軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エレンとアレックスの発明

「エレン、アレックス、どう? ここにはもう慣れた?」

「はい‼ おかげさまで僕達、色々と好きなことが出来ています」

「姉さんの言う通りです。作業場付きのこんな良い場所まで、ご用意して頂いて本当にありがとうございます」

今日は、エレンとアレックスの二人に急ぎで用意した町の作業場に僕とディアナの二人で来ている。

バルディア領にエレン達の二人を連れて来たのは、武具を含めて色んな物を作成してもらうためだ。

本日、訪れた理由は、お願いした物の試作品が完成したと二人から連絡が来たからだ。

僕は二人の言葉にニコリと笑顔を見せた。

「作業場を気に入ってもらえて良かったよ。それじゃあ、早速だけどお願いしていた試作品を見せてもらってもいいかな?」

「はい、わかりました」

エレンとアレックスは僕の言葉に頷くと、作業場の奥に入って行った。

その様子を僕の隣で見ていたディアナは不思議そうな顔で僕に尋ねた。

「リッド様、差支えなければお二人に何をお願いしたのか、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

「うん? 『属性素質鑑定機』かな? 魔力を少しでも扱える人が使えば、自分の持っている属性素質を調べることが出来る鑑定機と言ったらいいかな?」

僕がエレン達にお願いしていた物が「属性素質を調べる鑑定機」と聞いたディアナは怪訝な表情を浮かべた。

「はぁ……? また、珍妙な物をお願いしたのですね。魔力が扱える者は騎士団や一部の冒険者、後は貴族などしかおりません。それに、魔力を扱える者達は自身の属性素質は、ほとんど把握しております。その者達がどんな属性素質を持っているか分かるようになっても、あまり意味がないと思うのですが……」

「そうだね。すでに扱える人達には意味がないかもね。でも、個人が持っている属性素質が分かるようになれば、組織としては大きく飛躍できると思うよ?」

彼女の言う通り、すでに扱える人にとっては確かに無用の長物だろう。

それでも、確認をする意味での有効性はあると思う。

でも、僕がやろうとしている事には絶対に『属性素質鑑定』を出来る物が必要だ。

僕の返事はディアナには突飛な言葉に聞こえたようで、不可解そうな顔をしている。

その時、エレンとアレックスが作業場の奥から四角い箱の上に、透明な水晶玉が乗ったような物を丁寧に持ってきた。

重いからというよりも、壊さないように二人で持ってきた感じだ。

僕達の前に、置くとエレンが「ゴホン」と咳払いをして、胸を張ると声高らかに説明を開始した。

「お待たせ致しました‼ リッド様から言われた通り、魔刀でも発生する魔鋼の色彩変化反応を応用して作った『属性素質鑑定機』の試作機第一号『属性素質調べる君』です‼ 使い方は簡単‼ 箱の上に置いてある水晶玉に手をのせて魔力を通せば、一定時間毎に色が変わります。その色を見れば、手を置いた人の属性素質がわかるというものです‼」

