコしながら騎士達に連れられて宿舎に進んで行った。

「……本当に色んな子がいるんだね。でも、あの子達もダイナス団長が見込んだ子達なんでしょ?」

僕は思わず、近くにいたダイナスに問いかけると、彼は楽し気にニヤリと笑う。

「ええ、あの子達もあんな感じですが良い原石ですよ。リッド様が必要ないのでしたら、私が立派な騎士にして見せましょう」

「それは駄目だって」

彼は残念そうに、両手を広げながら少しおどけた表情を僕に見せると作業に戻っていく。

馬人族の彼等がどんな原石なのか非常に気になるけど、僕は目の前の作業を進めて行くのであった。