「姉さん……やっぱりその名前はどうかと思うよ?」

自信満々に説明するエレンを横目に、少し痛々しい物を見るような目でアレックスが彼女に指摘した。

わかりやすいから、悪い名前ではないと思うけどな。

僕はそんなことを思いながら、エレンに尋ねた。

「エレン、説明ありがとう。早速だけど、属性素質は無属性も含めると全部で10種類あるけど、これは無属性以外が分かる感じなのかな?」

「リッド様の仰る通りです。ただ、一つだけ問題がありまして……」

僕の言葉を聞いた彼女は頷きながら、困ったような表情を浮かべている。

どうしたのだろう? 僕が怪訝な顔をすると、彼女はおもむろに説明を続けた。

「色彩変化反応は確認出来たのですが……さすがに私達だけだと、どの属性が何色になるかまでがわからなくて……これだけは、いろんな人で試してみるしかないかなと……」

「なるほど……ね」

確かにそれはそうだろう。

しかし、エレン達で確認したということは彼女達も多少は魔法の心得があるということだ。

僕はふと周りを見渡した。

ここにいるのは僕、ディアナ、エレンとアレックスの計四人だけだ。

僕は少し考えを巡らせてから皆に言った。

「エレン、アレックス、これからこの場所に僕達以外は誰も入らないようにしてもらえるかな?」

「え? わ、わかりました。アレックス、お店に鍵をかけて、僕は作業場に鍵をかけてくる」

「わかったよ、姉さん」

二人はいそいそと戸締りをしにいった。

その様子を見ていたディアナは不思議そうな顔を浮かべて、僕にそっと話しかけてきた。

「……リッド様、今度は何をなさるおつもりですか? あまり騒ぎになるような事はなさらないようお願い申し上げます」

「うん。大丈夫だよ。何か特別なことをするわけじゃないからね」

「だといいのですが……」

彼女は僕の言葉を聞いて、何故かとても心配そうな表情をしている。

何故?

丁度その時、エレンとアレックスの二人が戸締りを終えて戻ってきた。

「リッド様、すみません。お待たせしました。でも、何をなさるおつもりですか?」

「ありがとう、エレン、アレックス。難しい事じゃないよ。僕が、『調べる君』を使うだけだよ。でも、この場で見た属性素質は絶対に秘密でお願いね?」

僕の言葉にこの場にいた皆は安堵して、納得したような表情をするとエレンが僕を見て笑みを溢した。

「良かったぁ……また、常識では考えられない、型破りな事をお考えかと思って心配しましたよ。でも、わかりました‼ リッド様の属性素質は絶対秘密に致します‼」

「……皆、僕を何だと思っているの? 僕は至って普通の子供だよ?」

エレンの言葉に僕がした返事を聞いて、皆が何とも言えない顔をしたような気がする。

何故?

僕はやれやれと肩をすくめて、深呼吸をすると「調べる君」の水晶に掌を載せた。

そして、魔力を流すと、水晶の中がみるみる赤く染まっていく。

思わず僕は驚きの声を出した。

「おお⁉ 思ったより面白いね。これは『火』かな?」

「恐らくそうですね。さすが、リッド様です。バルディア領の領主と言えば代々、火の属性素質をお持ちと僕達は聞いていますよ」

水晶の中で赤い色がそれこそ火のように、燃え上がっている。

変化が起きて10秒も経過しないぐらいだろうか?

赤い色に変化が訪れて、今度は薄い水色に変化して波紋のような模様が波打っている。

「お? 今度は『水』の属性素質かな?」

「そのようですね。でも、相反するような属性をお持ちとは、リッド様っぽいですね」

エレンの言葉にアレックスやディアナがクスクス苦笑している。

すると、また色が変わり始めて、

今度は薄い緑に変わり、竜巻のように渦巻いている。

「これは、風っぽいね?」

「……そのようですね。これは初めて見ました。記録しておきますね」

何やらエレンの顔が引きつっているような気がするのは、気のせいだろうか?

そう思っていると、また変化が現れた。

今度は黄色で雷のように迸っている。

「これはどうみても『雷』だよね?」

「……はい。その通りだと思うのですが……何故でしょう? 僕、凄い事が起きそうで、凄く嫌な予感がするのですが……気のせいでしょうか?」

「うん? 変化を確かめているだけだから、何も起きないと思うよ?」

エレンは僕の返事に「いや、そういう意味では……」と言いかけた所でまた、変化が起きた。

今度は深い青色が氷のような塊になっている。

すると、水晶を見ていた僕以外の面々の顔がサーっと青くなった気がした。

「また変化したね。氷の属性素質みたい」

「うぅ……記録します……」

何故かエレンは顔を引きつらせ、及び腰になり始めた。

アレックスも顔を引きつらせている。

ディアナはサーっと顔から血の気が引いている気がする。

何故?

それからも「調べる君」は色彩変化を続けた。

土は茶色、樹は深い緑、光は白、闇は黒と言った具合だ。

闇の黒が最後だったようで、水晶の中の色は火の赤色に戻っている。

「……お? これで全部かな? もう何周かさせて、色の出る順番が一度も変わらなければ色彩変化の順番がわかるかも。もう一回やってみようか? ……あれ? 皆、顔色が悪いよ? 大丈夫?」

僕が色の変化を確認してから、その場にいる皆に声を掛けるが返事がない。

顔を上げると、僕の属性素質に驚愕したようで三人とも茫然と立ち尽くしていた。

僕は皆が思っている事を察して、おもむろに言った。

「あー……、ま、まぁ、全属性持ちも世の中には居るという事だね。だから、最初に言ったでしょ? 絶対に秘密だって?」

「……リッド様、この事はお父上のライナー様はご存じなのですか?」

僕の言葉で意識を取り戻した様子のディアナは、顔を真っ青にしながら僕に質問をした。

「え? 知らないと思うよ? 誰にも言ったことないからね。だから、僕の属性素質を知っているのは僕自身とディアナとエレン、それからアレックスだけだね。内緒だよ?」

僕は三人にニコリと屈託のない笑顔で声をかけた。

ディアナは僕の言葉と笑顔を見てから、深い、とても深いため息を吐いた。

「はぁぁー……リッド様には常識が通じない。いえ、常識では測れない方だと改めて思い知りました……」

「本当ですね……僕、全属性持ちの人が存在するなんて考えた事もなかったです……」

「俺も……リッド様とのご縁に感謝します……」

「へ……?」

僕の全属性持ちという事実に三人が思った以上に衝撃を受けていたことに、僕は驚愕して茫然とするのだった。

それから、改めて僕の属性素質については口外禁止であることを伝えた。

特にディアナがエレンとアレックスに強く言っていたのが印象的だった。

二人も「勿論です‼」とディアナに直立不動で即答しており、僕は心の中で「大袈裟だなぁ……」と呟いていた。

僕はその後も何度か、「調べる君」に魔力を流したが色彩変化の順番は変わらなかった。

理由は不明だが、どうやら何かしら法則性があるようだ。

「うーん、色彩変化の順番が決まっていると言うのは不思議ですね。でも、リッド様のおかげで全属性の色彩がわかりました。ありがとうございます‼」

「いやいや、『調べる君』の作成依頼をしたのは僕だからね。役に立てて嬉しいよ。これを、何台か量産しておいて欲しいのだけど、可能かな?」

僕の言葉にエレンは目を瞑り俯いて思案してから、僕を見据えて言った。

「出来ます。ただ、材料となる『魔鋼』が足りないのでクリスさんにお願いして発注しても良いでしょうか?」

「わかった。今度、クリスに会う予定だから、その時に伝えておくよ。それから、もう一点お願いがあるのだけど……」

「……? 何でしょうか?」

僕は、エレンとアレックスに計画していることを伝えて「力を貸して欲しい」とお願いした。

話を聞いたエレンとアレックスは目を爛々と輝かせると言った。

「是非、協力させて下さい‼ もし、実現できれば僕達も試したい事がもっと沢山することができます‼ 絶対、実現させましょう‼」

「う、うん。その時は、また相談とお願いに来るからよろしくね」

「はい‼ お待ちしております‼」

僕が伝えた計画に二人は興奮した様子で嬉々として賛同してくれた。

これで、下準備は大体出来た。

クリスに計画を伝えて見直しを加えた後、父上に相談すれば恐らく問題ないだろう。

僕は計画の下準備が順調に進んでいることが嬉しくて、思わず笑みがこぼれていた。

そんな僕の様子を見て、ディアナはまた深いため息をついていた。